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介護士は食事に彩りを添える

読んでくれてありがとうございます.+:。 ヾ(◎´∀`◎)ノ 。:+.


楽しんでくれると嬉しいです。


読者様には申し訳ない事ですが、不定期更新になる予定です。

 頭で考えて大丈夫だと思っても、実際にやってみたら色々足りないと気付くことは多い。

 そんなわけで、警備隊長アーネスは村人が開拓地に到着した日の夕方に様子を見に行くことにした。不足する物があれば用意する。その窓口はアーネスだ。


「もうこんなに開拓したのか!?」


 開拓村に到着したアーネスの眼前に広がるのは、一面の畑だった。ほとんど見渡す限りの畑だ。どういう早さで耕せばこうなるのか? しかも水路まで備えている。よく見れば、その水路の水源は、井戸のようだ。一見すると、建物以外の問題はすべて解決したかのように見える。






「みんな集まってくれ!」


 アーネスの姿を見つけて、俺は村人に集合をかける。

 すでに耕作面積は十分なので、誰も文句を言わずに集まってくれた。


「アーネス隊長が来てくれました。彼女は支援物資の窓口を担当してくれています。

 何か足りないものはありますか?」


 俺の呼び掛けに、村人たちは顔を見合わせる。


「井戸が足りないと思ってたんだが、あんたが作ってくれたしなぁ。」

「水路まであるし、明日から種まきだな。足りないもので言うと、次は家がほしいな。」

「そうねえ。大工さんは近々来てくれるんでしょう?」


 村人たちから不満の声は上がらない。

 改めて村人たちの顔を順に見渡していくが、「足りないもの、ねぇ……?」と特に思いつかない様子だ。


「……そうですか。

 では、アーネス隊長。すみませんが、ハンマーと斧を用意して下さい。」

「ハンマーか。サイズは?」

「杭を打つような大きいやつです。斧は、木を切り倒すやつと、枝を落とすやつがほしいです。」

「ふむ……? 了解した。」

「ありがとうございます。

 では、みなさん! せっかくアーネス隊長が来てくれましたので、食事にしましょう。

 支援物資をくれた人に、その支援物資で食事会をするというのは、ちょっと微妙な感じもしますが、みんなで楽しく食べて話していれば、そのうち何か思いつくかもしれません。」


 そういうわけで食事会になった。

 支援を受けている立場なので質素なもの……と思いきや。


「誰か、こいつを解体できませんか?」


 料理の準備を村人たちに任せて、俺はちょいと獣を狩ってきた。

 魔法のコツを掴んだので、かなり簡単だった。夜勤中に音と気配だけで異常を察知する感覚を思い出して探知魔法を使い、年寄りを起こさないようにオムツ交換をする時のことを思い出して遮音結界を展開して近づく。

 嗅覚に優れた奴には逃げられそうになったが、転びそうになった老人を見つけて慌てて支えに行く時のことを思い出して加速魔法を使えば、すぐに追いつけた。ああいう時は、本当に時間が止まればいいと思う。ハイスピードカメラで撮影したスーパースロー映像みたいに世界がゆっくりになる感覚。今回の加速魔法は、効果が抜群だった。


「おお! こいつは凄い!」

「任せろ! すぐ解体してやる!」


 10頭ばかりの獣に、村人たちが群がって、たちまち血抜きと解体が始まった。

 こういう時は、民間人でもちょっとバカにならない凄いバイタリティを発揮するものだ。


 ほどなく、村人の食事にしては豪勢な感じの食事が出来上がった。

 厚切りステーキ、肉入りスープ、肉野菜炒め、といったメニューだ。昼食が菜食主義者みたいな野菜オンリーのメニューだったのと比べると、だいぶ豪華になった。ちなみに昼に野菜オンリーだったのは、支援金を割り算して1食分を計算したら、そうなった。もし開墾が順調に進んで、早期に収穫できれば、その分は野菜を買わずに肉を買うことができる。

 そのとき村人たちは「まあ、こんなものだ」という顔をしていたが、そこに少し残念そうな色が混じっていたのを、俺は見逃さなかった。一応、どのぐらい我慢できるか見てみるために、昼食のときは狩猟しなかった。結果、たぶん村人たちは3日もすれば野菜ばかりのメニューには飽きると分かった。むしろ3日は我慢してくれるのをありがたいと思うべきだろう。問題を増やさないように努力してくれているのだ。

 ただ、いつまでも我慢するのは無理だ。そんなわけで、先に手を打ってみた。獣10頭をそう短時間で食べきれるものではない。干し肉にするなり燻製にするなり、保存食にすることを考えるだろう。そうなれば、日々の食事に彩りが増える。

 地球の食文化の持ち込み? 無理無理。俺はそこまで料理が得意じゃない。自炊できないほどじゃないが、調味料を栽培から始めるほどの料理通でもない。あくまで、独り暮らしをやっても栄養バランスが崩れない程度の腕前だ。ちなみに得意料理は生野菜のサラダである。切るだけじゃないかって? その通りだよ。

 ちなみに、勤めていた老人ホームでは、調理専門の業者が入っていた。老人ホームの厨房で、100人分ぐらいを一気に作って、ワゴンで配膳するという形式だ。介護士は鍋単位で上がってくる料理を、皿単位に盛り付けるだけ。

 ちなみに小規模多機能で働いている友人に聞いた話では、彼らは業務用の冷凍食品を購入して、それを湯煎して盛り付けているそうだ。老人が最大18人だそうで、それなら業者に調理して貰うより冷凍食品のほうが安いのだろう。要するに、どこの施設もまともに調理している時間などない。






「ふぅむ……。」


 アーネスは、ジャイロと村人たちを観察していた。

 ハンマーを用意する意味は分からないが、喜んで獣を解体する村人たちを見るに、獣を与えるのが村人たちの欲求を満たす行為だったのだろう。

 すごい事だ。ジャイロはなかなか大した為政者になれる。アーネスは感心していた。

 村人たちの喜びようはアーネスが見てもちょっと驚くほどだ。獣の死体がそんなに嬉しいのか? だがジャイロは、彼らの喜びをまるで予想していたように、穏やかにうなずいている。こういう場合、同じことをしても同じように喜んでくれるとは限らない。ジャイロがやったのは、どういう事か? 民を喜ばせるために、ジャイロは何をしたのか? 

 民が何を望んでいるかを察知しなければならない。でなければ、何をしていいか分からない。

 民が不満を表す前に、それに対処しなければならない。でなければ、こうまで「分かってるなぁ」という反応をしてもらえない。

 食事会の間、結局アーネスは何も頼まれなかった。それはジャイロが村人たちの欲求をすべて先回りして解決してしまったからだろう。今後、新たに不満を持つようになるまで、村人たちはしばらく今の生活に満足する。それは、短くても3日は続くだろう。おそらく実際には、1週間は穏やかなまま、1ヶ月は不満を持つようになっても納得したままだろう。

 支援物資と支援金に感謝する言葉ばかりが、村人たちからアーネスに浴びせられた。だがこれは、アーネスの成果ではない。支援物資や支援金を用意した公爵の成果でもあろうが、半分以上はジャイロの成果だ。広大な面積を一気に耕し、井戸を掘り、水路を整備した。そのことを「凄い」とたたえる村人はいるが「ありがとう」と感謝する村人はいない。彼が受け取るべき「ありがとう」は、どういうわけか、すべてアーネスに向けられている。

 理不尽……? いや、これもまた、ジャイロの凄さなのだろう。やった事が凄すぎて感謝されるレベルに落とし込めない。驚くばかりで現実感がないせいだろう。


「……だとすると……?」


 ハンマーも、村人たちを喜ばせるために? それも、何か凄いことをしようと……?

 ……しかし、いったい何をするのだろうか?

読者様は読んで下さるだけで素晴らしい!( ・`д・´)キリッ


なお、評価とかブクマとかしてくれると、作者が喜びます。(o´∀`o)


ちょっとタイトルを変更(追加)してみました。

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