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第17話 王女の心






 戦闘から数日が経過した現在、レーヴェはスピルリナ本星の軍港に停泊している。

 後にクラルス決戦と呼ばれる事になる大攻防戦は無事に終わりを迎えたからだ。


 パーゲルとスピルリナの和平交渉といったイベントこそ無いが、元々支配宙域が大きく離れている両国が国交を考える必要は無いのである。


「さてと、行きますか~……」

「ご同行感謝する」


 滅多に下船しないコウがレーヴェを降りている。

 二度目ではあるが非常に珍しい行動、それには現スピルリナ王に呼び出されたという原因があった。


「コウ殿、王はそこまで礼節を気にする人では無い。だがその……身内に少々気難しい方が居るので、一応気を付けて頂けると助かる」

「向こうが守ったらな」

「だろうな……」

『むしろオーラ近衛兵長はこれ以外の解答があると?』

「む……」


 アイオーンからの言葉で僅かに頭を使うオーラだったが、答えは分かりきっている。


「無いな」

「だろ?」


 満場一致の問答を終え、二人は前回同様に車に乗り込む。

 観光する暇も無く目的地へと向かう車だが、前回と異なり窓は外が見える状態となっている。






――――――――――――――――――――






 程なくして車は無事に古い西洋風建築の建物、スピルリナの王宮に到着。

 入り口には門があり、運転手はそこで車を止めた。


 待機していた守衛の一人が後部座席のドアを開ける。


「ようこそおいで下さいました。武器の類はここで提出をお願いします」

「了解だ」


 戦争状態が終わったとは言え、ここが最重要拠点である事は変わりない。

 未だ王宮では厳重な警戒態勢が敷かれている。


 コウは素直にハンドガンを預けた。


『流石に基礎的な暗殺対策はされるんですね』

「申し訳ない……」

「まぁ無警戒な方が怖いからさ、良いって良いって」


 門を潜り庭園を抜け、大きな扉を潜る。

 その先では柔らかなカーペットと巨大なシャンデリアが彼らを出迎えた。


『……正直な所、コウは全身義体なのですから武器を仕込む事も出来ますよね』

「あっ、ちょ! そういう事言うなって!! ありもしない事で無駄に可能性を作るんじゃありません!!!」

『はいはーい』

「ハハッ、二人は本当に仲が良いんだな」

「まぁな」

『えぇ。何せ九年の付き合いですから』

「もうそんなになるか」

「馴れ初めもいつか聞いてみたいものだが、今は……」

「あぁ、分かってるよ」


 オーラはいくつかの分岐点を曲がり、入り組んだ通路の先にある部屋へとコウを導く。

 大きなテーブル中央に置かれたその部屋には、既にスピルリナの重鎮達が集まっていた。


 彼らは護衛を含めた全員が緊張の面持ちでコウを迎える。


「ようこそ、我らが英雄殿。私はスピルリナ国王のコーディエだ」

「ご丁寧にどーも。まぁ言うまでも無いとは思うが、俺はレーヴェの持ち主のコウだ」

「よろしく頼む」


 両者は握手を交わし、部屋には和やかな雰囲気が流れた。

 互いの第一印象は良好と言った所だろう。


「……ただ言っとくが、俺は英雄って柄じゃねぇからな。下手に担ぎ上げんじゃねぇぞ?」

「いや、しかし……」

「陛下」


 オーラはコーディエ王にアイコンタクトを飛ばし言葉を止める。

 普通であれば無理矢理にでも英雄として担ぎ上げたい所だが、コウ相手でその手を使う訳には行かない。


 不幸にも交渉してしまったパーゲル軍がどうなったか知っている二人は、大人しく引き下がる事にした。


「……分かった。まずはそこの席にかけてくれ」

「おうよ」


 コーディエ王はコウの着席を確認し、軽く息を整えて話を始める。


「早速だが、この度は我らを救って頂き感謝する」


 コーディエ王に続き、重鎮達が一斉に頭を下げた。

 その価値を知らないコウにとっては大した意味を持たない行為であるが、スピルリナとしては儀式とも言える必要な行為である。


 だがそんな中で唯一、頭を下げない人物が存在した。


「……シオン王女!?」

「おーおー、早速目を付けられちゃった感じですか?」


 コウは煽るような口調で軽口を叩くが、シオン王女は顔色一つ変えない。

 恨みや妬みの炎が爆発する時期は過ぎ去り、静かに燃え広がるのが現状だからだ。


「王家はこれまで何千、何万年もの長きに渡り金獅子を守ってきました。ですがその結果現れたのがこのような品のない男である等と……誰が受け入れられる物ですか!!」


 シオン王女は机を叩きつけその場を後にする。

 重鎮達からすれば冷や汗モノの行動ではあるが、一方のコウはただ不思議に思うしか無い。






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