介護士は実験する
夜勤なう。
時間ができたので、本日3本目をお届けします。
読んでくれてありがとうございます。
楽しんでくれると嬉しいです。
さて実験だ。
パワーアシストスーツ型のゴーレム(高出力モデル)を装着して、戦闘レベルの動きをやってみる。だが、いきなり激しく動くと危ないだろうから、まずは普通に歩いてみる。
「むおっ!?」
軽く足を上げるつもりが、大きく蹴るような動作になった。
俺はそのままバランスを崩して転倒してしまう。
起き上がろうとするが、手足が過剰に素早く大きくパワフルに動いてしまうので、地面の上で何度も転がったり飛び跳ねたりして、まともに動けない。
なるほど。これは疲れるわけだ。
動きを小さく、力を抜いて……卵を割ったら殻が中に入ってしまった時のように、卵黄を潰さないように殻を取り出す、あの力加減だ。そーっと、そーっと……。
慣れてきたら歩く以外の動作をしてみる。
ゆっくりと居合の型をやってみた。腰を落とすときに力加減が分からず、また転んだ。
慣れてきたら、動きを速くしていった。これも、慣れないうちは転んだ。
1時間ほど挑戦して、パワーアシストスーツ型のゴーレムを脱ぐ。
そして普通に歩こうとして、転んだ。間隔がスーツ着用状態に慣れてきて、体が十分に動かなかった。
まるで年寄りになった気分だ。転ばないように歩くために、歩幅を極端に小さくして、ちょこちょこと歩かなくてはならない。
「……これはダメだ。」
パワーアシストが強すぎるとこうなるのか。体が急激に鈍った。
装着しても動きにくいのだから、戦闘用パワードスーツとしてはまるで役に立たない。それでも使うとしたら、専用の操縦士を育てるべきだろう。
「普段通りの体の動きをそのまま強化するのが望ましい。」
パワーアシストの反応が早すぎて、こっちが調節しようと思っても間に合わない。
だが、調節できるような反応速度では、戦闘の場面で反応が間に合わないだろう。
たぶん、アーネスや警備隊の兵士たちに提案できたのは、ここまでだ。肝心なのは「だから、どうすればいいのか」である。ケチを付けるだけなら誰でもできる。だが企業戦士に必要なのは、改善のための提案である。具体的にどうすればいいか提案してみる事が必要だ。
とはいえ、改善案の提出にはセンスが必要だ。センスとは経験の量である。たくさん経験してきた事には、何となく「こういう感じだな」というセンスが働く。大量の経験によって「その物事の平均値」が感覚として備わるからだ。極端な話、人間の顔を見分けることができるのに、犬の顔は見分けられないのと同じである。
だから、こればかりはアーネスたちには難しいだろう。戦闘用補助装置なんていっても、武器や防具とはまるで違う性質のものだ。アーネスたちには、というか、この世界の人間には、おそらくセシール以外にこういう経験を持つ人物が存在しない。
ただ、俺の場合は別だ。前世の記憶がある。ここは知識チートの見せ所だ。
読者様は読んで下さるだけで素晴らしい。
ブクマとか評価とかして下さった読者様、ありがとうございます。
作者は小躍りして喜んでおります。
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