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ざまぁみろ

「レオン。国境に控えている軍勢の数は?」

「おおよそ三万。すぐにでも国境を越えて攻め込めます」

「カミーユ、きいたか? わが軍は、きみの平和ボケした軍とは違い、この大陸一の実力があるぞ。ああ、いまさら自慢する必要もないかな?」

「いや、だから知らなかった。であれば、こいつらを連れて帰って公開処刑でもなんでもするといい」

「ちょっと、なにを言っているのよ? あなたが悪いんでしょう? 自分の浮気がバレそうになったからって、わたしを売る? それが皇太子のすることなの?」

「『なにを言っているのよ』、だと? カトリーヌ、おまえこそ貴族子息といい仲になっているだろう? それに、勝手に身代わりを嫁がせやがって。すべておまえのせいだ」

「許せないわ。お父様っ、きいた? お父様の親友の宰相に話をして、こんなやつ、いますぐにでも皇太子の座からひきずりおろして」

「そんなこと、わたしに出来るわけがないだろう?」


 あらまあ……。


 小説によくあるように、醜い争いを始めてしまった。


 コランタンと顔を見合わせてしまった。


 これなら、わたしたちがとやかく言う必要もない。


 勝手に潰れてくれるでしょうから。


 だけど、せっかくがんばって修行したんだし、その成果を見せてもいいわよね?


「ちょっとすみません」


 控えめに言ってみたけれど、きこえなかったみたい。


「うるさいっ! だまりなさい」


 横隔膜が震えるくらい大声を出した。


 すると、彼らは言い合いをやめた。そして、こちらを睨みつけてきた。


 怯みそうになった瞬間、コランタンが腕をさすってくれた。


「だれよ?」


 お姉様がブスッとした表情で尋ねてきた。


 妹もわからないくらい理性を失くしているのね。


「ミキ、です」

「嘘よ。ミキがそんな顔やスタイルなわけない」


 嘘つき呼ばわりされてしまった。


「嘘じゃないわ。お姉様、あなたのお蔭で『大悪女』になることが出来ました。この美男子、あなたの言う『野獣将軍』なんですよ。バッチリ射止めました。ですが、お姉様は残念だわ。この美男子は、お姉様たちを許すつもりはないみたい。もちろん、わたしも。だから、ほんとうに残念だけど、死んじゃってください。それがこの国の為にもなります」


 いっきに告げた。そうしないと、途中で台詞がわからなくなってしまうから。あるいは、怖気づいて震えだしてしまうから。


 お姉様もお父様もお母様も、ついでに皇太子も口をポカンと開けてわたしを見ている。


「コランタン、この人たちを捕えて。そして、煮るなり焼くなりしましょう」

「愛するミキ。すべてはきみの言うままに。わが名、わが王太子の地位にかけて、すべてはきみの思うままにしよう」


 え? いま、コランタンはなんて言った?


 王太子?


 きっときき間違いね。


「ありがとう。うれしいわ」

「ちょっと待って。ミキ、ほんとうにあなたなの? だったら助けなさい。あなたの姉なのよ」

「ミキ、待ってくれ。すべてカトリーヌがしでかしたこと。だから、カトリーヌを断罪するなり処刑するなりすればいい」

「そうよ、ミキ。わたしは、あなたの味方だったでしょう?」


 お姉様とお父様とお母様は、嘘泣きしながら叫び始めた。


 知るものですか。だって、わたしは「大悪女」なのだから。


 レオンとフィリップとサミュエルが三人を拘束して謁見の間から連れだす間でも、三人はきくに堪えない罵詈雑言や嘘を並べ立てていた。




「ほんとうに最高だったよ、ミキ」


 コランタンとアリソンとレオンとフィリップとサイモンとみんなで大笑いしている。


 みんな口々に「最高だ」とか「カッコよかった」とか「ゾクッときた」とか言ってくれる。


 必死にがんばったから、褒め言葉は最高のご褒美になった。


 お姉様とお父様とお母様は、コランタンの隠れ家の一室に閉じ込めている。


 どうするか?


 コランタンは許すつもりはないらしい。


 いずれにせよ、皇太子からもなんらかの制裁が加えられる。


 おそらく、爵位は返上させられる。皇太子のことはよくわからないけれど、あの様子なら実父である皇帝にどうとでも言って返上するように仕向けるに違いない。それがかなうかどうかはわからないけれど。


 いずれにせよ、ヴェルレーヌ侯爵家としてもお姉様個人としてもただではすまされない。


 だったら、ユルバン王国に連れて行ってそれ相応の制裁を加えるのか?


 でも、他国の貴族を断罪するとなれば、それこそ外交的にどうかということになる。


 やはりこの国に残し、皇太子に処断を委ねるしかない。


 どちらにせよ、わたしとしては「ざまぁみろ」である。





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