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介護士は鍛える・その2

読んでくれてありがとうございます。

楽しんでくれると嬉しいです。


インフルのその後ですが、現在80%ぐらいまで回復したと思っています。どうにもこうにも、しつこいですね。なかなか本調子になりません。

「休憩がてら魔法の練習をしましょう。

 戦闘中に魔法を使うという事は、敵の攻撃を避けたり防いだり、味方の動きに合わせて走り回ったりしながら魔法を使うことになるわ。最初から走りながら使えとは言わないから、体が疲れていても魔法を使える程度に集中する訓練だと思って、まずはやってみましょう。」


 アルテナの指示に従って、獣人たちが魔法に取り組む。

 作業の難易度を下げずに、意識の難易度を下げることで反発を生まないようにしている。うまいやり方だ。

 魔法にはイメージが重要だと母ジェーンも言っていた。俺は、とりあえず使えるレベルから、介護技術にイメージを重ねることで、即座に使えるレベルに変わった。この「イメージが大事」というのは、発動にかかる時間のことだけではない。そもそも発動するか怪しいレベルでは、確たるイメージによってきちんと発動するようになる。


 では魔法を使う上で、イメージとはそもそも何なのか? それは集中力だ。疲れていたり、他のことに注意を払いながらだったりすると、魔法に集中できない。だが、イメージがしっかりしていると、他のことに注意を払いながらでも、必要十分に集中できる。


 これは、たとえば車の運転も同じだ。いつもの通勤路なら、考え事をしながらでも問題なく運転できる。ふと我に返ったときには、直前までの「運転していた」という記憶がなく、どこをどう通ったのか、信号は何色だったのか、まったく思い出せない。そんな事がある。ときどき交差点を渡る途中で我に返り、慌てて信号を確認すると、ちゃんと青になっている。ウインカーもしっかり出している。

 初心者マークを付けていた頃は、アクセルの踏み方やウインカーレバーの位置などを気にしていたものだ。そうした1つ1つを意識して操作していた。そうする必要があった。いつしか無意識に「次の交差点を曲がりたい」と思っただけで、手が勝手にウインカーを出し、足が勝手にブレーキを踏むようになった。そうして、しまいには無意識に信号や道路状況を確認して、記憶がないような状態でも事故を起こさずに運転できるほどになった。

 人間というのは、慣れればこれほど複雑なことも、無意識にできるようになる。イメージが大事というのは、こういう無意識に刷り込まれた操作を作ることが大事という意味だ。だから、すでに無意識に刷り込まれた介護技術に絡めたとたんに、俺の魔法がレベルアップした。


 だから、獣人たちの魔法をレベルアップさせる方法も簡単だ。

 ひたすら繰り返し魔法を使わせて、無意識に刷り込ませる。それが1つ。

 そしてもう1つ。普段やり慣れている動作に、イメージを重ねる。


「たとえば馬獣人の君、なんか急に痛いことされて、咄嗟に蹴るときのつもりで蹴ってみろ。」

「はあ…? えいっ!」

「離床介助。」


 馬獣人の蹴りにタイミングを合わせて、地面を起こしてやる。ばんっ! と地面が破裂したように飛び散った。


「今のイメージだ。」

「なるほど。えいっ!」


 ばんっ! 馬獣人は、今度は自力で魔法を発動した。

 見ていたほかの馬獣人たちが、なるほどとうなずいて一斉に同じ魔法を成功させていく。

 これを見た他の獣人たちから、自分たちはどうやればいいのかと注目が集まった。






 ほぼ全ての獣人は、村と呼べる規模で、種族単位で集まって暮らしている。例外は、獣人探しの依頼を出したときに応じてくれたような連中だ。個人的に村を出て暮らしている。ここで言いたいのは、獣人は「村」以上に大きな規模の集落を作らない。国家を作らないという事だ。

 なぜなら、獣人は個人の統率力で村をまとめている。

 集団が集団という形を維持するには、何らかの方法で統率されなくてはならない。人間は言語や文字や記録媒体・筆記用具の発達によって、高度な統率力を発揮できる。国家の運営なんて、まさに書類との格闘だ。だが、獣人には、そこまで高度な統率力がない。

 おそらく、生きていく上で高度な統率力なんて必要ないからだろう。人間よりも獣に近い強力な身体能力があるために、その身体能力だけで生きていける。しかし、それだと大きな集団を統率することはできない。一定以上に大きくなった集団は、分裂して複数の小集団になってしまう。野生動物の群と同じだ。

 このため、獣人の長たちは共通の悩みを抱えている。言う事を聞かない奴が居る。犯罪者ではないが、長の指示や、村のルールに、素直に従わない。文句があっても村を維持するために居残ってくれているのを感謝するべきか、出て行った連中のほうがマシだと思うべきか、ケースバイケースだが結局はどっちもどっちだと思うほど、村にとって損失だ。


「そんなあなたに朗報です。これがあれば村人たちは、みんな素直にあなたの言う事を聞くでしょう。」


 魔手は甘言とともに近づく。タヌキ獣人の村にも、魔の手が迫っていた。

読者様は読んで下さるだけで素晴らしい。

ブクマとか評価とかして下さった読者様、ありがとうございます。

作者は小躍りして喜んでおります。

☆─(ノ゜Д゜)八(゜Д゜ )ノイエ─イ

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