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残念令嬢の恩返し~婚約者に浮気されている公子様、あなたにお味方いたします!~  作者: 伊簑木サイ
【5】お酒で失敗しました……。

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 さて、シュリオス様と二人きりになってしまいましたよ! いえ、嫌ということはないのです、そんなこと、あるはずがない。ただ、眼鏡をはずしてしまっているから……。

 そのほうがくつろげるのだろうとわかっていても、実のところ、お顔が良すぎてドキドキバクバクしてくるので、眼鏡をしてくれたらいいのにと思ってしまう。特に、二人きりでなんて、他を見る振りをして視線をそらせないしー!


「もうしばらく休みますか?」


 ……ほらあっ、何でもない問いかけなのに、ニコッとされただけで、ドギマギしてきたあっ! 隣り合って座ってじっとしているなんて、できないわあああー!


「いいえ、よろしければ、踊りませんか?」

「いいですね、喜んで」


 先に立って手を引いてくださる。あら、眼鏡は? どうして掛けないの!?


「眼鏡をお忘れですよ」

「このくらいなら平気です。実は見えないわけではないのですよ」


 そうなの!? しまった、策に溺れた、踊るなら眼鏡が要ると思ったのに! これではよけいに近くで、見つめ合うことになるではないのー!!


 手を取られ、一足目ですっと音楽に乗り、悠々と踊りだす。

 うっ、楽しそうに微笑んでいるシュリオス様が神々しい! ぶわあって胸が熱くなる。顔もどんどん、耳にも、お腹にも、熱が広がっていく。


 なんて鮮やかな瞳だろう。シャンデリアの灯りを映して、きらきらゆらゆらと怪しく燦めいて……。こんなに美しい人がいるなんて、信じられない。顔だけではなくて、心も美しい人だから、きっとそれが滲み出て、こんなに心を打つ美しさなのだわ。


 繋いだ手が、腰を抱く手が、触れる体が、見つめる瞳が、次のステップを教えてくれる。触れあったすべての場所から、感覚が繋がっていくよう。

 私の手は、彼の手で、彼の手は、私の手。鼓動は同じ時を刻み、足はまるで初めから四つあったみたい……。


 彼の楽しさが流れ込んできて、私の楽しさも伝わっていくのがわかる。それが嬉しい。

 心までも交じり合って、浮き立つ気持ちを共有して、複雑に細かいステップを踏んでいく。息が上がる。乱れた息さえおそろいで、目を見交わして笑いあう。何曲も、何曲も、何曲も……。


 頭がふわふわしてきた。なんだかターンをするたびに、くらくらする。だけど大丈夫、シュリオス様が支えてくださっているから!

 あら? でも、ううーん、おかしい、足下がおぼつかないわ……。

 力が入らなくて、かくんとよろけた。すかさず抱き留めてくださる。


「セリナ嬢、大丈夫ですか!?」

「はい! 大丈夫ですー! ありがとうございます! 失敗してしまったですねー」


 無性におかしくて、ひゃひゃひゃと笑った。

 上から覗き込む彼が、目をぱちくりとさせていて、それがまたおかしくて笑ってしまう。


「かわいいですね、シュリオス様!」

「かわいい、ですか?」


 もっとぱちくりとしながら聞き返してくるから、うんうん、そうですよ、と頷いて、ほっぺたをつついてやった。


「そんなに次々かわいい顔を繰り出して、乙女心をキュン死させるおつもりですか?」


 彼はじっと私を見つめたまま何度か瞬きした後、小首を傾げた。

 そういう! ところ! そういうところ!! ですよ!!


「あざとかわいいにもほどがあります!!」

「もしかして、酔っていますか?」


 何か言われたけれど、つっこまずにはいられなくて思いきり叫んでいたので、何を言われたのかはわからなかった。

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