ある鳥のお話
この「ある鳥のお話」はサークル「ちーむ_しぷすくろっく」にshipu名義で出したお話CD「うちのNightcap Vol.4」(C93で出しました)の3トラックの内容とほぼ同内容となっております。
(文章としては未発表のため、こちらで文章の発表を行わせていただきました)
その鳥は、飛ぶ事が好きだった。
食べる事より飛ぶ事を選ぶ鳥は周りから変な奴だと思われていた。
けれどその鳥は気にしない。ただただ飛んだ。
小さなころは、他の兄弟達と一緒だった。
一緒にご飯を食べて、一緒に大きくなって。
体も大きくなって、空を飛ぶ練習をし始めた。
初めてのときは全然うまく飛べなくて、すぐに地面におりてしまった。
その、ほんの少し空にいただけだけど。
空を飛ぶ事はとても楽しかった。
何度も何度も飛ぼうとして、だんだんと飛べるようになってきた。
飛べるようになったら、ただ楽しくて、ずっと飛び回っていた。
ご飯を食べるために空を飛ぶ。それが皆の普通だった。
でも。
その鳥は、空を飛ぶためにご飯を食べる。それがその鳥の普通だった。
晴れの日も雨の日も。
風が強く吹く日、風が無い日も飛んだ。
どこまでも、遠くへ。遠くへと飛んだ。
その鳥は、遠くへ行きたいわけじゃない。
ただ飛びたいから飛んでいたら、遠くへと行っただけだった。
その鳥は、夜行性の鳥ではなかったので、夜になると辺りが見えなかった。
でもその鳥は、夜でも飛んでいた。
飛びたくて飛んでいたら朝から夜になっていたから。
見えないけど、全身に受ける風でなんとなくわかる、とその鳥は思っていた。
そのまま夜になっても飛んでいたら、やがてまた朝になった。
その鳥は、飛ぶ事が好きだった。
全身に受ける風の感触や、お日様の温もり、雨の冷たさ。
流れていく景色に、新しく出てくる景色。
前に向かって飛ぼうとするときの体の使い方。
一つ一つあげていけばきりがない。
これら全部が好きだった。
青い空に一匹の鳥が飛んでいく。
どこまで行くのか。どこまでも行くのか。
今日もその鳥は飛んでいく。




