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猫になりたいな  作者: 夏樹聡
第2章「二人の関わり」
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第2章「二人の関わり」2

それからおよそ2週間後の土曜日。僕は貯めていたバイト代で買いまくったスピッツのアルバムを聴きながら部屋でゴロゴロしていた。すると、電話が鳴った。画面を見ると、「双葉さん」の文字。

「もしもし」

「あ、もしもし!?優くん聞いて聞いて!」

ずいぶんと興奮している。どうしたんだろう。

「どうしたんですか?」

「今日ね、車が納車されたの!」

「え?車?」

「そう!私初めて車買ったんだ。で!」

「は、はい」

「明日一緒にドライブがてら、海行かない!?」

「え、海ですか?」

もうすぐ7月になる。梅雨も明けたし、海に行くにはちょうどいいだろう。

「いいですよ。行きましょう!」

「やった!じゃあ明日の1時、駅の駐車場で待ち合わせでいい?」

「はい、双葉さんの車は?」

「青い色で、ナンバーは「4690」。車の前で待ってるから」

「わかりました。じゃあまた明日」

「うん。またね」

双葉さんと海……僕は生まれてこのかた海に行ったことがない。だからテレビなどでしか見たことがないが、でも双葉さんとドライブするのは楽しそうだ。それじゃあ早速水着を買いに行かないと……。


翌日、午後1時。駅の駐車場に着いた。僕は「4690」ナンバーの青い車を探した。車が多くてなかなか見つからない。しかしその時、「優くーん!」双葉さんの声がした。声のした方へ向くと、青い車の前に立つ双葉さんの姿があった。「こっちこっちー!」双葉さんがそう叫びながら手招きをする。僕は小走りで双葉さんのもとへ向かった。

「どう?この車。いいでしょ」

「そうですね」

「じゃあ行こっか」

僕と双葉さんは車に乗った。

双葉さんはエンジンをかけながら言った。

「ちなみになんでナンバーが「4690」かわかる?」

「いや、わからないです。なんか意味があるんですか?」

「「シロクマ」の語呂合わせなの。シロクマって曲、スピッツにあるでしょ?私あの曲大好きなの」

双葉さんは車を発進させた。

「あー、僕もあの曲好きです」

「だよねー!あと他にも「8823」で「ハヤブサ」にしようって案もあったんだけど、ハヤブサよりシロクマの方が曲としては好きだったから「4690」にしたの」

「なるほど」

「じゃあ海に出発!あ、そうだ。音楽かけよ」

双葉さんは車のオーディオのスイッチをオンにした。

すると、スピッツの「ヒバリのこころ」が流れ出したが、すぐに、

「ここは青い車じゃないとね」

曲はスピッツの「青い車」に変わった。

「思い切ってシングルコレクション全部買っちゃったんだ」

そう言って双葉さんは笑った。

「そうなんですか。実は僕も最近スピッツのアルバムいっぱい買ったんですよ」

「そうなんだ……羨ましいなぁ。私お金無いからあんまり買えないんだよね……」

僕は冗談気味に言った。

「双葉さんって働いてないんですか?」

すると、双葉さんは途端に暗い表情になった。

「その話はちょっと……ごめんね」

「あ、す、すみません」

僕が謝ると、双葉さんは再び明るい表情になった。

「まぁ、今日は思い切り楽しもうよ!優くん」

「あ、はい。そうですね」

そして駅前から1時間ほどかけ、海に到着した。道中では他愛もない話で盛り上がり、それだけで楽しかった。僕は着替えを済ませ、双葉さんが来るのを待った。

「おまたせ」

背後から声が聞こえた。振り向くと、そこには白いビキニ姿の双葉さんがいた。おぉ……。

「どう?似合ってる?」

「はい、すごいセクシ……かわいいと思います」

「ふふっ、ありがとう。じゃあ一緒に泳ご!」

「はい!」

それから僕らは海で遊んだ。泳いだり、水をかけあったり、海の家でかき氷を買って一緒に食べたりした。

そして、気づけば夕方になっていた。

僕と双葉さんは海を眺めながら砂場に座った。

「今日は楽しかったね」

「そうですね」

「かき氷、おいしかったね」

「はい」

……当たり前だけど、なんだか双葉さんのビキニ姿は見慣れないから直視できない。そんなことを考えていると、双葉さんの口から思わぬ言葉が飛び出した。

「どうせ死ぬなら楽に死にたいな……」

え……?死ぬ……?

そのとき、双葉さんの目は光が入っていないように見えた。

「あの、双葉さん?どうしたんですか?」

しかし、すぐいつもの双葉さんに戻った。

「え?あ、ううん、ただの独り言。さ、帰ろ!」

ただの独り言と言っても……。「死」という単語が何の前触れもなく出てくると心配になる。しかし、その後何度もそのことについて話しても、「大丈夫」としか言ってくれなかった。

その後、特に会話もなく、駅前に到着した。

「今日は……楽しかった。また一緒に遊んでくれる?」

「もちろん。いつでもお付き合いします」

「ありがとう。じゃあ、家まで送っていくよ」

「え?いいんですか?僕はここからで大丈夫ですけど」

「いいのいいの。それで、家はどこ?」

正直僕も久々にたくさん遊んで疲れていたので、送ってくれるのはありがたかった。

「えっと、じゃあ案内します」

駅から家までは歩いて20分ほどなので、車だと4、5分ほどで着いた。

「じゃあ、またね」

「はい。おやすみなさい」

「おやすみ!」

双葉さんの車は去っていった。しかし、

やっぱり「どうせ死ぬなら楽に死にたいな」という言葉が脳に焼き付いて離れない。

僕は心配だったが、考えても無駄だと思い、家に帰ることにした。

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