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小噺 酒屋にて


(ベル)




 みんなと別れ、クロエを家に送った後、俺は酒屋に向かった。


「お!きたきた」


 待ち合わせ相手はダズである。さっきの話のノリから、男子会をすることになったのだ。


「「かんぱーい」」


2人でグッと酒を流し込んだ。


「可愛かったろ?俺の恋人は」

 そのうち嫁さんになるんだぜって言いたかったけど大袈裟に伝わりそうでなんとなく言わなかった。


「ああ、話に聞いてた以上だったな」

 ダズは、がははと笑って大盛りのご飯をかき込んだ。


「ダズ、お前は恋人作らんのか〜?」

「げほげほっ、何を急に言い出すかと思えば!」

「ギルドに女性もいるし、いい人はいないのかよ〜」

「ベル、まさか酔ってるんじゃないだろうな?」


 失礼な!酒には慣れているから酔ってない!が、今日は可愛いクロエがたくさん見られてハイになっている気はする。


「恋人になったらいいなと思う人はいるが、生憎思いを伝える気はないんだ」


 ダズの返事に今度は俺がげほげほとむせる番だった。


「いつのまに!?ギルドのやつか?俺知ってる人か?」

「ああ」

「まさか……受付の……」

「いや違うな」


 真顔で否定されてしまった。


「……誰?メンバーか?」

「ああ」

「まさか、メリー?」

「ああ」


「お前、ロリコンだったのかーーー!!!」

「ちがぁーう!!!」


 幸い騒がしい酒屋だったので、周りの人に聞かれている様子はなかった。


「メリーってあまり、周りにいないタイプのふわふわした可愛さがあるじゃないか。ええと、守ってあげたくなるような?」

「まあな」

「そこに惹かれたんだ。でも俺様、自分の見た目が厳ついのわかるからよ、あんまり怖がらせないように近付かないようにしてるんだ」


 確かに、メリーが隠れる時は大抵俺の後ろだな。


「それに今はまだ小さいだろ?もっと成長して、色々見て、様々なことを知ったら告白してもいいかなって思うんだ」

「ダズがそれでいいならいいんだけど……誰かに取られちまうかもよ?」

「それは……あまり考えたくないな」


 珍しくダズが弱気だった。丁寧に接しすぎて、どうしていいかわからないようだった。


「なんとなく、今のままがいい気もするけどな」

「弱気だな、ダズ」

「そりゃあ今までこんな経験ないからな」


 くっくっくと2人で笑い合った。


「さて、今度はおまえのばんだぜ。なれそめやら惚気やら存分に聞かせてもらおうじゃないか!がはは!」

「なれそめか〜、噂に聞く程度で知っていたんだが、一目惚れしてなぁ」

「意外におまえ、乙女チックだな」


 そうか?そういうもんだと思っていたんだがなあ。


「芯が強くて、でも繊細でな。笑った顔がめちゃくちゃ可愛いんだ。透き通るような髪も陽の元でキラキラ輝いてなぁ。声も可愛いだろ」

「つまり全部だな」

「そうだな!」


 それからも俺は惚気たが、ダズはいつものように、がははと笑って聞いてくれた。




小噺二本投稿しました。

読んでくださりありがとうございます!

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