介護士は熊村に到着する
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兎獣人や猫獣人と同じく、熊獣人にもいくつかのタイプがある。頭部が完全に熊のタイプ、人間の頭に熊の耳が生えているタイプ、手足が熊のタイプ、手足は人間のタイプ、尻尾のあるなしなど。そして他の獣人と同じように、獣の部分が多いほど、獣の能力が強くなり、日常生活が人間的なものより獣的なものになっていく。
熊獣人のロロは、村で最も「熊の部分」が多い獣人だ。ロロの姿を表現するのはとても簡単だ。二足歩行するパンダ。以上。頭部は完全にパンダで、全身が白と黒の体毛に覆われ、足の裏には肉球もある。特筆すべきは、手だろう。手首からの骨格は人間のそれだ。見た目は毛むくじゃらでモコモコしているのだが、ちゃんと指が5本あって、肉球はない。
そんなロロは、村一番の戦士である。なんせ熊の部分が一番多いのだから、力だって一番強い。
「ガオーッ!」
そのロロが、今、窮地に陥っていた。
せめてもの抵抗に、吠えて威嚇するが、効果はない。
周囲には、他の熊獣人の戦士たちが倒れており、無事な者は1人もいない。
ロロは愛用の竹槍も破壊され、素手で戦っていた。自称「文化的な男」であるロロにとって、素手で戦うのは、できれば避けたいところだ。武器を使わないなんて、文化的じゃないと思っている。武道家に謝れと言いたいところだが、ロロにとって「文化的でない徒手空拳」というのは、獣が暴れるのと同じようなやり方を指す。手甲を使っているとか、ちゃんと格闘技(技術)として確立されているとかなら、それは文化的だと言える。そこに本能以上の「知性」があるからだ。
だからロロはこの戦いに負けるわけにはいかない。同じ怪力自慢の獣人である虎獣人がいきなり襲ってきたからだ。そこに正当な理由もなく、彼らの戦い方は獣そのものだ。数で囲んで爪と牙でボコボコにしていく、人間で言えばリンチみたいなやり方だ。こんな相手に屈するわけにはいかない。
防御に徹して、隙を見てわずかに反撃するが、ロロはじわじわと削られるように負傷していく。
「グオオオ!」
悲鳴とも気合いともとれない声を上げて、ロロは爪を振るう。ロロ自身わかっている事だが、貧弱な竹槍よりも爪を使った方が、ロロは強い。それでも爪では戦いたくない。文化的ではないから。だが、命の奪い合いに文化なんてものがあるだろうか。村の戦士たちが倒れ、ろくに戦えない連中だけが残っている。これはもう村の――いや、熊獣人という種族の存亡をかけた戦いだ。まさに戦争。戦争とは際限のない暴力だ。そこに文化はない。文化を破壊する行為だ。はたして自分だけが文化を守ろうと考えるのは、こういう場面において正しい行為なのだろうか?
もし竹よりも頑丈な槍があったら、ロロはもっと戦えるはずだ。惜しむらくは、頑丈な槍を作る技術がないことか。ドワーフと付き合いがあれば違ったかも知れない。だがドワーフは酒好きで、酒のつまみには塩気が求められる。蜂蜜作りを主産業にしている熊獣人は、ドワーフとの付き合いがないのだ。
虎獣人が次から次へと襲いかかってくる。不可解なことに、彼らは理性を失っているように見えた。普段の虎獣人は、熊獣人と比べても遜色ない理性的な連中だ。それがいったい、どういうわけか……。
だが、ロロにはそんな事を考えている余裕はない。
「ガフッ……!」
血を流しすぎたか、ロロは不意に力が抜けて膝から崩れ落ちる。
好機とみて虎獣人が一斉に襲いかかってきたのを、ロロはスローモーションのように見ていた。
――ここまでか……。
諦観がロロの心をよぎる。
ここから逆転する方法が分からない。打つ手がないのだ。逆転どころか、この攻撃をしのぐ方法さえ分からない。無理だ……できない……。
……だが。
と、ロロは背後に意識を向ける。振り向く余裕はないが、そこに居るはずの熊獣人たちを思う。ロロがここで倒れたら、彼らはどうなるというのか。まだだ。まだ倒れるわけにはいかない。防げなくても、倒れるわけにはいかないのだ。
ロロは再び虎獣人に意識を向けた。迫り来る攻撃から少しでもダメージを防ぐには、可能な限りその攻撃を躱し、いなし、打ち払っていかなくてはならない。
だが――
「……?」
ロロは見た。虎獣人たちが急に動きを止めて、彫刻のように立ち尽くしている姿を。
「そこまでだ。」
聞き慣れない声が聞こえた。
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