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さて、シュリオス様と二人きりになってしまいましたよ! いえ、嫌ということはないのです、そんなこと、あるはずがない。ただ、眼鏡をはずしてしまっているから……。
そのほうがくつろげるのだろうとわかっていても、実のところ、お顔が良すぎてドキドキバクバクしてくるので、眼鏡をしてくれたらいいのにと思ってしまう。特に、二人きりでなんて、他を見る振りをして視線をそらせないしー!
「もうしばらく休みますか?」
……ほらあっ、何でもない問いかけなのに、ニコッとされただけで、ドギマギしてきたあっ! 隣り合って座ってじっとしているなんて、できないわあああー!
「いいえ、よろしければ、踊りませんか?」
「いいですね、喜んで」
先に立って手を引いてくださる。あら、眼鏡は? どうして掛けないの!?
「眼鏡をお忘れですよ」
「このくらいなら平気です。実は見えないわけではないのですよ」
そうなの!? しまった、策に溺れた、踊るなら眼鏡が要ると思ったのに! これではよけいに近くで、見つめ合うことになるではないのー!!
手を取られ、一足目ですっと音楽に乗り、悠々と踊りだす。
うっ、楽しそうに微笑んでいるシュリオス様が神々しい! ぶわあって胸が熱くなる。顔もどんどん、耳にも、お腹にも、熱が広がっていく。
なんて鮮やかな瞳だろう。シャンデリアの灯りを映して、きらきらゆらゆらと怪しく燦めいて……。こんなに美しい人がいるなんて、信じられない。顔だけではなくて、心も美しい人だから、きっとそれが滲み出て、こんなに心を打つ美しさなのだわ。
繋いだ手が、腰を抱く手が、触れる体が、見つめる瞳が、次のステップを教えてくれる。触れあったすべての場所から、感覚が繋がっていくよう。
私の手は、彼の手で、彼の手は、私の手。鼓動は同じ時を刻み、足はまるで初めから四つあったみたい……。
彼の楽しさが流れ込んできて、私の楽しさも伝わっていくのがわかる。それが嬉しい。
心までも交じり合って、浮き立つ気持ちを共有して、複雑に細かいステップを踏んでいく。息が上がる。乱れた息さえおそろいで、目を見交わして笑いあう。何曲も、何曲も、何曲も……。
頭がふわふわしてきた。なんだかターンをするたびに、くらくらする。だけど大丈夫、シュリオス様が支えてくださっているから!
あら? でも、ううーん、おかしい、足下がおぼつかないわ……。
力が入らなくて、かくんとよろけた。すかさず抱き留めてくださる。
「セリナ嬢、大丈夫ですか!?」
「はい! 大丈夫ですー! ありがとうございます! 失敗してしまったですねー」
無性におかしくて、ひゃひゃひゃと笑った。
上から覗き込む彼が、目をぱちくりとさせていて、それがまたおかしくて笑ってしまう。
「かわいいですね、シュリオス様!」
「かわいい、ですか?」
もっとぱちくりとしながら聞き返してくるから、うんうん、そうですよ、と頷いて、ほっぺたをつついてやった。
「そんなに次々かわいい顔を繰り出して、乙女心をキュン死させるおつもりですか?」
彼はじっと私を見つめたまま何度か瞬きした後、小首を傾げた。
そういう! ところ! そういうところ!! ですよ!!
「あざとかわいいにもほどがあります!!」
「もしかして、酔っていますか?」
何か言われたけれど、つっこまずにはいられなくて思いきり叫んでいたので、何を言われたのかはわからなかった。




