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12.デートの約束




 遠征クエストから帰った日、すぐにベッドに沈み込んでしまった私を、チャイは一生懸命介抱してくれた。そのおかげですっきりと目覚めることができたのだった。


「ふわぁ……んー、おはようチャイ」

「おはようございます、クロエ様。……あの、この猫は一体?」


 枕元には、すやすやと気持ちよさそうに眠るケイシーがいた。大きさは一般的な猫と変わらない姿である。サイズ変更出来るのね。


「私の使い魔なの!ケイシーって言う名前なのよ。可愛がってあげてね」

 チャイなら言わなくても可愛がってくれそうだけど。


「ケイシー様ですね、わかりました」


 そこでふむ、とチャイは考え込んだ。


「ケイシー様は、クエスト先でお嬢様の使い魔となったのでしょうか」

「ええそうよ」


「すると、"この猫はオレガン様の使い魔"という認識がベルガー様にあり、ケイシー様も"オレガン様とクロエ様が同一人物"であることを知らないと……?」

「あっ」


 そっか、被り物してたからわからないだろうし、説明しなきゃなあ。それで、ベルガーが来るときは私の中に入っててもらうように協力してもらわなきゃ。


「もしもし、ケイシー、起きて」

 起こすのは忍びないけど、今は起きてもらわないと困る。


「むにゃ、おはよう。そんなに焦ってどうしたノ?」

「あのね、ケイシー。言わなきゃいけないことがあって……」


「あなたがオレガンってこと?」


 びっくりして固まってると、続けてくれた。


「わかるわよ、リンクしてるもの。完璧に全てがわかるわけじゃないけど、考えとか感情とか、ぼんやり見えてるわヨ」

「そう、なんだ。じゃあベルガーに内緒にしてることも」

「わかってるわよ。協力するわ。でも早く打ち明けた方がいいんじゃないかしら」

「うぐ、なるべく、ハヤクイイマス」

「そう……ま、別に私はどうでもいいのだけどネ。また寝るわ」

 そう言ってケイシーは、もぞもぞとベットに入っていった。


 打ち明けた方がいい、か。頭ではわかってるんだけどなあ。どうしても、野蛮だ!って言われそうで言い出せないのよね。今日、言えそうだったら言ってみようかしら。

 見限られたらどうしようと思う反面、ベルガーと会えるので、夜が楽しみであった。



 夜、ベルガーがいつも通り部屋にやってきた。


「久しぶりのクロエだーっ、会いたかった!」

と、いつもよりも抱擁がぎゅーっと力強く長かった。


「ベルガー、少し苦しいわ」

と言いつつ私も満更ではない。


 オレガンとして近くにいたものの、クロエだと正体を明かしているわけではないし、ギルドのメンバーとしての接し方とはまた違うので、恋人としてのスキンシップが多いのはとても嬉しいのだ。


「遠征はどうでしたか」

「道のりはすっごく長かったんだがな、またオレガンがやらかして面白かったんだよ」


 湖に落っこちた話とか、猫型モンスターと気付いたら契約してた話とか楽しそうに事細かに教えてくれた。


 明かすなら今じゃない!?


「あの「そういえば、クロエって何をするのが好きなんだ?」


 遮られてしまった。


「道中でオレガンに、休みの日にデートに誘いたい人がいるんだがどこがいいだろうと聞いたところ、本人に聞いたらどうかと言われたんだ。俺の好きなところへ連れていってもいいんじゃないかと言われたんだがな、俺は稽古場や王城しかわからなくて……それに、クロエの好きなものを知りたいと思うんだ!」


 オレガンの話をしていたから芋蔓式に思い出したのだろう。


 私の好きなところって……ギルドばかり行ってたから今まで行けなかった、行ってみたいところに誘うのはいいかもしれない。


「街に行きませんか。ウィンドウショッピングというものに憧れていたんです。殿方にはちょっとつまらないかもしれませんが」

「いいぞ、俺も街の様子はみておくべきだしな。明後日でいいか?」

「はい」


 こうして、デートが決まった。……あれ?ここでギルドです!って言えば打ち明けやすかったかな!?と思ったのはベルガーが帰ってからのことだった。




ようやく、オレガンでなくクロエターンです。

読んでくださり、ありがとうございます!

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