介護士は領地を運営する
読んでくれてありがとうございます。
楽しんでくれると嬉しいです。
新章開幕!
男爵になった。
領地を貰った。
しかし残念ながら、俺に領地運営の知識はない。なのでアーネスに頼ってみた。婚約者だし、知恵を借りるぐらい良いだろう。それに、人間は自分の得意分野を語るのが大好きだ。聞かれると必要以上に詳しく教えたくなる。
「まかせておけ。私がしっかり教えてやろう。」
予想通り、アーネスは得意げに応じてくれた。
公爵のやり方を見ているから、分かることも多いだろう。
「洗脳の黒幕は、ほっといていいんすか?」
マクセンの言葉にアルテナもうなずく。
その心配はもっともだが、警備隊も国も動いている。それに、転移魔法で逃げられたから、追いかける方法が分からない。こういう場合の捜査は、人数が多い組織の方が有利だ。一介の冒険者に過ぎない俺が闇雲に動いたって、どうなるものでもない。
ただ、1つだけ分かっている事は、逃げたのだからまたどこかで再挑戦するだろうという事だ。つまり、新しく騒動が起きたところに、逃げた黒幕がいる。その騒動が起きるのを待てばいい。というか、待つしかない。
で、その待っている間に、領地を何とかしようというわけだ。
まずは貰った土地を見てみよう。
「領地のほとんどが森林だ。村が1つある。
森林には魔物が多く、その魔物を狩る冒険者が集まって村ができた。」
アーネスがざっと説明してくれる。悩ましい土地だ。
魔物を駆逐して森林資源を使うか、森林資源を諦めて魔物めあての冒険者を集めるか。森が育つという事は、それなりに土地が肥沃なはずだから、開墾して農地にする手もある。
現実的には、順番に全部やるのがいいだろう。まず冒険者のサポートをする商人や施設を呼び込み、冒険者の数を増やす。現に住んでいる冒険者を大事にするところから始めるしかない。そして魔物が減って安全性が増したところで森林資源を利用。そうして木を伐採した土地を開墾して農地に。自給できる食糧が増えれば、冒険者が増えてもかなり対応できるはずだ。食糧以外は追加オプションとして考えるしかない。充実させるに超した事はないが、なくても何とかなる。
最終的に森の魔物が減ってしまえば、冒険者にとってうまみがなくなる。そうなる前に、装備とか霊薬とか、冒険者に必要なものを提供できる領地になっておきたい。
領主として俺がやるべき事は、ビジョンを示すことだ。前世で読んだビジネス書に書いてあった。当時は社長の仕事なんて俺には関係ないと思って読み飛ばしていたから、詳しくは覚えていない。でも組織の舵を取る、進むべき方向を示す、というのはリーダーの仕事だ。
部下が反対しても押し切る手腕が必要になる。同時に、間違った方向を示したら組織がまるごと潰れるリスクを負う。責任重大だ。そして生き残るために最も重要なことは、変化に適応することだ。日本が誇る某自動車メーカーも、元は全然別の業種だった。当時の社長が思いきって「これからは車を作るべきだ」と示したから、あの会社は今、世界に冠たる大企業になっている。
だが次の問題として、示したビジョンを実行してくれる部下が居ない。
「そんなもの、商人に任せてしまえばいい。
ただ、代金は必要になるが。」
しょうがない。稼ごう。Sランクになったから、1件の依頼の報酬額がとんでもない金額になる。領地が発展するまでは、俺1人の稼ぎでもかなり資金の足しになるだろう。
読者様は読んで下さるだけで素晴らしい。
ブクマとか評価とかして下さった読者様、ありがとうございます。
作者は感謝感激しながら小躍りして喜んでおります。
(((o(*゜▽゜*)o)))