いざ、皇宮へ
わたしの存在は、どう控えめにみてもアリソンの美しさを穢している。だけど、せっかく彼女が全力ですこしはまともに見えるようにしてくれたのである。なにより、コランタンがプレゼントしてくれたドレスを着用出来た。
割り切ることにした。
アリソンのアドバイス通り、あとはコランタンに任せよう。
だから、堂々としていればいい。
真実はどうであれ、わたしはお姉様のかわりに彼に嫁いだのだから。
そういえば、コランタンは「野獣将軍」って噂されていたのよね?
お姉様が言っていたのを思い出した。
その噂は大間違いだわ。
アリソンとともにエントランスに行くと、コランタンたち男性陣が待っていてくれた。
コランタンの将校服姿が素敵すぎる。
ひときわ光り輝くその高貴な姿を目の当たりにし、目がくらんでしまった。付き添ってくれているアリソンが支えてくれなかったら、階段から転げ落ちたかもしれない。
コランタンたちは、体勢を整え直したわたしと彼女を見た瞬間息を飲んだ。
アリソンの美しさに気圧されているという感じかしら。
コランタンは、すぐに近づいて来てエスコートしてくれた。彼は、ずっとわたしにお世辞を言ってくれた。
気を遣わせてしまってかえって申し訳ないわ。
わかりやすい彼のお世辞をききつつ、申し訳なさでいっぱいだった。
そうして、馬車に乗りこみ皇宮へ向かった。
皇宮では、皇太子の第一の客間に通された。
すでに来客があるらしく、待たなければならないという。
コランタンは、応対に出ている外交官を頭ごなしに怒鳴りつけた。
「ユルバン王国をバカにするのか? だったらもういい。両国の関係が悪化するだけのこと。そちらの皇太子は、それほど失礼なことをしでかしてくれた。それに対する言い訳をきいてやろうとわざわざ出向いてやったというのに。これがラストチャンスだ。おれが妻のことで話があると伝えろ」
コランタンは、これみよがしにわたしの肩を抱いて自分の方に引き寄せた。
「は、はい。いますぐ」
気の毒な外交官は、すぐに第一の客間を出て行った。そして、ほどなくして戻って来た。
皇太子がすぐに会うと言っている、と。ただ、先客があり、帰らないのだという。
そんなことは関係がないとばかりに、コランタンはわたしをエスコートしてくれ、皇太子のいる謁見の間へ向かった。
アリソンたちもぴったりくっついて来てくれているのが心強い。
皇太子は、謁見の間の玉座に座っていた。
本来なら、そこは皇帝と皇妃が座る場所。それにもかかわらず、まるで自分が皇帝のようにふんぞり返っている。
入っていくと、なかなか帰らないという客人も含めてこちらを見た。
なんてこと……。
その無遠慮というか非常識というか、とにかくその客人はわたしの家族だった。つまり、お父様とお母様とお姉様である。
「ミキ、怖れるな。きみは正しい。間違っているのは向こうだ。だから、堂々と非を唱えるといい。これからのきみ自身の為にも、きみは家族にきみ自身の強さを示さなければならない。いいね? 大丈夫。おれがついているから」
彼の腕をとっているわたしの手を、彼の手がやさしく撫でた。
「はい、コランタン様」
わかっている。すべて彼の言う通りだから。
逃げてはいけない。
家族の非を唱えるのよ。戦うのよ。
「皇太子、いや、カミーユ。礼を言いに来た。『大悪女』を譲ってくれてありがとう、とな。最高のレディだ。この国にやって来た甲斐があったというものだ」
コランタンは、ほんとうに唐突に言葉を投げつけた。
「ああ、なにも言わなくていい。おれをペテンにかけたとか、そんなことは些細なことだ。なあ、そうだろう?」
「いや、ち、違う。おれも知らなかったんだ。まさしくいま知ったばかりで……」
皇太子は、玉座から腰を浮かせた。




