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介護士は鍛える・その3

読んでくれてありがとうございます。

楽しんでくれると嬉しいです。


修行回……やっぱり書くの難しいですね。

「次は馬術の訓練だ。

 馬獣人の諸君、すまないが馬役をやってくれ。」


 馬獣人は、馬の体の首の部分から、人間の上半身が生えている姿だ。そのままで馬と遜色ない走力を持っている代わりに、馬に乗り降りする事はできない。アーネスは「すまないが」なんて言っていたが、訓練だけでなく本番でも馬獣人は、単独でも騎兵でありながら、騎手を乗せる馬として活用される。

 そして馬獣人にとって人や物を乗せて運ぶことは、好ましい行為だ。猫にマタタビ、ドワーフに酒、馬獣人に騎乗である。彼らは遺伝子レベルで「人や物を乗せて運ぶと喜んで貰える」という成功体験を刻み込まれている。だから喜んで乗せてくれるのだ。


 上半身が人間で、言語による意思疎通ができるから、馬術としては馬を使うよりも遙かに簡単だ。

 とはいえ、馬と全く同じ構造をした部分に乗るのだから、乗っている感覚は乗馬そのものだ。つまり、非常に揺れる。左右に少し、前後に大きく、そして意外なほど上下に。騎手はその動きに合わせて自分も腰を動かし、振り落とされないように揺れを吸収しなければならない。単にしがみついているだけではダメなのだ。これがダイエットに効果的ということで、地球でも馬の動きを模した機械がよく売れた。

 まずは落ちないように乗っていられること。そして、乗ったまま武器を使えるようになる事が、騎兵には必要だ。


「ひゃああ! 落ちる落ちる!」

「思ったより揺れるのね。」

「高いよぅ……。」


 慣れが必要だ。

 何事も、上達するには慣れるしかない。繰り返すしかない。確かに揺れる。確かに高い。馬の背中は地面から170cmぐらい離れているから、肩車でもされたような高さになる。慣れるしかない。


「ちょっと集まってくれ。」


 俺は集合を掛けた。

 そして馬獣人の1人に、前に出て貰う。


「君はモデルをやってくれ。」

「はい。」

「ゆっくり歩いてみてくれ。」

「はい。」


 パカパカと軽快な足音を立てて、馬獣人がゆっくりと歩く。


「よく見てほしい。

 右の後ろ足と、左の前足、これが同時に前に出る。

 左の後ろ足と、右の前足、これが同時に前に出る。

 人間でいうと、こういう歩き方だ。」


 俺は大きく手を振りながら、その場で足踏みをしてみせた。普通の歩き方だ。


「だが、この歩き方だと、背中に乗っている人は、大きく揺られてしまう。

 剣も弓も、これでは狙いが定まらない。

 そこで、こういう歩き方をしてほしい。」


 俺は、右手と右足、左手と左足が、同時に前に出るように足踏みした。

 緊張しすぎた時などに出るやつだ。


「下手にこれをやると単に歩きにくい。

 だが、うまくやれば、体の動きがスムーズになって、走るのが速くなり、体の揺れも小さくなる。」


 ナンバ走りといって、オリンピック級の選手なんかが実際に取り入れている。

 よく()()と右足を同時に出す動きと勘違いされているが、正確には()()と右足を同時に出す動きだ。だから低速域では普通に右手と左足が前に出る。高速域になると手の揺れが足に同期して、右手と右足が同時に前に出る。

 普通の歩き方――西洋走りと違って、腕を振るのではなく、肩を振る。だから速度域によって連動する手足が変わるなんて事が起きるのだ。

 慣れないと体が左右に方向転換する動きが生じて歩きにくい。だがマスターしてしまうと、ナンバ走りの途中で西洋走りに切り替えたとたん、ブレーキを掛けたような感覚になる。


 馬においても、西洋走り的な歩き方を「斜対歩」といい、ナンバ走り的な歩き方を「側対歩」といって、戦国時代の絵図には側対歩の調教場面が描かれている。上下の揺れが少ない側対歩を使えば馬上で弓 を正確に射ることができることから、合戦では側対歩が使われていた可能性が極めて高いという。

 側対歩は、騎乗したとき上下の揺れが少なく、荷馬車などでは荷崩れを起こさずに山道を移動できたようだ。またほとんど反動がなく、乗りやすく、長時間乗っても疲れないことから、日本では昔から側対歩を馬に教え込んだらしい。


「そういうわけで、乗る側が乗る練習をしている間に、乗せる側も側対歩の練習をしてほしい。

 足を縄で結んで、転ばないように気をつけながら慣れるまで歩き回るんだ。

 ちなみに、馬に側対歩を教えるには2~3年かかるらしい。より高い知能を持つ君たちなら、もっと短期間にマスターできると信じている。」







 オークは豚の頭をもつ魔物だ。

 だが、それとは別に、豚獣人という種族が存在する。

 コボルトは魔物だが、犬獣人はそれとは別。それと同じ事だ。

 豚獣人は、実は犬獣人よりも嗅覚が優れている。しかも、その鼻が非常に器用で、かつ頑丈にできている。走るのは犬獣人に負けるが、それでも人間より遙かに速い。巨体で短足なのでデブに見られがちだが、体脂肪率(この世界にはまだ存在しない概念だが)でいうと、わずか15%程度。人間で言えばモデル並だ。食欲旺盛で、食べ物に夢中になりやすい傾向があり、アゴの力も強い。

 痩せ型で軽量な傾向にある犬獣人が「軽戦士」なら、豚獣人は「重戦士」といったところだ。


「……洗脳完了。

 さあ、あとはこれを……村のみんなに使いなさい。」


 豚獣人にも、魔の手がのびていた。

読者様は読んで下さるだけで素晴らしい。

ブクマとか評価とかして下さった読者様、ありがとうございます。

作者は小躍りして喜んでおります。

ワーイ♪ゝ(▽`*ゝ)(ノ*´▽)ノワーイ♪

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