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第21章

 楽しかった夏休みが終わる三日前、ネイサンの父ジェームスが息子のことをマクフィールド家まで迎えにきた。


 イーサンとしてもその日はずっと家にいて、ネイサンの父にまずは謝罪しなくてはと思っていた。電話での会話というせいもあり、つい自分もカッとしてしまったが(というのも、ジェームスがあまりに事務的で淡々とした話し方だったせいだ)、ネイサンの話を聞く限り、実際に会った時の彼というのはおそらく印象がまったく違うだろうと予想していた。


 そして実際、イーサンのこの直感は当たった。ジェームス・マクフィールドは一目見るなりインテリジェンスの高いことのわかる、高貴な顔立ちをした人物で――ユトレイシア細胞プロセッシングセンターでセンター長をしている――イーサンも生意気な口を聞いてしまったことを、出会った瞬間に後悔したものだ。


「その……いつぞやは失礼しました。俺も割と幼い頃に母親を亡くしたもので、そんなせいもあってつい声を荒げてしまったというか……」


「ああ、いや」と、ジェームスのほうでは実に落ち着いたものだった。「こちらこそ、息子を夏休みの間中預けっぱなしにして、ろくに連絡も取らず、失礼しました。まあ、ネイサンからも聞いているかもしれませんが、うちは家内がちょっとアレでしてね」


 ここでジェームスが意味ありげに笑うのを見て、イーサンにしても大体のところを理解した。簡単にいえば、彼がとても<話せる>人物であるということが、嬉しかった。


 イーサンは子供たちに聞かれたくない話の展開になるかもしれないと思い、ジェームスのことを庭のほうに連れだしていた。そして、そこにあるガーデンチェアに座り、挨拶がわりにそんな話をしていると、マリーがアイスティーとクッキーの皿を置いていったのだった。


「彼女ですな。ネイサンの言っていた将来結婚したいおねえさんというのは」


「えっ、結婚ですか?まあ、確かにマリーは料理も出来ますし、子供好きでもあるかもしれませんが……」


 ノアもまた、「将来結婚するとしたら、マリーおねえさんのような人がいい」と言っていたのを思いだし、イーサンはこのことにそう深い意味があるとは思わなかった。特にネイサンの場合、それは恋ではなく母性をマリーに求めているということなのだろうと。


「いやまあ、わたしも、もっとよく考えてああした女性と結婚すべきだったんですよ。妻のクレアとは、グリーフケアの集まりで出会いましてね。向こうは夫を交通事故で亡くし、わたしのほうは病死でしたが、その時に気持ちの通いあうものがありまして。家にはじめて行った時、子供のジミーも可愛くて、ネイサンも彼となら気があうと思ったし……ジミーもわたしに対して割とすぐ心を開いてくれたんですよ。それならという感じで結婚したまでは良かったんですがね、実際に結婚してみると外でデートしていた時には見えなかった点が多々目につくようになりましてな……まあ、いまや私も家庭という名の墓場の住人ですよ」


「えっと、でもまだご結婚されてそんなには……」


 イーサンはジェームズに動物クッキーを勧めつつ、自分でもカエルの形のをひとつ食べた。


「そうですな。まあ、二年といったところですが、私もなるべく研究室のほうにいるようにしたりして、今は家にいる時間も少なくなって……ネイサンには悪いことをしたと思っています。また、あなたが電話で叱ってくれて良かった。人間、やはり社会的に人の上の立場に立つようになると、まわりにもイエスマンが増えるものでしてな。その点、マクフィールドさんのあれは本当に新鮮でしたよ。あらためて、お礼申し上げます」


「とんでもない。ただ、俺としてはあなたが話のわかる人で良かったと思うという、それだけです。ネイサンは本当に、いい子ですから……」


 このあと、イーサンはジェームスとノアやリアムやケビンといった仲のいい子供たちの話をし、最後は握手して彼と別れるということになった。ネイサンはイーサンと自分の父親が和気藹々と話しているらしい様子を遠目に見て、心底ほっとしたものだ。そして帰りの車の中で、「これからはお父さんも変わる努力をするよ」と言われた時には……嬉し涙が滲んだほどだった。


 一方、イーサンはスタンフィールド親子が帰ったあと、少しの間応接室に篭って溜息を着いていたかもしれない。


『その、差し出がましいようですが、離婚といったことはお考えにならないんですか?』


『そうですなあ。そりゃもちろん考えますよ。ですがまあ、潔癖症なだけあって、家事全般については心配なく任せておけますし、お金の管理のほうも実にしっかりしたものでしてな……しかも、私のほうで暫く仏頂面してると、「自分の何が気に入らなかったんだろう」といった具合で、家内にはそもそも自覚がないんですよ。あれでいて、女としては可愛いところもあるし、ネイサンにはまったくもって申し訳ないと思いつつも、あいつが泣き叫ぼうとどうしようと絶対別れるというくらいの強い意志が私にないというのが問題と言いますか……』


 ここでジェームズは、実に生活感の滲んだ、重い溜息を着いていた。それから、疲れたようにこめかみのあたりを指で揉む。


『まあ、イーサン、あなたはまだ若い。私のような例もあるのだと思って、結婚する時にはよくよくお考えになることですよ。あなたのその容貌じゃあ、とてもおモテになることでしょうしね。しかも、天下のユトレイシア大のクォーターバックと来た日には……』


『いやいや、俺が結婚なんてするのはたぶん、うちの弟たちや妹たちがある程度大きくなってからですよ』


 イーサンはそんなふうに言って誤魔化したが、(墓場の家庭か)と思い、あらためてジェームズ・スタンフィールドのことが気の毒になった。高い年収と社会的地位、それに見るからにインテリジェンスの高い紳士といった容貌の彼は、おそらく今の妻と別れても、再婚相手などいくらでも見つかることだろう。けれど、そのためにはひどく被害妄想の強い、脅迫神経症の毛のあるひとりの女性を不幸のどん底に突き落とさなくてはならないのだ。


 けれど、彼の優しい性格と情の深さとが相まって、そこまでのことをなかなか決断できないというのは、イーサンにしてもよくわかる気がした。それからふと、あることを思いだして、イーサンは思い出し笑いをしてしまう。


 一度、自分の家庭を評して『うちの家は俺にとっては墓場みたいなものなんだ』とネイサンが言っていたことのあるせいだった。『墓場なんか、いくらピカピカにしたって、やっぱり墓はただの墓さ。でも、弟のジミーはすごいんだ。生まれた時から墓場の家庭に住んでるものだから、もうそれが当たり前で、なんともなくなっちゃってるんだね。ジミーは墓に耐性があるんじゃないかなって、俺、たまに思うくらい』……「弟は墓に耐性がある」なんていう言葉を生まれて初めて聞いたと思い、イーサンはおかしくて堪らなかったものだった。


 そのあと、イーサンが一階の居間のほうへ下りていってみると、そこではマリーが幼稚園に上がるミミの色々な持ち物に名前を書いたり、あるいはアイロンシールやキャラクターシールを貼ったりしているところだった。


「ネイサンの父さんは、墓場で暮らすことにうんざりしてるけど、ネイサンの弟のジミーは生まれた時から墓場に住んでるもんで、そこが墓だとも気づいてないんだとさ」


 イーサンは自分でも話していておかしくて仕方ないが、マリーは最初に彼が思っていたとおり、きょとんした顔をしている。


「たまにはお墓に行くのも悪くないですよ。墓に刻まれてる言葉を読んだりしてるだけでも、結構面白いですもの」


「そうか。そうきたか……」


 イーサンはマリーの予想外の答えに、ここでもやはり笑いを禁じえない。


「だがまあ、うちだってあんたが来るまでは半墓場の家庭みたいなもんだったからな。ネイサンの義理の母ちゃんの話を聞いてるうちに、俺もあんたに対する有り難味が増した。そういや、うちの親父の墓場には『女と猫は呼ばない時にやって来る』って刻んであったけど、あんた、あれが誰の言葉が知ってるか?」


「いえ、知りません」


「シャルル・ボードレールの言葉さ。ま、どうでもいいようなことだがな」


 そう言ってイーサンは、感謝の気持ちをこめてマリーの頭のてっぺんのあたりにキスした。イーサンは彼女にこんなことをしたことは一度もない。だが、イーサンはキキとララやシナモロールといったサンリオキャラの靴入れや手提げカバン、ハンカチといったものに囲まれているマリーのことが愛しかった。


 だから、言葉に出しては照れて言えなかったが、(ありがとう。感謝している)という気持ちが溢れるあまり、ついそのような行動に出てしまったのだった。



   *     *     *     *     *



 こうして楽しかった夏休みが終わると、学校の新学期がはじまった。


 ネイサンが夏休みの終わる三日前に自宅のほうへ帰ってしまうと、子供たちはみなそのことをつまらながったが、学校の新学期がはじまるのと同時、特にロンとココはクラス替えがあったせいもあり、そちらの新しい生活へとすぐ呑みこまれていったようである。


 これは、イーサンとミミにしても同様で、イーサンは大学院で新しくはじまる勉強のことがあったし、ミミは九月より幼稚園へ入園することが決まっていたからである。そしてこの入園初日はまだ良かった。マリーはミミのことを幼稚園まで連れていき、少しの間彼女のことを見守ってから家のほうへ帰ってきていたからだ。


 けれど、その三日後――迎えに来たバスに自分ひとりだけで乗りこむことがわかると、ミミは激しい抵抗を示した。うさしゃんのことは持たせてもいいと先生が言ってくれたため、ミミはかろうじてうさしゃんとだけは一緒だったものの……マリーと離され、迎えにきた先生に託された瞬間にはぎゃん泣きしていたものである。


 マリー自身、この悲痛な別離に耐えられず、こんなことが明日も明後日も繰り返されるのかと思っただけでつらかった。そして、午前中、子供たちがみんないなくなってしまったあとのリビングで、暫くの間呆然としていたのである。


 いつも、マリーはランディとロンとココが学校へいったあとは、リビングに掃除機をかけたりして掃除する。そのあとはおやつやランチ、また夕食の支度に取りかかるわけだが、この日はそうした意欲が一切湧いてこなかった。子供たちは三人とも高学年なため、この日は午後からも授業があったし――ミミの帰宅もまた、二時半頃だった。


 マリーはまるで、すっかり生きていく意欲を失ったようにしていたが、時計が十時半を打つ頃になると、まずはおやつ作り、それから夕食のメニューについて考えはじめた。月曜日だったので、新鮮なオーガニックの食材が届く日だったし、それを見てから夕食のほうは取りかかることに決めた。


 そしてマリーがのし棒でクッキーの生地をのし、寝そべっているうさぎやウィンクしている猫やパンダなどの形にクッキーを作っていた時……ミミよりも早くイーサンが帰宅した。授業のほうはすでに先週、オリエンテーションのほうも済み、今週からは眠たくなるような哲学の講義や倫理学の講義がはじまり、午前中いっぱい授業を受け、課題をたっぷり出されてからイーサンは急ぎ帰宅していたのである。


 何故といって、三日前からミミが幼稚園へ行っていなくなり、他の弟たちや妹も帰宅するのが遅くなるとわかっていたからだった。イーサンとしてはマリーとおそらく屋敷で一時間くらいふたりきりになれるだろうと考え、慌てて帰宅していたのである。


 もちろん、たったの一時間ふたりきりでいたところで、何かが突然どうにかなるとは彼自身思っていない。だが、イーサンにとってマリーとの恋愛は長期戦なのだ。こうやってふたりきりになれるところから少しずつ攻めていって、その積み重ねにより、最後はジェンガが倒れるようにふたりは恋に落ちる――それが今イーサンに出来る精一杯の手法だった。


 もっとも、このことをルーディと大学で会った時に話すと、彼は大笑いしていた。ルーディは文学研究科だったが、カフェテリアの前を通りすぎ、急いで帰ろうとするイーサンに声をかけたのだった。


「どうしたんだよ。そんなに急いで……いつもは午前中の講義が終わったあとは、ランチがてら何か色々だべって過ごすってのが俺たちのスタイルだったろ?」


「まあ、そりゃそうなんだが、ほら、俺、前にも話したろ。マリー・ルイスとは長期戦でいくって。だから、まずはこれからもっとふたりきりになれる時間を増やそうと思うんだ。邪魔なガキどもはみんな、今新学期がはじまったばかりで忙しくてな。そんでもってそこへもってきて今学期からミミも幼稚園へ行くことになったんだ。つまり、急いで帰ればあの女とふたりきりになれる時間が一時間くらいはできるっつーか」


 言うまでもなく、ルーディはここで大笑いした。ラリーは同じ敷地内ではあるが、独立した別棟のロースクールのほうで学んでいるため、こちらのカフェテリアのほうへやって来るかどうかはわからない。


「いやいや、あのひとも実際大したもんだ。ラリーに続いて、恋愛の十割バッター様をキリキリ舞いさせるとはな。しかもそんな地味な方策しか取れないというあたり……結局ディズニーランドでも何もなかったってわけだろ?」


「ああ」と答えて、イーサンは溜息を着いた。「もちろん、それはある程度予想通りではあった。あんなちょこまか動くガキが五人もいたんじゃな、恋も色気もあったもんじゃないだろ。だから、ミミのことを間に挟んで、意外にもイーサン兄さんは優しい一面を持ってる、将来いいパパになりそう的アピールをしたって程度だ。ルーディ、おまえは馬鹿にするかもしれないが、これだって実は結構な進歩なんだぜ。それで、このほんの少しずつの進歩を積み重ねていけば、いずれ……」


 ここでルーディは堪らず、「ぶーっ!!」と吹きだすようにして笑った。グレープジュースが気管に入ってしまい、げふごほと暫くの間噎せる。イーサンはといえば、そんな友のことは薄情にも放っておいて、彼の食べていたサンドイッチの片割れに手を出していた。人の恋愛を嘲笑った罰である。


「……そ、そうか。まあ確かになあ、イーサン。おまえは優しいっちゃ確かに優しいし、弟たちや妹たちの面倒もしっかり見てやってるって点から見ても、将来いいパパにはなれるだろうよ。だけど、おまえほどの男がもう少し強引に行けないのか。俺がおまえなら、おまえんちが仮に五階建てじゃなく七十階建てでもな、同じ屋根の下に好きな女がいるとなったら――その女が七十階にいて、俺が一階で寝る予定なのだとしても、そこまで這ってでもいくね。エレベーターがなくて、全部それが階段だったとしてもだ」


「まあ、ルーディ、おまえの言いたいことはわかる。俺だって、そういう素振りをあの女から少しでも感じたとしたら、七十階分の階段を夜明けまでに必ず上るさ。それは間違いない。だが、こっちがそこまでのことをしたってのに、相手にまるで脈がなかったとしたらどうなる?『子供たちのいいお兄さん兼いいお父さんだとしか思ってませんでした』みたいなさ。こっちはもう足腰立たなくなってるってのに、そこだけは妥協できないみたいな感じで、湿布とか貼られただけで終わるんだよ」


「確かにそりゃつらいな」


 ルーディはイーサンにバジルチキンサンドを取られてしまったため、新たにハンバーガーと食後のコーヒーをトレイに乗せてきた。そうして戻ってきてみるとラリーがおり、(おや)と一瞬思ったのち、ルーディは元の席に戻った。三人揃って食事するというのも、そういえば随分久しぶりである。


 最初、三人はお互いに今日受けた講義の内容について話し――それから会話の途切れたところで、イーサンがまず最初にラリーにあやまった。喧嘩してから随分になるため、もはやお互いあれは「時効だ」と顔を合わせた瞬間に思ってはいた。だがそれでも、である。


「俺、最初はラリーがなんであんなに怒ってるのかわからなかったんだけどさ、まあ、あとになってみると、おまえのほうが正しいんだなってわかった。マリーのことを侮辱した奴ってのはまったく、おまえの言うとおりあいつの足の指にキスする値打ちもないってくらいの下衆野郎だってことには心から同意する」


「いや、わかってくれればいいんだ」


 ラリーのほうでは今も自分が正しいと信じているため、イーサンに対し謝罪を述べたりはしない。


「それに本当に、おまえはマクフィールド家の家長としても、ああいう人のことはちゃんと守ってやらなきゃ駄目だ。子供たちにとっての優しいママ兼おねえさんってだけじゃなく、人間としてもあんなに純粋で善良な女の人はこの世に存在しないんだ。俺がイーサンに代わってそうしたいけど、そう出来ないからこそ、おまえに頼むんだ。あの人にもし何かあったら俺は死ぬ」


(そいつは流石に大袈裟なんじゃないのか?)と心の中でイーサンとルーディは同時に思い、ふたりは眼差しだけで会話を終えていた。


「べつに、前と同じようにうちに遊びに来たらいいじゃないか。マリーはおまえの言ったとおり善良な女だから、変に気にする必要はない。いつも通りおまえの分もメシ作ってくれて、ラリーの話で子供たちが笑ってたらそのことを嬉しがって自分も笑うってな具合だ。だから、何も心配する必要はない」


「だからさ」と、ラリーは深い溜息を着いた。「あのあと一回だけ、イーサンのうちに遊びにいったろ。ココちゃんが『ラリーさん、振られちゃったのー?かわいそお』とか言うのはいいんだよ。そんなこと俺だって気にしない。あの人が特にデートのことを気にせず、前と同じだってこともわかってるさ。だけど、イーサン、おまえんちのあの、完璧な家庭の食卓ってのを見ちまうとな……俺もこれが欲しいが手に入らないって思い知らされるんだよ。そんなの惨めじゃないか。だから、暫くはおまえの家には行かない。マリーさんが自分に微笑みかけたってだけでも舞い上がったりして、あらためて俺って馬鹿だなって思い知らされるだけだからな」


(やれやれ。あいつも随分罪な女だな)


 この思いもまた、イーサンはルーディと共有していたわけだが、なんにしてもイーサンはこの時、カフェテリアの時計を見て座席から立ち上がった。もうすでに一時半である。これから急いで帰って二時、ミミが帰ってくるのが二時半。せめて三十分でも、イーサンはマリーとふたりきりになりたかった。


「じゃあな、ラリー&ルーディ。俺はちょっとしけた用事があるから早く帰るが、また寮でマージャンでもしようぜ」


 ラリーはイーサンの声も耳に入っていない様子でうなだれていた。ルーディだけが手を振り、これで何十度目になるかわからない、ラリーの失恋の落ち込みを慰めてやるといったところだ。


 正直、今はイーサンは大恩ある親友にあまり罪悪感を感じてはいない。言うなれば、正々堂々とした勝負でラリーは先にマリー・ルイスに告白し、残念な結果となった。だが、今ようやく自分のターンが回ってきても、イーサンは少し戸惑っていたわけだった。 


 イーサンは自分があらゆる点において、親友のラリー・カーライルに勝ったところがあるとは思っていなかった。自分よりも彼のほうが誠実と誠意に溢れ、紳士であり、成り上がりの親父の息子である自分とは違い、貴族の血すら流れている本物の金持ちなのだ。そうなのだ。ラリーはまったくもって性格までどこか貴族的であり、高潔で信に篤い男、イーサンにとって欠点がどこにも見当たらないという稀有な男なのだ。


 だがその男が真正面からぶつかって駄目だったというので、イーサンは怯んだわけだった。最低でも、ラリーよりも自分のほうが上だと思うようなことが正直イーサンにはすぐに思いつくことが出来ない。一般的に言って、赤毛にグリーンの瞳という組み合わせは人から好かれないかもしれない。だが、ブロンドにブルーの瞳の自分より、イーサンにはラリーの容貌のほうが魅力的に思えた。というのも、ラリーに初めて会った人は大抵、彼に会った瞬間どこを見たらいいか、わからないほどなのだ。髪は真っ赤で、その髪の下で輝く瞳はエメラルドのように輝いて見えるため、直視するということが出来ない。


 けれども、話しているうちに彼がいかに好青年かがわかるにつれて――最初は裏切り者のユダを思わせる髪も、ただの遺伝の産物だということになり、緑色の瞳は隣人に正義と思いやりのなんたるかを告げるといった具合に見えてくるのだ。マリー・ルイスがこのラリー・カーライルの魔術に陥らなかったのは、イーサンにとってまったく不思議としか思えなかった。


 ラリーといるといつもイーサンは、自分が薄っぺらで表面的な人間で、見た目のほうは多少格好良くとも、それが一体どうしたのだといった気持ちにさせられる。その男で駄目だったということは……自分は一体何で勝てばいいということになるのだろうか。


 このようなわけで、恋愛の至極初期の頃には「押せ押せ、行け行け」ムードだったイーサン・チームは近ごろではスクリメージラインを一ヤード、また一ヤードと後退せざるをえないという事態になっていたわけである。


 九月初旬とはいえ、インディアン・サマーを思わせる熱気がその日はあり、大学から急いで戻ったイーサンは、マウンテンバイクを激しく漕ぎまくったせいで、家に帰り着いた頃には背中が汗でびっしょりだった。そして、玄関にいつからか飾ってある、ドアを開けるたびにシャララアン……と美しい音色を立てる鈴が鳴ると(子供たちはこれを妖精の鈴と呼んでいた)、マリーが玄関先に出てくる。


 だが、相手がイーサンであることがわかるなり、マリーががっかりしていたため、イーサンとしてもがっかりだった。そして思う。


(やっぱりな。この女は俺に脈なんかない。第一印象が悪かったせいもあるんだろうが、見た目はともかく、性格の一部が冷たく意地悪でまったく話にもならない……くらいにしか思われてないんだろう)


「なんか、悪かったな。相手が俺で……だがこの時間、一体他に誰が帰って来ると思ったんだ?」


「ミミちゃんがそろそろ帰ってくるかと思って……」


 マリー・ルイスがいつも以上にどこかしょんぼりしているため、イーサンはそのことが気になった。背負っていたノースフェイスのリュックをソファに置き、リビングの壁時計を見上げると時刻のほうはまだ一時五十分である。


「ミミが帰ってくるのは大体、二時半頃と言ってなかったか?うちの前までバスで送ってきてくれるんだろう?」


「ええ。でも今日、ミミちゃん、お別れする時にこの世の終わりというくらい、わあわあ泣きだしちゃったんです。そのことがわたし、あんまりショックで……」


 イーサンはこの時、いつもより部屋のほうがあまり片付いてない気がして、ある程度のことを察した。つまり、マリーはミミが別れ際に身も世もなく泣き叫んだもので、家事なども手につかず、ずっとそわそわしては意味もなく溜息を着いたりして過ごしたのだろう。


 そのことを思うとイーサンはなんとなくおかしかったが、顔の表情に見せて笑うことまではしなかった。


「じゃあ、俺の分のランチなんてないよな?」


 やはりカフェテリアで食べてくるべきだったかと思い、イーサンは腹のあたりを押えた。だが、マリーはもちろん、そのことを忘れてはいない。


「いえ、あります。今日、月曜日だったので、オーガニックの食材が色々届いて……茄子と挽き肉のボロネーゼにしようと思ってました。お嫌ですか?もしそうでしたら、他のものにしようと思うんですけど」


「いや、それほどお嫌でもない。というか、食えればなんでもいいさ。あんたは?昼飯のほうはもう食ったのか?」


「わたしもまだなんです。ミミちゃんのことを思うとなんだか、げっそり食欲がなくなってしまって……」


 マリーはまた溜息を着き、どこか自動的な手つきでフライパンにバターを入れ、そこにパスターメーカーで作っておいた麺をふたり分入れた。果たしてこれを家族の特権と呼んでいいものかどうかわからないが、この昼食のひとときはイーサンにとって悪くないものだった。


 前もって作っておいたらしいサラダとスープも出てきて、イーサンは元気のないマリーを慰めればいいという気楽な立場だったからである。


「まあ、そうあんたが肩を落とすことでもないさ。二週間以上たってもぐずって幼稚園に行きたがらないっていうんならな、そりゃそこらへんで一度考えなきゃならんだろうが、あのくらいの子供ってのは単純なもんだ。三日か五日もすれば今置かれた自分の状況にも慣れて、自然と毎日幼稚園へ通うってことになるだろう。で、十年後くらいにあんたが今こんなにも胸を痛めていたとも知らず、幼稚園へ初めてひとりで行く時にぎゃん泣きしたなんて言われても、「そんなこと記憶にないわ、おねえさん」としか言わないだろうな。だから、そんなに深刻にならないほうがいい」


「それ、マグダにも電話で同じこと言われたんです。あんまり胸が切なかったもんですから、電話で聞いてみたんですよ。三人いるお子さんの時はどうだったかって……そしたら、真ん中の子がちょうどミミちゃんみたいだったけど、今そんなこと話しても覚えてないんですって。だから「そんなものだ」と思って、あまり気を揉まないほうがいいって……」


 そして、こんな話をしているうちにもう二時二十五分だった。マリーはまだ自分の食事も終わっていないのに、玄関のほうへ出ていってはまたリビングへ戻ってくるということを忙しなく繰り返していた。一方イーサンは(まったくうまいスパゲッティだ)と思いながら食事を続け、スープを飲み、サラダのほうもしっかり食べてから表のほうへ出ていく。


 すると、まるで親子の感動の再会とばかり、マリーもミミもニコニコしていた。おそらくミミのほうでは幼稚園が「ひとりでいってもおっかなくないところ」であることがわかり、マリーもミミが特に何か害を受けた様子もなくご機嫌に見えるのが嬉しいようだった。


 もちろんイーサンはここで、「だから言ったろ?」などとは言わない。本当は課題のレポートを書くのに、うんざりするような量の哲学の本を読まねばならなかったが、そのまま真っ直ぐ書斎へ行くでもなく、ミミの相手をすることにした。


 実をいうと夏休みの間、ランディとその愉快な仲間たちがキャンプごっこをしていた影響で――ミミにねだられてイーサンはこの可愛い末の妹のために小さな秘密基地を作ってやっていた。それは彼女がいつも幼児向け番組を見る子供部屋にあり、子供用の二段ベッドに何枚も布で覆いや仕切りを作って、隠れ家風に工夫したものだった。


 それ以来ミミはいつもここにいて、覆いを一枚だけ取ってテレビを見たり、あとはその中でうさしゃんと一緒におままごとをするのが一番のお気に入りだった。また、ランディの友人のネイサンや兄のロンも、「ノック、ノック。入ってもいいですか?」と一度断ってからでなければ入室することは許されなかった。また、ミミが「今日はだめれす」と言っても、重ねて「どうかお願いしますううっ」と哀れっぽく頼むと、どうやら入れてもらえるといったルールが存在するようだった。


 そのようなわけで、イーサンはミミとこの秘密基地で遊ぶ傍ら、幼稚園でどうだったのかと聞き出し、そして安心した。「幼稚園のほうはどうだった?」と聞くと、「まあまあ楽しいところですね、ようちえんというところは」などと、何故か大人ぶって答えるので、イーサンは吹きだしてしまったほどである。


 このあと、イーサンはダイニングのほうへ戻ると、「まあまあ楽しいところだとさ。幼稚園というところは」とミミの言ったことをそのまま伝えて、マリーのことを安心させた。マリーもその後、「ノック、ノック。おやつの時間ですよ」とミミの秘密基地を訪ね、そこで彼女と一緒にお茶をしながら、幼稚園でどんなことをして遊んだかといったことなどを、詳しく教えてもらったのだった。


「へええ。そうなのー。やさしい先生でよかったわね、ミミちゃん」


「ううん。でもね、その人、おねえさんほどやさしくないの。でもまあまあいい人なの。あと、まわりにいる子たちもまあまあ良い子たちなの。だからね、ミミ、まあまあ楽しかったの!!」


 子供部屋の前を通りかかった時に、イーサンはそんな会話を聞いてしまい、喉の奥で笑いを堪えながら書斎へ行った。そしてそこで、ニーチェやカント、キルケゴールといったそうそうたる哲学者たちの書いた本を骨折って読み、それから課題のレポートのほうに取り組んだというわけだった。


 だがこの時、イーサンはこの作業がさしてつらくなかった。もともと哲学が好きだというせいもあるが、時々思考のほうがマリーやミミのことに流れ、それからまた「いかんいかん」と本の内容に集中し――ということを繰り返しているうちに、あっという間に夕方だった。この間一度、マリーがまるで子供に聞くように「おやつのほう、どうしますか?こっちに持ってきます?」と聞いたので、そのことでもイーサンの機嫌はさらに良くなっていたといえるだろう。


 彼はマリーにおやつを持ってきてもらい、さらに読書を続けた。そして夕方になってまたマリーが夕食のことを告げにくると、今度は下の食堂のほうに下りていった。そして、弟たちや妹たちが顔を揃えているのを見、彼らの新しくはじまったばかりの学校生活がいかなるものかを聞き、心から安心した。


 まず、ランディは五学年から六学年へと上がったわけだが、もしあのままネイサンと仲違いしたままだったとしたら、おそらく今もとても憂鬱だったことだろう。けれど、前と同じクラスの持ち上がりなため、他の同級生がどんな夏休みを過ごしたかを聞いたあとは、大体のところまた元の生活が戻ってきた……といったところだった。


 ロンはクラス替えがあって、「また友達ができなかったらどうしよう」、「せめても前のクラスで仲の良かった誰かと一緒でありますように」と必死に願っていたわけだったが、その望みが叶ってか、ひとりだけ前と同じクラスで仲の良かったショーン・ウォーレンと一緒だった。座席のほうも割と近かったため、お互い他に友達のいない状況で励ましあうことになったという。


「まあ、ひとりでも仲のいい奴がいれば、あとのことは大体なんとかなるだろう。だから、やっぱりおまえも私立校に行くことを真面目に考えろ。ランディはあと一年しかないからなんとも言えないがな……ロン、おまえの成績ならあと二年真剣に勉強すればどうにかなる。公立校はセカンドチョイスだと思っておいたほうがいいぞ。私立校のほうが公立校より人口密度も減るし、学力的にも大体同じくらいの子が集まってくるから、人間関係の摩擦に悩む率もその分低下するといったところだ」


「う~ん。ほら、教会学校で一緒になるケイレブがさ、ネイサンが受験するのと同じ私立を目指してるんだって。だから、僕も一緒に受験してみようかなとは思ってる。ただ、今のぼくの成績だとちょっと難しいんじゃないかなと思って」


 ロンはポトフを食べながら溜息を着いた。ショーンと同じクラスで嬉しかったロンではあったが、実をいうとそれ以外にも少し悩みがないわけでもなかった。同じクラスにジョン・テイラーという名前の、小学五年生とは思えないくらい体格のいい男の子がいる。今のところロンは彼に目をつけられているわけではなかったが、なんとなく嫌な予感がした。テイラーに目をつけられた結果、ショーンも自分から離れていくだろう……といったことではなく、クラス内のうちの誰かが常に彼の犠牲として捧げられることになるのではないかという、そうした漠然とした不安を今から感じるのが、とても嫌だった。


 けれど、この時のロンはまだ(当たり前だが)そこまで兄に説明できるくらいの言語能力が発達してなく、このことはまだ誰にも話せなかった。


 一方、ココは新しいクラスになるなり、誰も顔見知りがいなかったため、自分のほうで一目見て「イケてる」と感じる子に、積極的に話しかけた。するとやはりその子もファッションが好きで、すでにメイク道具も一揃い親に買ってもらって持っているという。その女の子――ケイティ・オーモンドとすっかり意気投合したココは、明日の放課後にでも自分がこれまでに作った<ファッション・ブック>を見てもらうつもりでいる。


 また他に、ケイティとココのことを憧れの目で見ているような子が寄ってきたため、こうして同じ傾向を持つ仲間同士がココにはクラスに出来ていたわけだった。


「おねえさん、明日の放課後、新しいクラスで仲良しになった子が五人遊びに来るから、おやつのほうとびきり美味しいの、お願いね。器は青い薔薇シリーズのを使って。あと、おねえさんはせめても少しくらいピッとした格好してね。紺色の小花模様のワンピースがいいわ。それで、部屋におやつを持って来る時にはいつものダサいエプロンは忘れずに外してね。絶対よ」


「わかったわ。エレベーターの中とか、階段とか廊下のところとか――みんな綺麗にしておくわね。まあ、ココちゃんのお友達は『なんかパッしない人』って思うでしょうけど、こればっかりはねえ」


 マリーがほうと溜息を着いていると、「そんなことないもん!おねえさんはきれいだもん!!」というココの援護射撃が入る。ランディは「ダサいエプロンってなんだよ。あの向日葵模様のエプロンは俺がプレゼントしたんだい」とぶつくさ文句を言い、ロンはジョン・テイラーのことで溜息を着き……という、マクフィールド家のこの日の食卓はそんな感じだったかもしれない。


 五人以上も人間がいて、それぞれ外で社会生活を営んでいる以上、表面には見えない色々なことがあるのが普通だろうとイーサンは思っている。だが、たとえばロンは深刻な悩みがあれば食欲が落ちる傾向にあることから――よく見ていればそうした悩みのサインというのは必ず出るはずだと思っていたため、「まあ今のところ問題はないようだな」と、見てとっていたわけである。


 イーサンは本の読みすぎでちかちかする目をこすりつつ、レポートのほうを途中まで書き、そのあとは肩を揉んで一休みすることにした。そしてすっかり冷えた食後のコーヒーの残りを片手に、窓の外の暗闇を眺めやる。暗闇、などといっても、庭のあちこちには小さなライトがあるため、全体としてそんなに暗いというほどではない。


 だが、イーサンは窓ガラスに映る自分の姿を見つめて、(これが幸せ、ということだろうか)と考えた。


 キャサリンはイーサンが大学院へ進むといってもそれはMBA(経営学修士)の学位を取得するためではないと知って、実は内心失望したようだと彼は見てとっていた。「哲学科!?なんでよ」と、険しい顔で言ったことからも、そのことは窺い知れる。


 もともと、イーサンは経営学になどまるで興味はなかった。にも関わらず何故ユトレイシア大学の経済学部に四年も通っていたかといえば、他の学部に比べて受験時に比較的倍率が低かったこと、また、父親の財産を受け継いだ時に――その莫大な金の使い方や使い道についてどうしていいかわからないだろうと思った、ということがあった。


 また、今も父が生きていれば、自分の譲った資産でどの程度のことを息子がやるかと目を光らせることもわかっているため、『おまえみたいなクズよりも、もっといいビジネスをして驚かせてやる』だのいうくだらない動機から、むしろ借金にまみれていたという可能性もある。だが、父親が死んだことでそのようなプレッシャーもなくなり、イーサンは<自分が本当にやりたいことは何か>ということに立ち返っていたわけである。


 人にはずっと隠してきたが、イーサンは昔から哲学が好きだった。ロイヤルウッド校時代、イーサンは理数系の科目の他に歴史と哲学が特に好きだった。いや、数学や物理については得意だったというだけで、それほど深い愛着を抱いていたわけではない。その点、歴史と哲学は違った。だが、このふたつについては図書室へ行き、<個人の趣味>としてそれらの本を読み、思策に耽っていればそれで十分だった。


 大学在学中の四年で、元は大して好きでもない「経営学」について学ぶことに、イーサンはすでに辟易していたのだ。だが、父親が死んだことで経営学修士号を取る理由も自分としては見当たらなくなったと思い、さりとて莫大な資産を元に何か商売がしたいといった望みもなく、とりあえずイーサンが思いついたのは「大学院へ逃げこむ」ということだった。


 そして今、もともと専攻したかった哲学の勉強も出来、他の弟妹たちも子供なりに落ち着いた生活を送り、将来的にこのまま一緒に住むといった形で結婚したい女性もおり――イーサンは幸せなはずだった。だが、彼はやはり何かが物足りなかった。


(人間ってのはまったく、贅沢に出来上がってるもんだな。俺はマリーと寝たいと思ってる。そしてこの渇望が満たされない限りは……俺はおそらく絶対に満足できない。だが、そこまで持っていくにはまず順序を踏んで、自分は結婚するにそう悪くない物件であることをアピールし、それから告白、というよりも、その部分は出来れば抜いて「なんとなくそういう雰囲気になる」というのが理想だ。今だってもちろん、俺は確かに腹八分目くらいには幸福だ。だが、あの女と寝ない限り、俺は自分が100%以上幸せだといったようには、絶対に感じられないだろう)


 そのことを思うと、イーサンは実際頭がくらくらした。彼はもともとモテる体質なため、自分に気のある女性のことはその目つきや顔つき、あるいは雰囲気ですぐにわかる。そしてまずは向こうがやって来るのを待ち、『ああ、やっぱりな。思ったとおりだ』という確約が取れてから、自分でも何かアクションを起こす――といったような恋愛しか、イーサンはこれまでの人生でしたことがない。


 ゆえに、暫くはこのじれったいような欲求不満の状態が続くと彼にもわかっていた。自分がもし仮に今準備が十分整ってない段階で行動を起こした場合……マリー自身が「やむをえない」と感じて出ていくか、あるいはイーサン自身がこの屋敷から出ていき、今享受している幸福の輪の中から弾きだされることになるだろう。


 そしてこうしたことを考え合わせた場合、自分が欲望を抑えて我慢するしかないのだろうとイーサンは思った。今のマクフィールド家は過去にこれほど家庭的で幸福に満ちていたことはないというほど、バランスが取れて安定していた。それを家長であるイーサン自身が壊すなど、あってはならないことだった。




 >>続く。






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