介護士はようやく無双する
読んでくれてありがとう(*´▽`*)
楽しんでくれると嬉しいです。
読者様には申し訳ない事ですが、不定期更新になる予定です。
そして、ようやく無双します。
あれから10年、俺はもうすぐ15歳だ。
具体的には、明日15歳の誕生日を迎える。そして15歳になったら、兵役に出なくてはならない。徴兵制だ。
そんなわけで、今日は狩りだ。明日の俺の誕生日を祝い、兵役を無事に終えられるように祈るための宴である。
「そっちへ行ったぞ、ジャイロ!」
「任せて!」
気合い一閃。突っ込んできた獣を一刀両断に仕留める。
イノシシに似た動物で、体毛が緑色。動かなければ、遠目には小さな茂みに見えなくもない。
気性が荒くて飼育には適さないが、肉は豚肉に近い味がして美味だ。
「相変わらずの腕前だな。
お前なら兵役に行っても活躍できるだろう。」
「そうかな?」
正直、剣はどうも使いにくい。今も、獣を両断するときに抵抗を感じた。対象物が硬い感じが、手応えとして伝わってくるのは、斬り方が下手だからだ。うまく斬れたときは、対象物の硬さを感じない。スパンとあっけない手応えで斬れる。
生前、死役所の前で1億年も居合の素振りをやっていたので、体を動かす感覚はすっかり居合のそれに馴染んでいる。反りがないというだけで剣も刀も似たようなものだが、やはり抜こうとすると引っかかる感じがして苦になる。どうしても姿勢が崩れて、いまいちウマく動けない。
切断しなくていいのなら、自作した木刀のほうが使いやすい。あれなら剣より3倍は速く動ける。だから剣を使っても活躍できるなんて言われても、あんまりピンと来ないのだ。それでも剣と刀では共通する部分もあって、すでに俺は父に百戦百勝で勝てる。
とはいえ、実際には、俺は父に勝ったことがない。居合は使わずに、教わった剣術だけで対戦するからだ。居合を学んでいる間、幾度も言われた事がある。左を使え、右手で抜くな。居合の目的は速く抜くことだ。それには、体を左右同時に使うのが良い。右手で刀を抜きながら、左手で鞘を抜く。だがつい左を使う事を忘れてしまう。そうすると遅い。つまり、居合と剣術の関係も同じだ。居合だけ得意であるよりは、剣術も使えたほうがいい。なにしろ刀が手に入らないようだから。
とはいえ正直なところ、素手のほうがやりやすい。せっかく剣を教えてくれた父の手前、口には出さないが。
そんなこんなで無事に宴も終わり、俺は兵役のためにギルテールの街へ向かった。
領主の館がある街だ。領地の中では一番発展しているらしいが、村からは遠いので、行った事がない。
なんせこの世界の主要な移動手段は、徒歩だ。
馬に乗ったり馬車に乗ったりするのは、貴族か大商人ぐらいで、普通は大荷物があっても人力荷車である。たいていの場合は、人力荷車も使わず、背負って運ぶ。
だから盗賊に狙われると、荷物を持ったまま逃げ切るのは無理だ。
「へへへ……持ってる物を全部出しな。」
5人の盗賊たちが俺を囲んできた。
「う~ん……断る!」
ちょっと考えたのは、勝てそうかどうかではなく、どうやって勝つかだ。
人生はポジティブに。負けるという選択肢はない。ならば、どうやって勝つかを考えるだけだ。もし戦力で勝てないのなら、生き延びることを勝利条件にすればいい。その場合には、持ち物を差し出しても生き延びれば勝ちだ。
だが、今回の場合、普通に戦力で勝てばいい。
「おいおい、痛い目に遭いたぶらっ!?」
1億年も鍛えた介護技術は、戦闘でも使える。
素早く近づいて相手の姿勢を崩し、ひっくり返して、空中に寝かせる。
もはや俺の臥床介助はベッドを必要としない。相手の体重を完全に消して介助できるようになったのだ。所要時間も前世でダークサイドに墜ちていた時には1.5秒だったのが、今では0.1秒で完了できるようになった。ぶっちゃけ、相手には「投げられた」ようにしか感じないだろう。
俺には相手を空中に寝かせる技術があるが、相手はただの盗賊だ。盗賊には空中に寝る技術も能力もない。
結果、落ちる。当たり前だ。
そして背中をしたたかに打ち付け、横隔膜が痙攣して、呼吸困難に陥る。
もがくだけの元気はあるが、まともに動けないほど悶絶する。
そこへさらに、もう1人、あと1人、と続けて寝かせていく。
「連続! 臥! 床! 介! 助ッ!」
盗賊の5段積みができあがった。
5段も積むと、上の方にいる奴はあまり落下ダメージが入らない。
なので――
「とうっ!」
「ぐへあっ!?」
鞘でみぞおちを突いた。
死にはしないだろうが、かなりのダメージだ。しばらくは目を覚まさないだろう。
骨や皮膚が弱い老人相手には、絶対にできない事だ。でも相手はまだ中年かそこらの若い盗賊たち。このぐらい手荒く扱っても大した怪我はしないだろうし、痛みを味わうのは自業自得だ。むしろ、相手を殺そうとする者は、逆に相手から殺されることも覚悟するべきだ。殺さないでおくのは慈悲である。
「さて、お前ら。」
剣を腰に戻して、俺はやっと剣を抜く。
それを盗賊たちに向けながら、尋ねた。
「このまま死ぬか、真人間に戻ってまじめに働くか、選べ。」
5段重ねの状態で一番上の奴は気絶。まともに動けない盗賊たちは抵抗も逃亡もできず、死にたくないので更正することにした。
「じゃあ、次の街まで一緒に来い。
そして、そこで自首しろ。」
そのあと、道中で逃げようとする盗賊を何度か寝かせながら、街へ連れて行った。
やはり剣より素手のほうが得意だ。
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( ・`д・´)キリッ
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