介護士は宣戦布告する
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聞けば、警備隊の4名が「蛇」に捕まっているらしい。
最初は制圧された村を解放するいつも通りの作戦だった。だが勝利目前に、敵は村人を人質にした。警備隊は抵抗できずに全員捕まり、その後、隙を見て脱走した。しかし敵に見つかって戦闘状態になり、仲間を逃がすために10人が敵を引きつけて戦った。
この10人のうち、6名は死亡、4名は再び敵に捕まった。捕まった4名の中には、アーネスも居るらしい。
「自分たちも行きます!」
脱走してきた兵士たちと合流し、村へ向かう。
その道中で、村の地形や敵の人数などについて情報提供を受けた。
それは異様な光景だった。
今までの「蛇」とは明らかに違う。
アーネスは縛られたまま裸にされて、その前で他の3人の兵士が痛めつけられ、うち2人はすでに殺されていた。
今までの「蛇」では考えられない、過剰な残虐性だ。兵士を捕まえたのなら、冒険者を襲ったときと同じように洗脳して仲間にしようとするはずだが、とてもそんな事をしているようには見えない。
「おっと! 軍人さんの登場だ。」
「何だ何だ? 今度は冒険者も一緒か?」
「兵士が冒険者に泣きついたってのか? ぎゃははは!」
行動だけでなく、言葉もおかしい。
今までの「蛇」は、こんなチンピラみたいな事は言わなかった。
どうも変だ。もしかして、すでに正気に戻っているのか?
「残念だったな。お前らの救援は間に合わなかった。」
そう言って、「蛇」の1人が剣を振り上げる。
「やめろ!」
アーネスが叫んだ。
だが剣は無慈悲に振り下ろされ、1人の兵士が死んだ。
「ぎゃははは!」
「さて、今度は隊長さんをヤりながら軍人さんを殺っていこうか!」
「抵抗するんじゃねえぞ? うっかり隊長さんを殺っちまうかもしれねぇからな。」
ニヤニヤ笑って、アーネスの胸を鷲掴みにする。
……ここまでだ。
ダークサイドが復活していくのを感じる。表情が抜け落ち、目が据わる。
「そうだよ。この仕事は人殺しだよ。
楽に死ねるように、一生懸命殺してあげるからね。苦しまないように、たっぷり時間を掛けて殺してあげるよ。長い付き合いになると思うけど、よろしくね。」
あのときと同じだ。
介護は合法的な殺人であり、ある種の拷問だと悟った。楽に死ねるように、食べたくないときでも無理に食べさせて栄養を与え、飲みたくないときにも無理に飲ませて水分を与え、歩きたくないときにも無理に歩かせて運動させた。
相手の苦しみを全く感じ取れないあの感覚。あれが戻ってきた。
「よろしい。ならば戦争だ。」
俺は「蛇」を見据えて、左手で刀の鞘を握った。親指を鍔にかける。右手は脱力し、意識は柄の位置を捉えていた。
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