表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

59/106

介護士は責任を考える

読んでくれてありがとうございます。

楽しんでくれると嬉しいです。

「やめるニャ! どこ触ってるのニャ!」

「これが契約違反の代償だ。」


 ロリ体型の猫獣人ににじり寄るハゲ貴族。ちなみに無表情。

 The HE N TA I! むっつりスケベか。

 あまりに徹底されたむっつり加減に、異様さすら感じる。


「うわぁー……。」


 それしか言えない。


「誰だ!?」


 隠蔽魔法をいくつも使っているのに、どうやって察知したのか、ハゲ貴族はこっちを振り向いた。だが、どこにいるのか見えなかったのだろう。キョロキョロと探すような視線で、ちゃんと目が合わなかった。これなら放置して撤収しても、こちらの正体が知られることはあるまい。

 しかし、念には念を入れる。料理は仕込みが9割、会議は準備が9割、商売は大手と競合しない独自の強みを開発するのが唯一の攻略法、戦争は始まる前に決着している、戦わずに勝つのが理想、などなど「準備」の大切さを表す言葉は多い。

 念を入れるというのも、後で何か問題が起きないうちに、先に対処しておくという事だ。つまり準備である。剣道や居合でも言われる「残心」も同じだ。倒したと思った敵が、そこから反撃してくる事に備えている。

 そんなわけで、俺の攻撃。

 俺は手裏剣を投げた。

 ハゲ貴族に命中。


「~~~っ!?」


 ハゲ貴族は麻痺した。

 せっかくなので、ちょっとお仕置きしておこう。縛り上げて目隠しをして、刀で軽く斬りつけて「猫に引っかかれたような傷」をつけておく。

 外へ連れ出して罪状を書いた立て札とともにさらし者にしておきたいところだが、それは控えておこう。代わりに使用人か警備員あたりが見つけた時に恥ずかしい感じに仕上げておこう。M字開脚で逆さまに固定して、尻から花でも生やしておくか。


「よし、いこう。」

「待て。」


 鎧姿の男が現れた。屋敷の警備兵だろう。


「そう好き勝手はさせんぞ。」


 男は剣を抜く。

 隙のない構えだ。腕が立つのだろう。

 しかも、どうやら俺が見えているようだ。


「そこになおれ、賊ども!」


 男が斬りかかってきた。


「臥床介助ッ!」


 空中に寝かせて、床に落とし、後頭部を強打させる。

 後頭部強打の影響で、男は視界がドロドロになって、身動きがままならない。


「今のうちだ。」


 傷つけたり武具を破壊したりするような攻撃は不要だろう。彼にとって俺たちは、いわば不法侵入者だ。

 麻痺したハゲ貴族と、動けない鎧男は放置して、猫獣人を回収した。

 拘束を解けば、猫獣人のほうが悪路の踏破には優れている。壁とか普通に登っちゃうからな。まったく猫の能力は素晴らしい。パルクールやフリーランをやらせたら猫獣人が一番なんじゃないだろうか。

 おかげで屋敷からの脱出には何の問題もなかった。






「じゃあ、気をつけてな。」


 猫獣人を村に返して、依頼は終了だ。

 普通なら、猫獣人のうかつさを叱るだろうか。

 行動には結果が伴う。その結果は、失敗でも受け入れるしかない。それが責任というものだ。そして、解決できるなら解決し、解決できないなら退く。それが責任の取り方だ。猫獣人は自分の行動によってハゲ貴族に捕まり、貞操の危機にさらされた。もっとうまく関係を切る方法はあっただろうに、そうしなかった結果だ。

 一方、俺は俺で猫獣人にそういう行動を促した結果に対して、責任をとって救出した。

 責任を取れない事はするな。という人がいる。だが俺の考えは違う。責任をとれない事なんて1つもない。解決できるなら解決し、できないなら退く。それが責任の取り方だから、どちらか1つを選べば、責任は取れるのだ。相手が満足するかどうかは別だが。

 だから重要な事は、失敗を恐れない事だ。挑戦して失敗しても、それはチャンスを掴みにいった行動の結果だ。うまくすれば成功していたかも知れないし、次からはもっとうまくできるはずだ。避けるべきなのは、挑戦しない事だ。挑戦しないと成功率は0%だし、次にうまくやれる可能性もない。

 だから俺は、猫獣人を叱らない。


 そのあと兎獣人のパメラとともに冒険者ギルドに引き返す。

 まずはパメラからの指名依頼の受注手続きをして、そのまま完了手続きをする。


「だいぶ変則的なやり方ですね……。」


 受付嬢は苦笑いだ。

 受注せずに実行したら、報酬が貰えなくても文句は言えない。勝手にやった事だと言われてしまう。

 だが、危ない橋を渡ったとは思わない。信じるべき事を信じ、疑うべき事を疑うのだ。信じられそうな事を信じるのではない。疑わしい事を疑うのではない。自分が「世界はこうあれ」「この人はこういう人であれ」と信じたい事を信じるのだ。その結果もまた、自分で責任を取るのである。

読者様は読んで下さるだけで素晴らしい。

ブクマとか評価とかして下さった読者様、ありがとうございます。

作者は小躍りして喜んでおります。o(≧▽≦)o

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ