介護士は感謝される
読んでくれてありがとうございます。
楽しんでくれると嬉しいです。
結局「蛇」の元々のメンバーは、俺の私兵になる事を決めた。
その前に法の裁きを受けなくてはならないが、彼らにはもう抵抗の意思はない。いや、彼らには元々、抵抗の意思などなかったのだ。
「礼を言う。
俺たちは、あんたに心を救われた。
罪を償ったら、必ずあんたの下で働く。残りの命は、あんたのために使おう。」
リーダー格の「蛇」が、そう言って深々と頭を下げた。
そして姿勢を正したと思ったら、にわかに地面を強く踏みつけた。
「我らの恩人に敬礼ッ!」
ザッ、と音まで揃う見事な動作で、「蛇」たちは俺に敬礼した。
平民用の敬礼だ。片手を眉毛の上あたりにつける、地球の軍隊や自衛隊でもやるやつだ。俺も兵役のときに習った。
「私からも礼を言うよ。
危ない所を救ってくれた。
それに、失ったはずの部下を取り戻してくれた。」
ゴーファ公爵は、深いため息とともに「蛇」を見た。
そして騎士風の敬礼――胸に手を当てて腰を折る――で「蛇」たちに頭を下げた。
「すまなかった。
許してくれとは言えないが、救援部隊を送れなかったのは私の落ち度だ。」
まともな忠誠心を取り戻した彼らは、敬礼で応えた。
「ジャイロ。私からも礼を言う。」
今度はアーネスだ。
「私だけでなく、今度は父上まで救ってくれた。
彼らの事は、私には知らされていなかったが……これからは、ともに彼らを守ろう。」
解散した「蛇」が洗脳装置を運び出し、拠点を引き払ってゴーファ公爵らとともに出発するのを、少し離れた場所から見ている者がいた。
フードと覆面で顔を隠し、鋭い眼光を向けている。服装は暗殺者風だが、まるで気配を隠そうとしていない。
「……計画は失敗か……。」
暗殺者風の男は、ため息交じりにつぶやく。
そして男の姿はかき消えた。
「……そうか。やはり思うように行かぬものだな。」
「占領地域を拡大するところまでは順調だった。
警備隊だけなら手が回りきらず、いずれは成功していただろう。」
「では失敗の原因は何だ?」
「Aランク冒険者パーティーだ。リーダーはジャイロという男。奴らが警備隊に匹敵する働きを見せた。
さすがに想定戦力の2倍では、対応しきれない。」
「なるほど……。残念な結果だが、イレギュラーが原因なら同じ事は起こるまい。
内戦状態に陥らせるのは、別の国でも構わないのだから、次へ取りかかるとしよう。」
「だが、手間の掛かる事だ。この失敗は痛いな。
洗脳装置も失ったし、また別の組織に潜り込むにも手間が掛かる。計画は年単位で遅れるだろう。」
「済んだ事は仕方がない。大丈夫。我らには、時間はあるのだから。」
「……気の長い奴め。」
読者様は読んで下さるだけで素晴らしい。
ブクマとか評価とかして下さった読者様、ありがとうございます。
作者は小躍りして喜んでおります。
d(*・ω・*)b♪
第1章これで完結です。
夜の投稿から、第2章が始まります。
20時頃の投稿を予定しています。