表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

16/106

介護士は狙撃する

読んでくれてありがとうございます.+:。 ヾ(◎´∀`◎)ノ 。:+.

楽しんでくれると嬉しいです。


読者様には申し訳ない事ですが、不定期更新になる予定です。

 村人たちが1カ所に集められていた。

 大人たちは東の民家から連れ出されて、地面に2列に立てられた杭に縛られた。1つの杭に両足を、もう1つの杭に両手を縛られ、地面に寝た格好にさせられている。

 ここまでは偵察の間に見えた光景だ。何をしているのかよく分からなかった。だが、相手は戦力を求める軍隊式のテロ集団。それが農村を制圧している。


「……という事は……。」


 だいぶエグい事が起きる。

 俺がそう直感した直後に、それは始まった。


「ガキども! 親の前に並べ!」


 子供たちは西の民家から連れ出されて、それぞれの手に、子供には重すぎると思われる斧を渡された。

 意味が分からないまま、子供たちは自分の親の前へ、それぞれ並ぶ。親の近くに居るだけで少しは安心できるから。


「いいか! 今から親の腕を切り落とせ!」


 「蛇」の指示に、一斉に悲鳴が上がった。


「そんな……!」

「いやだー!」


 それを聞くと、「蛇」は縛られていた大人の1人を、無造作に剣で突き刺した。


「ぎゃあっ!」


 噴水のように鮮血が噴き出した。太い血管を切断されたらしい。

 悲鳴を上げてもがき苦しむ大人を、子供たちは言葉を失って青い顔で見ている事しかできない。

 やがて血の噴水が勢いを失うとともに、苦しんでいた大人が動かなくなっていった。


「腕を切り落とせ! さもなければ俺が今すぐ殺す!

 選べ! 決めるのはお前らだ!」


 子供たちは泣きながら親の腕を切り落とそうと斧を構える。大好きな父を、母を、死なせたくないから。


 少年兵としての訓練。その初期段階だ。

 まずは「兵器」としての心を作る。人間的な感覚――同情とか優しさとかを麻痺させるために、非道なことを延々とやらせる。戦い方を覚えるのは、その後だ。

 敵に遭遇したとき、即座に殺すのは、普通の神経では難しい。従軍経験がある元日本兵の老人たちが、今では介護施設に入っている。


「最初は『すまん!』と思いながら攻撃するんだよ。

 攻撃できない奴もいてな。まあ、相手の方が先に決断すると、こっちが殺されるわけだ。優しくていい奴から順番に死んでいく。

 だけど、だんだん慣れてきてな。そのうち『今日は何人倒した』とか自慢し始める。今から思うと、あんなのは頭がおかしくなってた。」


 俺は、居合を学び、獣を殺し、鍛えて経験して強くなった。

 だが、人間を殺した事はまだない。骨折させた事なら、前世でも仕事中の事故としてやらかした事はあるし、ついさっき襲ってきた「蛇」にもやったばかりだ。だが殺してない。ダークサイドに墜ちて、介護士は人殺しだと悟りを開いた。それでも「上手に殺す」という意識はあったが「積極的に殺す」という事はなかった。

 必要になったとき、俺にはできるのだろうか?


「くそっ! あいつら!」


 その声で我に返った。

 アルテナが暴走寸前だ。


「左から行け。」


 短く指示を出す。敬語を使う暇はない。

 即座にアルテナが走り出した。


「マクセン。右から頼む。」

「了解っす。」


 マクセンも走り出した。

 小高い丘の上から、俺は手榴弾を投げる。手裏剣も鍛えてきた。遠投でもコントロールはバッチリだ。

 弾丸のようにまっすぐ飛んだ手榴弾が、村の手前側に着弾し、同時に爆発する。その場にいた歩哨を巻き込んで、派手に吹き飛んだ。


「なんだ!?」


 直後、マクセンが村の右側でさらに手榴弾を投擲。続けて爆発が起きる。


「敵襲! 敵襲だ!」


 テロ集団「蛇」が警戒態勢に入る。

 少年兵の訓練を担当していた連中が、子供たちを西の民家に戻そうと誘導し始めた。邪魔にならないように、という事だろう。杭に縛った大人たちは放置だ。人質としても使えるし、動けない状態だから邪魔にはならない。


「ぐはっ!」


 突然のダメージに、誘導していた「蛇」が倒れた。

 音も光もない。おそらく風魔法だろう。真空の刃とかそれ系のやつだ。

 続けざまに近くの「蛇」が次々と倒れていく。

 アルテナもうまくやっているようだ。

 ほとんどの「蛇」は爆発に気を取られて、子供たちの近くに居た「蛇」が倒れていく事に気づかない。

 そして気づいた「蛇」には――


「とうっ。」

「ぐはっ!?」


 俺が狙撃する。

 手榴弾ではなく、手製の手裏剣だ。釘を加工したものである。これを目標に()()()()()()()()()のが、なかなか難しい。棒状のものを投げると必ず回転してしまうからだ。その回転数を、距離に応じてコントロールするのが手裏剣術である。

 俺が学んでいた居合では、手裏剣は少し距離があって刀が届かない相手を攻撃するための補助的な方法として位置づけられていた。そもそも手裏剣で相手を殺すのは難しい。武器が小さすぎるから、ひるむ程度の傷は与えられるが、それでトドメを刺す事はできないのだ。

 逃げる敵に手傷を負わせて足止めするとか、斬り込む前に投げつけて隙を作るという使い方が想定されているものだ。だから俺の手裏剣にも、麻痺の魔法を施してある。

 手榴弾との違いは? 形が玉か棒かの違いだけじゃないのか? という声が聞こえてきそうだから答えておこう。施した魔法が違う。手榴弾は麻痺以外にも様々な魔法を施してあるが、手裏剣は麻痺だけに限定している。また同じ麻痺の魔法でも、手榴弾のほうは範囲魔法で、派手にバチバチと電撃が飛び散る。巻き込まれなかった周辺の敵にも危険を認識させて萎縮させるためだ。対して手裏剣のほうは、単体魔法で音も光も出ない。近くの他人を巻き込まずに、目標だけを静かに制圧するためだ。


 ほどなく、全ての敵が村人から離れて、俺とマクセンの方向へ二分化、集中する。

 こうなってしまえば、あとは簡単だ。まずは手榴弾がなくなるまで投げまくる。爆発で吹き飛ばし、電撃で麻痺させ、石化で封じ、冷凍で動きを鈍らせ、閃光と砂塵で視界を奪ってさらに混乱させる。

 手榴弾がなくなった時には、かなりの敵が行動不能になっており、残った敵もまともに動けない。これなら手裏剣を使うまでもないか。あとはのんびりと木刀で殴るだけだ。






 今日のMVPはマクセンだな。最も多くの敵を倒した。

 技能賞はアルテナ。見つからずに攻撃できていた。おかげで敵をこっちへ引きつける事ができ、村人に被害が出なかった。


「2人とも、よくやってくれた。」

「兄貴。聞いてないっす。」


 マクセンに促されて見れば、アルテナは家族との再会を喜んでいた。

読者様は読んで下さるだけで素晴らしい!( ・`д・´)キリッ


なお、評価とかブクマとかしてくれると、作者が喜びます。(o´∀`o)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ