介護士は空気を食べさせる
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集団戦闘では、士気の高さを維持するのが最も重要なことだ。なにしろ集団心理というのが働くので、普段ならやらない事や、1人ならやらない事を、集団心理で平気でやってしまう。赤信号もみんなで渡れば怖くないというやつだ。デモ行進が過激化して暴徒集団のようになってしまうニュースもたびたび流れる。
従って、いくら規律を厳しくしても、集団心理が「逃げよう」となれば一斉に逃げ出してしまうし、いくら絶望的な状況でも、集団心理が「やってやるぞ」となれば一丸となって戦う。士気を高く維持するというのは、戦局を大きく左右するほど非常に重要な事なのだ。
そうすると集団戦に勝つには、敵の士気を下げるのが効果的である。その天才が織田信長だ。織田信長は、鉄砲を取り入れて戦国時代で大活躍した。当時は火縄銃だから、連射はできないし、命中精度は低いし、弓や槍のほうが効果的だと考える武将も多かったようだ。
信長がそれでも鉄砲で活躍したのは、3人1組で連射速度を高めたとかの工夫よりも、敵の先鋒部隊を鉄砲でたちまち壊滅させる事が大きかった。真っ先に敵陣に突っ込む先鋒部隊が活躍すると、それを見ている後続部隊の兵士たちに安心感と勇気を与える。だから先鋒部隊には精鋭の兵士を集める武将が多かったようだ。つまり先鋒部隊は精鋭部隊。その先鋒部隊がたちまちやられてしまうと、後続部隊が敵の強さに恐れおののく事になる。
浮き足だった敵など蹴散らすのは簡単なもので、これこそ信長の強さの秘密だったと言っていいだろう。
さて、上空の鳥獣人たちである。先に突っ込んだ連中が一撃で壊滅したのを見て、警戒を強め、距離を取っているが、見えない攻撃を目の当たりにして、どう対処したものか考えあぐねているらしい。俺としては、そのまま撤退してくれると嬉しいのだが……そうウマくはいかないだろう。
なので、撤退を促すようにもう一押ししてやる事にした。
「食事介助ッ!」
風魔法で成分調整した空気を食わせてやる。
窒素100%の空気だ。酸素濃度6%以下の空気は、1回の呼吸で瞬時に意識を奪う。放置すれば死亡するので、酸素濃度が通常の場所へ運び出してやらないといけない。今回は落下することで危険な領域を脱するので死にはしない。
そして今回のポイントは、上空に残った鳥獣人の一部だけを狙ったことだ。隣の奴がいきなり気絶して落下していく光景というのは、なかなか恐怖である。次は自分かもしれない。その恐怖に駆られると、集団心理はたちまち「逃げよう」となる。
森の木から鳥が一斉に飛び立つようにして、鳥獣人たちは逃げていった。
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