介護士は懇願される
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:*(〃∇〃人)*:
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読者様には申し訳ない事ですが、不定期更新になる予定です。
冒険者になって1カ月ほどが過ぎた。
この1カ月で、魔物の討伐依頼がどんどん増えている。魔物が増えたのと、謎の集団に襲われて冒険者が減っているせいだ。
「これも一緒にお願いできませんか?」
受付嬢が懇願してくる。
討伐依頼が増えて処理しきれないそうだ。
「分かりました。」
体力と相談だが、俺はなるべく断らない。
他の冒険者と違って、防具を身につけないから装備に金がかからないのだ。剣はこの前壊れてしまったが、もう木刀を自作してそれを使うことにした。ただの木刀ではすぐ壊れるが、マクセンが良い知恵をくれた。
「防御力強化とか強靭化の魔法をかけるといいっす。
道具が頑丈になって、長持ちするっすよ。」
頑丈になるということは、強く打ち込んでも壊れないということ。つまり、木刀でも十分な攻撃力が得られるということだ。
剣と違って、ちゃんと反りがある木刀は、よく手に馴染む。おかげで討伐依頼が増えても所要時間はむしろ減っている。
ちなみに剣もちゃんと新調した。突きつけて脅す時とかに使えるから。こればかりは木刀じゃ格好が付かない。それに、木刀は斬れない。切断したい時だってある。
まあ、刀があれば全部解決する話だ。はぁー……刀が欲しい。
「3倍の仕事量に耐えられるなんて、ジャイロさんは凄いですね。」
「兄貴、パネェっす!」
最近のマクセンは、語彙力だけが心配だ。
ともかく、今日も討伐に行ってこよう。
「兄貴。」
魔物を倒していると、マクセンが緊張した声で呼んだ。
別の魔物か?
俺は周囲を警戒する。
だが、襲ってきたのは魔物ではなく、人間だった。
「おらあっ!」
相手は10人。
盗賊か? いや、こいつらが話題の謎の集団か。
見た目は盗賊だな。粗末な服装だし、髭はのびほうだいで、肌も小汚ない。装備もバラバラで、手入れもされていないようだ。
「むんっ!」
とりあえず斬り伏せる。
まあ、木刀だから斬れないけども。防具もろとも骨まで折れて吹き飛んだだけだ。死んでない。気絶したり悶絶したり。それだけだ。
剣から木刀に持ち替えた俺には、前にもまして隙がない。ドヤァ( ̄∀ ̄)
そして最後の1人だけ、臥床介助で投げ落とす。
「ぐはっ!?」
そのまま身体拘束して、尋問開始だ。
身体拘束なんて介護の現場では禁じ手だが、介護士としては負けでも、やらねばならない場面だってあるものだ。訳も分からず自傷行為をやってしまう老人だって居る。壁を叩きまくって内出血とか、自分の体の頑丈さ、いや、脆さを分かってない。点滴を引っこ抜いて血塗れになる人も居たな。
そういう場合は、仕方ないから拘束する事がある。今回は、自殺防止だ。抵抗される程度では、身体拘束をしてはならない。
「さて、色々吐いてもらおうか。何者なのか、とかな。」
ゆっくり尋問してやろう。代わりも大勢いる。
「兄貴!」
マクセンがまた緊張した声で呼んだ。
見れば、謎の集団に追われている人物がいた。
「助けてください!」
彼女が叫んだ。
格好から見て、冒険者のようだ。武器は杖。防具は軽装。魔術師か。彼女も襲われた、というより、彼女が襲われているところに俺たちが通りかかったという場面か。
「むんっ!」
「おらおらあっす!」
斬り込む俺。サポートするマクセン。
この1カ月ですっかり連携が取れるようになった。
謎の集団は、たちまち壊滅した。
「助かりました! ありがとうございます。」
助けた女は、やはり冒険者で、名前はアルテナといった。
「いえいえ、お気になさらず。」
などと社交辞令を交わし、捕まえた謎の集団に向かう。
正体とか目的とか聞き出さないとね。
「さて、それじゃあ、改めて吐いてもらおうか。」
「ふん、嘗めるな。お前らに渡す情報などない。」
まあ、そうなるよな。
「じゃあ、まずは……脱衣介助っ!」
身体拘束しているので、完全には脱がせられないが、胴体が丸出しになれば十分だ。
脱がせた衣服の一部をナイフで切り取って、こよりを作る。
「コチョコチョコチョコチョ……!」
「ぎゃははは!」
30分で聞きたいことは全て聞き出せた。
くすぐり地獄に耐えられる者など居ないのだ。一切傷を与えない平和的な解決法である。
自分で出した体液まみれの男は、拷も……げふんげふん……尋問の途中で、にわかに正気を取り戻し、協力的になった。洗脳されていたらしい。
謎の集団は、組織の名前を「蛇」という。
その正体はテロ集団。冒険者を狙っているのは、死ねば武器装備を調達でき、生け捕りなら洗脳して人員確保になるという作戦らしい。やる事が小規模すぎる。まるで盗賊団だ。テロ集団というには、あまりにも……。つまり、まだ活動を開始したばかりなのだろう。
それでもわずかの間に変化はあって、前は盗賊団を装って商人を襲っていたが、最近は人数が増えて食糧が足りず、農村を襲うようになったという。
「その襲われた村というのが、私の故郷なんです。」
アルテナが涙ぐんで言う。
いてもたってもいられず、村を目指して移動中、「蛇」に襲われたというわけだ。
「警備隊は?」
こういうのは冒険者ではなく、警備隊の仕事だ。
冒険者は少数精鋭でフットワークが軽いのが長所である。だが、少数精鋭の弱点は、大軍だ。相手が組織なら、冒険者よりも警備隊のほうが対処するに適任である。
「対応を検討中だとかで、すぐには動いてくれなくて。」
まさにそれが大軍の弱点だ。
なら、俺たちはどうするべきか。
警備隊の邪魔にならないように、無茶は避けるべきだろう。第一、俺だって死にたくない。
だが、できる事はある。偵察とか破壊工作とか。
「まずは敵情視察といこう。」
俺たちは村を目指した。
ちなみに、「蛇」の連中は洗脳が解けた奴に任せておいた。拘束してくすぐれば洗脳は解けるようだから、すでに抵抗できない彼らを全員正気に戻すのは簡単だろう。
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( ・`д・´)キリッ
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(。・ω・。)ゞ




