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介護士は常識の違いを知る

読んでくれてありがとうございます:*(〃∇〃人)*:

楽しんでもらえると嬉しいです。

読者様には申し訳ない事ですが、不定期更新になる予定です。

「驚きました。あのような価値観もあるのですね。」


 アーネスは領主の館に戻り、父であるゴーファ公爵に結果を報告していた。


「さもあろう。」


 公爵は大きくうなずく。

 貴族はみんな出世欲が強い。下級貴族と上級貴族では、貴族社会の中での扱いがまるで違うから、そういうものを目の当たりにして育つと、どうしても出世欲が強くなる。アーネスの周囲にいる人物も、みんな「世の中は出世することが全てだ」と言わんばかりの価値観を持っている。

 だからこそ、ジャイロの「出世には興味がない」という価値観は、信じがたいものだった。


「世界を見て回りたい……か。

 ふふふ……。」


 公爵は優しく笑う。


「父上……?」

「アーネス。お前は強い。警備隊に入れてやったのは私だが、その歳で隊長になれたのはお前の実力だ。」

「はい。」

「だからこそ、思わないか? 自分の剣の腕前が、どこまで通用するのか、と。」

「興味はあります。」

「私もかつては、そうだった。

 貴族の、公爵の家に縛られず、1人の冒険者として世界を渡り歩いたら、どこまで通用するのだろうか、とね。いっそ本当に家を捨てて冒険者になってみようかと思う事もあった。」

「父上が……?」

「私だって、若い頃は、ね。

 次男や三男に生まれた友人らは、実際に冒険者になった者もいる。羨ましく思ったものだよ。」


 懐かしそうに遠くを見る侯爵。

 その顔が急に真面目になって、アーネスを見据える。


「覚えておきなさい。

 世の中には、自分とは違う価値観を持つ人間が居る。

 まして貴族と平民なら、その価値観は圧倒的に違うだろう。我々貴族は、そんな平民を相手に領地を運営しなくてはならない。彼らの価値観に合わせること。それが領地を発展させるコツだ。

 だから、平民出身の彼がどのように村を開拓するか、よく見て学びなさい。」

「はい、父上。」

「それから、ウォーラックに連絡をつけてくれ。手紙を書く。」

「分かりました。」


 公爵は机の引き出しを開けて、動きを止めた。


「あ、そうだ。」


 引き出しから手紙を取り出す。


「これは、お前宛だ。」

「また見合いの申し込みでしょうか?」

「そのようだ。私の娘がいかに素晴らしいか、なにやら独特の文体で書き連ねてあったよ。」

「ああ……。」


 アーネスは察した。


「ポエム書いちゃったパターンですね。」


 彼女という太陽がなければ僕は夜の暗闇に囚われてうんたらかんたら……というやつだ。

 たまに来るが、まともに断っても断っていることを理解してくれない面倒くさいパターンだ。恥ずかしがっているんですねとか、今がダメでもいずれ一緒になる運命だとか、勝手なことばかり書いてくる。

 だからこういう手合いには、決闘が一番だ。大事な事は、徹底的にボコボコにすること。中途半端にやるとマゾに目覚めたような反応をされて、よけいに面倒くさくなる。





「超ハラハラしたわ。あんたバカなの?」


 アルテナが辛辣だ。


「公爵様のお誘いを断るとか、正気の沙汰じゃねえっす。」


 マクセンまで……。ひどい言われようだ。


「いやいや、相手は公爵じゃなくてその娘だろ。」

「「同じ事(っす)!」」


 まあ、普通の貴族が相手なら無礼討ちにしようとしてくるかもしれない。

 だが、ここの公爵はだいぶ人道的な人物のようだから、無礼討ちなんてしないだろう。アーネスがあることないこと報告しても、いきなり討伐とか逮捕とかにはならないはずだ。まずはこっちの主張も聞こうとするのではないだろうか。


「どこの聖人よ? 教会で懺悔を聞く僧侶じゃないんだから。」

「そんな聖人みたいな貴族いないっす。」

「普通だと思うが……。」


 貴族はその領地の領主だ。領主には、司法・立法・行政の権限がすべてある。三権分立していない。だから公平に振る舞うのが理想的だ。帝王学的な知識を継承しているだろうから、公平こそが最も反発が少ない効率的な領地運営・領民管理のコツだという事を、貴族はすでに知っているだろう。よほど我が儘な人物に育っていなければ、公平になりきれなくても、公平であろうとはするはずだ。そしてここの領主は、非常に人道的である。ハッキリ言って貴族としては変わり者だ。ならば、他より圧倒的に公平公正だろう。


「むしろ骨のある人物として気に入られたのでは?」

「ないない。」

「ないっす。」


 簡単に従うようでは、簡単に裏切るかもしれないという懸念がある。俺ならそう思う。自分なりの信念とか行動指針とかを持っている人物は、その理にかなう限りは信用できる。だが、自分の芯がない人物は、簡単に影響を受け、流されてしまう。


「立ち合いの約束を果たすことを気にしてくれていたが?」

「逃げないように釘を刺されただけじゃないの?」

「きっと、貴族の誘いを断る無礼者ってことで、全力でボコりに来るっす。」


 どうやら貴族は怖いものという固定観念にとらわれているようだ。

 まあ、この2人はもう放っておこう。彼らには彼らの常識があるという事で、こちらが引き下がるしかないだろう。しかし、たぶんゴーファ公爵はそんなに恐ろしい人ではない。貴族だからという色眼鏡を外して考えれば、人道的な素晴らしい人物のようだ。


「それより村の開拓計画を立てないと。」


 すでに開拓用に与えられた場所には到着している。

 魔物の少ない森の近くだ。

 まず必要なのは衣食住。衣類については軍の支給品の予備があるのを出して貰えることになった。食糧としては金銭を支給された。長期保存ができる携帯食料など、せいぜい干し肉とか魚の干物ぐらいだ。食糧は劣化していくものだから、現物支給というわけにはいかない。住居については、軍が野営するときに使うテントを借りられる事になった。後日、大工が派遣されて家を建ててくれる予定だ。

 そんなわけで、村人たちは早速草原を耕して畑にしている。

読者様は読んでくださるだけで素晴らしい!( ´∀` )b


なお、ブクマとか評価とかして頂けると、作者が喜びます。(*´σー`)エヘヘ

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