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介護士は鍛える・その4

読んでくれてありがとうございます。

楽しんでくれると嬉しいです。


修行回、折り返し地点です。

「さて、最後は剣術の予定だったが、考えた結果、剣じゃなくて棍棒を使って貰うことにした。」


 刀剣を使うには、3つのことに注意が必要だ。

 1つ、斬ること。やってみると難しい。実際、俺が居合を始めてすぐの頃、竹を斬る稽古では刀が竹の途中で止まってしまった。正しい角度で、必要なだけのエネルギーを与えて、刀剣を振らなくてはならない。それには正しい姿勢で、正しい動きをする必要がある。

 2つ、防ぐこと。自分が武器を持つなら、相手も武器を持つと考えなくてはならない。相手の方が強い武器を持っていると考える必要すらある。広い場所なら、刀剣に対しては、槍のほうが有利だ。リーチが長い。狭い場所なら小太刀や短剣のほうが有利だ。刀剣では自由に振り回せないから。そういう場合にどう対処するか、1つ1つ技を覚えなくてはならない。

 3つ、刀剣以外での攻撃。ここで言いたいのは、槍とか弓とかの事ではなく、目つぶしとか、剣術の途中で蹴りが来るとかの、いわゆる卑怯な手、戦場剣術だ。これは経験を積まないと難しい。分類すれば「剣術」「格闘技」「その他」の複合だからだ。どのタイミングでどの技を使うかは、センスによる。そしてセンスとは、経験の量なのだ。沢山経験したことがセンスになる。


 そういったわけで、素人に刀剣を教えるのは難しい。教えるにしても、基本的な使い方「斬ること」だけを教える事になるだろう。

 ところが、刀剣ではなく棍棒を使うとどうなるか。

 斬るためには、3つの要素が必要だ。正しい姿勢、正しい動き、必要なだけのエネルギー。これが揃って初めて、切断できる角度で、切断できるエネルギーを持って、刀剣が対象に命中する。

 では棍棒なら。必要なだけのエネルギー。それだけだ。正しい姿勢も、正しい動きも必要ない。棍棒には刃なんてないから、どの角度で当てても、運動エネルギーが十分なら等しく殺傷力が得られる。当たる角度が変われば効果が変わるなんて事は起きない。掴んで、振り回して、当てるだけ。

 一応それでも、なるべくエネルギーを大きくするための動きというのは存在する。野球のバッティングがそれだ。釘を打つときのトンカチみたいに腕だけで振るのではなく、足で踏み込み、腰で回転させ、体をねじるように動かして、全身でバットを加速する。

 別にボールを打つわけではないので、正しいフォームなんて身につけなくても大丈夫。一応そういう動きのほうがエネルギーが大きくなるという事だけ伝えるが、その通りに動けなくても攻撃力が十分ならそれでいいのだ。

 もし殺傷力が不十分なら、武器を工夫する事もできる。トゲを付けたり、斧のような刃を付けたり、ハンマーのように先端を重くしたり。これらは刀剣よりも遙かに扱いやすい。当てるべき「正しい角度」が刀剣よりも遙かに大雑把だからだ。


「そういうわけで、最も使いやすいと思われる基本の形は、これだ。」


 木を削ってバットを作っておいた。

 バットほど鈍器として優れているものはない。手元は適度な太さで握りやすく、先端は太く重くなっていて、その範囲も広い。手元には、すっぽ抜けないようにグリップエンドもある。極めて親切な設計だ。

 材料はどこにでもある木。削って作れば、それだけで適度な重さがある。適度な重さとは、振り回しやすく、威力も十分ということだ。たとえ刀剣を受け止めても、そう簡単には切断されない強度もある。念を入れるなら、防御力上昇や強靱化の魔法をかけておくといい。


「握って、振り回して、ぶっ叩く。

 これだけだ。簡単だろ?」






 象獣人。ここにも魔の手は迫っていた。

 象獣人の長所は、嗅覚・聴覚・体重だ。犬や馬のように鼻が長い生物は、嗅覚が優れている。豚の場合も同様だ。それでいくと象ほど鼻の長い生物はいない。実際、象の嗅覚は犬の2倍もあるという。嗅覚レセプター(匂いを感知する器官)が長い鼻の中に大量に設置されているので、そうなる。

 聴覚は、耳が大きいからではない。耳が大きいのは体温調節のために必要だからだ。象の聴覚は、耳ではなく足の裏によって得られる。足の裏に感じる地面の震動によって、30~40m離れた場所の音を聞き分けるのだ。

 体重が長所になるのは、突進のときだ。自動車をひっくり返すほどのパワーがある。足の速さは豚と同じぐらいで、人間より速い。そして圧倒的な体重。エネルギーは、速度の2乗と重量の積で決まるから、速度が同じなら重い方が強い。

 象獣人は、こうした象のパワーを備えている。さらに彼らは、記憶力にも長けている。体のサイズが同じなら、警察犬はその地位を象に奪われていたかもしれない。


「さあ、あなたにこれを……。村人たちに使うのです。」

読者様は読んで下さるだけで素晴らしい。

ブクマとか評価とかして下さった読者様、ありがとうございます。

作者は小躍りして喜んでおります。

(ノ≧∀≦)ノ

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