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07.おしゃべりの時間




「ねえ、クロエは午前中は何をしているの?」


 ベルガーとのお楽しみの時間。

 私はぎくり、とした。この質問が来るってことはギルドに行ってることはバレてないな。気付かれないもんだなあ。


「ええと、最近はですね、その……」

 ギルドに行っていたとは言えないので、ついにこれを渡す時が来たのだ。

「これをデザインして、作って頂いてました」


 ことん。と小さな箱を置く。


「特別な日でも何でもないのですが、プレゼントです。何か、あげたいなと思ってまして」

 人にプレゼントなんて中々しないから緊張する……!


「あけてもいい?」

「もちろん」


 中にはサファイアで出来たピアスが入っていた。


「綺麗だ。つけてくれないか?」

「私がですか!?」

「他に誰がいるというんだ」

「ええ……チャイとか?」


 ベルガーがむす、とチャイを見た。チャイは困ったように私を見た。私がやるしかないようだ。


「人にピアスなんて付けたことがないので、痛かったら言ってくださいね」

「俺は痛いのも平気だぞ!」

「もう!」


 なんて言いながら、私はベルガーの耳を触った。人に触れるのって、こんなに緊張したかしら?手が震えちゃう。頬が熱い。

……あら?髪の毛も黒くて艶やかでとっても綺麗。でも私の髪の毛より硬いのね。なんか不思議な感じ。

 じっと観察してしまった。


「あの、クロエ?そんなに見られると……照れる」


 わ!恥ずかしい。自分の世界に入ってた。


「やっぱり自分でつけてください!」

とピアスを押しつけた。

 相変わらずベルガーはクスクスと笑い、しばらくピアスを嬉しそうに眺めていた。


「この色さ、クロエの瞳と同じ色なんだな。嬉しい」

 言われてから気がついた。私、そういえば碧い瞳なんだわ。

 自分の瞳と同じ物をあげるのって、よくご令嬢がするって本で読んだけど、無意識だったとはいえ、私も乙女だったのだ。さらに恥ずかしくなった。


 ベルガーはピアスをはめながら話しだした。

「そういえばね、先日この鉱石が採れるところに行ってきたんだけど」


 本日2度目のぎくり、である。


「あら、そこで何かありましたの?」

 いつも通りを装って尋ねた。

「面白い少年と出会ってね。今は一緒にパーティーを組んでいる」


 やっぱり、私の話ね!チャイをちらりと見ると肩が震えていた。笑わないで!バレちゃうから今は我慢して!


「面白い少年、ですか」

「そうなんだ。どことなくクロエと似ていてね?君、弟っていないよね?」

「妹がおりますけど……男兄弟はおりませんよ」

 というかその子、女の子ですからね。

 私の考えなど露程も知らないベルガーは少年の事を色々教えてくれた。


「この間なんかね、退治したモンスターの頭を被ってギルドに来たんだ!」


 ああ、待って!ストップ!チャイが笑っちゃう!目に涙たまってる!吹き出しちゃう!


「そ、そうなの。面白い子ね。チャイ、お茶のおかわりをお願い」

「かしこまりました」

 一旦チャイを退出させた。これでとりあえず落ち着くだろう。


 ギルドのことを話すベルガーの目はキラキラしていた。

「なんだか最近俺は出逢いに恵まれているんだよな」

と思い出し笑いをしていた。それはもうケラケラ笑っていた。


 ディーデイルの鱗処理の時に紙袋前面に鱗貼って踊ったこと笑ってます?

 それともぬかるみに足を取られてそのままゴロゴロと坂を転がってったこと笑ってます??

 それともえーいと投げた石が偶々モンスターに当たって1人めちゃくちゃ狙われた時のこと笑ってます???

 なんか、自分のことで笑ってもらえるのが嬉しくてついふざけちゃうんだけど……私何やってるのかしらね。


 でも、気付いていないとはいえ、その子は私なわけで。出逢いに恵まれていると言ってもらえて。

 また、私は嬉しいこと言ってもらっちゃったな。ふふふ。


「その子、オレガンって名前の子なんだけどな、俺のあげた剣を大切に使ってくれるんだ。腕の上達も早いしいい子だよ。いつか、会えるといいね」


 会えるっていうか本人なんですけどね。

 なんてこと言えるわけもなく


「そうですね、ベルガーがそんなに楽しそうなんだもの。いつかお会いできると嬉しいわ」

と返しておいた。


「そういえば、ベルガーって、お城に篭って公務に全うされているのかと思っていたのですが、ギルドに所属されているんですね?」

「ああ、ギルドに所属して、下町の様子を知ることも俺の仕事だからね。身分を明かしちゃうとよそよそしくなるかもしれないから、ベルって名前で一般人として参加してるんだよ」

 身をもって町の様子を知ろうとしていたなんて。だから服や名前を……と納得した。


「じゃあ、ギルドでベルガーが一般人じゃないって知っている人はいないの?」

「ギルドマスターと受付してくれるお姉さんだけは知ってるよ」

 あのお姉さんか。なるほど。あとはギルドマスター……って会ったことないわね。いつか挨拶しに行かなきゃ。



 そういえば、とベルガーが話し出した。

「今週末はおそらく会いに来られない」

 おや珍しい。忙しいんですかね。ベルガーは言葉を続けてくれた。

「西側で、モンスターの異常発生が起こっているらしくて。メンバーにも明日あたりには連絡する予定なんだが、泊まりになるかもしれないんだ。泊まりと言っても野宿なんだが……」


 野宿!なんて楽しそう!


 メンバーにも連絡するって言ってたよね。ってことは私もいけるんじゃない!?

 親には城に行くって言っておけば大丈夫でしょ!無断外泊しても気付かなさそうではあるけれど……。


 わくわくするけれど、今はとりあえず関わってないふりをしなきゃ。

「野宿、ですか。モンスターの出る地に行かれるのでしょう。お怪我のないように気をつけてくださいね」

「ありがとう!ちゃんと原因を突き止めて帰るからね」


 その後はいつも通りたわいのない話で盛り上がり、時間になってしまったので、

「また明日ね。」

とベルガーは帰った。




チャイもパーティーメンバーにしたかったなと思います。

いつか入れるといいですね。

読んでくださりありがとうございます!

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― 新着の感想 ―
[一言] チャイさんは回復魔法が使えるそうなので、ヒーラーとして即戦力じゃないですかね。主人公さんちのゴキ親に雇われメイドやってるより稼げるよきっと。
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