介護士は不安要素を考える
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「彼はまさに救国の英雄だな。いったい何者だ?」
王都に迫ったドラゴン。そのブレスは一撃で都市を壊滅させる。国家機能が集まった王都に、そんな攻撃を受けたら国家存亡の危機だ。というか、まず間違いなく滅ぶ。司法・立法・行政がぜんぶ麻痺して、国家として統制が取れなくなってしまう。地方分権などという考え方は、この世界にはまだない。あっても実行しないだろう。交通網や通信網が未発達で、利便性が悪すぎる。
そんな危機に、しかし王国は打つ手がない。ドラゴンの鱗は鋼鉄より硬く、人間レベルの攻撃では剣も魔法も通じない。戦車に竹槍で立ち向かうようなものだ。毛ほどの傷もつけられず、簡単に蹴散らされるだろう。国軍を総動員しても、何の意味もない。犠牲者が増えるだけだ。
要するに、ドラゴンに狙われたら逃げるか滅ぶしかない。そして王都は逃げられない。住民も、あるいは王侯貴族だけに限っても、とても逃げるほどの時間はない。絶体絶命の窮地。それを刀1本で解決してしまった。英雄だ。まさに英雄だ。
「すぐに情報を集めよ。」
国王は命令した。
あれほどの戦力を放置する手はない。ぜひとも手元に置きたいし、他国に取り込まれるのは何としても防がなくてはならない。単純な話、あの男1人を差し向けられただけで、王国は滅んでしまう。なにしろ王国を滅ぼせるドラゴンを倒した男だ。あの男>ドラゴン>王国という図式が成り立つ。
王国に取り込めなくても、何とか情報だけは得ておきたい。動向を探り、敵対しないように注意深く動かなくてはならない。これは政治家としての本領だ。もし彼が他国に取り込まれたら、その国との関係を良好に保たなくてはならない。
現状、少なくとも、今回は助けられた。ならば次回も、という期待がある。王国から直接依頼できるように、そのルートを確保しておきたい。それにしても今回はどうして助けてくれたのか。何者かがそう依頼したのだろうか。そのあたりも調べておかなくてはならない。
「8種族か。」
洗脳がとけた獣人たちを整理してみると、全部で8つの種族――鼠・タヌキ・豚・象・アルマジロ・猿・シカ・牛の獣人たちが暴れていた。アーネスの獣人部隊に加わっている熊・馬・犬・猫・兎・虎の獣人たちと合わせて、国内に住んでいる獣人は全部集合した格好だ。
こうなると、他国での獣人たちが無事なのか心配になる。獣人は大きく分けて、魚類系・両生類系・爬虫類系・鳥類系・哺乳類系の5つの種類がある。この大別は、そのまま住んでいる場所の違いでもあるため、内陸で平坦な土地であるこの国には哺乳類系の獣人しかいない。
それが一通り洗脳の被害を受けたとなれば、他国で他の4系統の獣人たちはどうなっているのだろうかと考えるべきだ。ただ、実際にはそこに手出しできない。俺はただの冒険者だし、アーネスは警備隊の隊長だ。俺が他国の獣人に干渉しても影響力が小さすぎるし、アーネスやゴーファ公爵が動くとしたら、それはもう内政干渉だ。
「……まあ、それほど心配はないか……?」
魚類系の獣人は、海に住んでいて、暴れたとしても陸には上がってこない。船さえ出さなければ問題にならない。また淡水には入ってこられないので、両生類系や爬虫類系の獣人とぶつかる事もない。
その両生類系獣人は湿潤地域に住み、爬虫類系獣人は乾燥地域に住むので、これらも暴れたところでぶつかる心配はない。無理にお互いのエリアに入り込むと、過酷な環境に適応できずに死んでしまう。暴れるどころではないのだ。
鳥類系も同様である。山岳地域でなければ、飛行できるという事にメリットは少ない。体重が軽く、空中では踏ん張りが利かないので、まともにぶつかれば地上生物のほうが強いのだ。持ち上げて飛べる重量にもかなり制限がかかり、ろくな攻撃手段がないことから、平地では勝ち目が薄い。
そう考えると、どの種族も、洗脳されて暴れたら自滅する。だから被害が拡大する心配はない。そうすると、あの暗殺者風の男は、次にどこを狙うだろうか? そもそも最初は「蛇」から始まった。それが失敗しても、雑な方法で洗脳を使って騒動を起こそうとしてきたのだから、どうやら敵はこの国をターゲットにしている。俺たちとしても、この国を守るという視点で考えるしかない。影響力がその範囲にしかないからだ。
で、現実的にこの国に被害を与えられそうな集団というと、もうあとはドワーフやエルフぐらいだろう。
「いよいよドワーフ国やエルフ国へ行くべきかな。」
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