11.ケイシー
急に私の胸が光ったと思ったら猫が出てきた。しかも大きい。
「な……なんっ!?」
ぺたぺたと胸元を確認したが、穴が空いたりした様子はなかった。良かった。
「いつのまに?というかあなたはなんなの?」
「私ケイシーって自己紹介したじゃない。聞いてなかったノ?」
私以外の3人はぽかーんと固まっていた。
「それでケイシー、あなたは……?」
「私、一応上位モンスターなんだけど、過去に捕まっちゃってあの湖に閉じ込められていたの。久しぶりに人が来たから、湖から出るために一方的に契約させてもらったワ」
どうやら私はこの猫と契約したようである。
「それってなんかあるの?主に、悪いことがあるのか気になるんだけど……」
「特にないわよ?私の分の魔力が贈与できるとか、呼び出せるとかはあるけど……いわば使い魔とか召喚獣のようなものネ」
害がなさそうでひとまず安心した。良かったと言おうと3人の方を見ると
「もふもふ……」
「コイツ、悪食の噂の猫でねーか?」
「オレガンがなんか猫と喋ってるっす!何話してんすか!あわわわ……」
と口々に言っていた。
「リサ?ケイシーが何言ってるかわからないの?」
「いや、私だけじゃないと思うっす」
「なんか、にゃごにゃご言ってんのはわかったぜ」
「鳴き声にしか聞こえないな……」
「あ、私の言葉は主であるあなたにしかわからないわヨ」
「そういうことは早よ言いなさ〜い!」
じゃないと私ただの頭のおかしいやつじゃない!慌ててケイシーとの会話を伝えた。
「なんだ、悪いやつじゃないのか。良かったな」
と言いつつ、ベルはあからさまにそわそわしていた。さっきもふもふって言ってたし、もしかしたらケイシーを撫でたいのかも。私もしたい。
「オレガン、そいつが悪食の猫かどうか確認してもらってもいいか?」
「悪食の猫?」
そういえばさっきも言っていたな。なんだろう、悪食の猫って。
私は知らなかったので詳しく聞くと、悪食の猫とは、ある猫型モンスターを指すだそうだ。その猫は、ある一帯の生き物や食べ物を食べ尽くしてしまうという事件を起こし、恐れられているのである。だがしかし、ここ最近は被害がなかったらしい。
「ああきっとそれ私ネ」
人間の言葉がわかるらしく、それを聞いたケイシーは肯定した。
「いくら食べてもお腹いっぱいにならなくて。食べられるだけ食べてたのヨ」
それで魔力量増えたんだけどねと教えてくれた。
「もしかしてそれが原因で捕まったの?」
「おそらくそうネ。まああいつら、封印が精一杯だったみたいで、そのまま湖にぼちゃんだったけど。そのおかげで私の魔力はダダ漏れして、結果モーゲが異常繁殖することになったみたい。繁殖したのがモーゲで良かったわネ」
食べ尽くしちゃったら、忌み嫌われるのも自業自得だよなあと思うので、同情はしない。
繁殖したのがモーゲよりも厄介なモンスターじゃなくて良かったと胸を撫で下ろした。
「それよりもネ、あなた名前は?」
「オレガンだ」
「オレガン、私は湖から出るために一方的に契約をしたのだけれどネ……」
何やら言いづらそうにしている。
「契約したままで良いぜ?可愛いしもふもふだし、こっちとしては一緒に居たい要素満載なんだよな。あ、ちゃんと契約し直すべき?」
ケイシーが、ただでさえまん丸な目を更に丸くしていた。
「いいノ?」
「おう!悪食だと少し困るけど」
少しどころか結構困るけど。
「オレガンと契約してから飢餓感がないの。きっとあなたとリンクしてるからだワ。心配しなくて大丈夫」
「なら問題なし!」
こうして、私にとっても可愛い使い魔が出来た。
余談だが、帰り道は行きよりも時間がかからなかった。なぜなら、みんなでケイシーに乗って、木々を飛び渡り進んだからだ。
もふもふ……とベルが嬉しそうにしてるのを見た時、ちょっと嫉妬したのは内緒。
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