15.恋話
ギルドでメリーちゃんと合流してクエストに来た。
「だあああ!!!」
「フォイヤーバール!」
「アイスバール!」
3人が戦っているところをメリーちゃんと2人離れたところで見守っていた。
「……ヒール」
遠隔からでもヒール出来るようで、メリーちゃんは誰かが怪我をするとヒールと唱えていた。最初にオレガンの手を握ってヒールしてたことを、ダズたちが驚いていたことにも納得した。
「あらら、皆さんお強いのね」
知ってはいるけど、やっぱり強いなあと思った。
「……うん」
メリーちゃんはあまり話してくれないが、ちゃんと反応を返してくれる。可愛い。
しばらく気付かれないようにメリーちゃんの方を見ていた。
……ん?なんていうか、目は口ほどに物を言うというか……
「もしかして、ダズのことが気になってる?」
さっきから、ダズのことを目で追っている気がしたのだ。
ピャッと小さな肩が跳ねた。ふるふると震えながらこっちを向いたメリーちゃんは、涙目で顔が真っ赤だった。頭はギ……ギギッ……と効果音がつきそうな動かし方だった。
「聞いてしまってごめんなさい!」
私は慌てて謝った。聞かれたくないこともあるのは私が1番よくわかってるのに!
しばらくお互い黙っていたが、口を開いたのはメリーちゃんだった。
「……あの、クロエさんは……ベルと恋人なんですよね」
「ええ、そうよ」
「……どうやって、その……」
顔を真っ赤にして何やらもにょもにょ言っていた。
っっか〜〜〜!!!可愛い!!!こんな森のど真ん中クエストの真っ最中で甘酸っぱい恋愛トークができると思わなくて心弾ませた。
幸い、メリーちゃんは話しつつヒールしてくれているようだし、会話を続けることにした。
「どうやって恋人関係になったか、ってことであってる?」
こくんとうなずいた。
ベルは身分を隠しているようだし、舞踏会のことは言わない方がいいのよね。
「ええと、知り合いが集まる場があったんだけどね、ベルとはそこで出会ったの。一目惚れした〜って言ってくれてね」
「……ひとめ、ぼれ!」
メリーちゃんの目がキラキラしていた。気になるお年頃だもんね。
「それから恋人になったのよ」
「……そうなんだ」
そしてメリーちゃんは私のことをチラッと見て、もじもじしながら
「……どうしたら、そんなに可愛くなれますか」
と聞いてきた。
メリーちゃんはそのままで充分可愛いよおおお、と思ったが流石に口にこのまま出すわけにもいかないので、
「相手が、どんな好みか知るといいかもしれないわね。そのままでも可愛いと私は思うんだけどな」
と言った。
「……ダズの……好み」
やっぱりダズか〜!にやけ顔を出さないように私は全神経を集中させた。
にしても意外だったわ〜、ダズって豪快じゃない?年も少し離れているし……根掘り葉掘り聞きたいけど、そんなことしたら嫌われちゃうかも……。
「そういえば、ベルとリサはこのこと知ってるの?」
「……ベルは知らない。……リサは知ってる。でも、リサは、知らないふり、してくれる」
下手にサポートするよりは、見守った方がいいという考えだろう。変に刺激すると、叶わぬ恋になるどころか、パーティメンバーの不仲に繋がっちゃうもんね。それは避けたいな。
「私に、協力できることがあったら言ってね。それ以外は、私も知らないふりしておくわね」
「……ありがとう」
みんなの方を見ると、ちょうど戦闘が終わったところのようだった。
「がっはっは!いい汗かいたぜ」
「すっきりしたっす〜」
「悪い、待たせたな。2人とも大丈夫か?」
私とメリーちゃんは顔を見合わせて笑った。
「なんか2人で仲良くなってるっす〜!ずるいっす〜!私も混ざりたかったっす〜!!!」
「また今度女子会しましょうよ」
「……リサも一緒にね」
「明後日!明後日はどうっすか!私空いてるっす!遊びましょうっす〜!」
「私は大丈夫よ」
「……シスターに、聞いてみる」
きゃっきゃしているのを尻目に
「俺たちも男子会するか?」
「がっはっは!その時はスイーツではなく酒だろうな!」
とダズとベルが話していた。
◇
その後、みんなと別れ、ベルが家に送ってくれて、ボフンとベッドにダイブした。
「随分と楽しそうだったじゃないノ」
「うん!楽しかった!」
「それは良かったです。クロエ様、湯あみの準備が出来ましたよ」
「ありがとうチャイ、ちょっと待って」
そういってブレスレットを確認した。今日来れないかという連絡が何件も入っていたので、行けなくてごめんねと返しておいた。
ぴこん!
新しいメッセージが届いた。リサから個人宛だった。
"明後日空いてないっすか〜?例の会開くっす!ついでにベルの彼女さんが来るっすよ〜!"
ずっと、嘘を吐き続けるのは嫌だと思っていた。もしかしたら、ここで打ち明けるのがいいかもしれない。この2人に打ち明けたら、ベルガーにも話しやすくなるかもしれない。
私は明後日、この2人に自分のことを打ち明ける決心をした。
メリーちゃん回でした。
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