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4話 闇ヒジキ

遅くなり申し訳ございません。

 傷の処置後、いまだに生乾きの状態だが貫頭衣を着て湖の水が流れて川になっている道を歩いて辺りの探索を開始する。


 川を右手に奥に伸びる洞窟は、ヒカリゴケの明かりで何とか歩くには大丈夫と言ったぐらいの光量を保っている。


 もしもの為の食糧としてほうれん草モドキ改め、薬草を球根付きで5本ほど引っこ抜いて持ってきた。薬草を左手に持ち、手ごろに持てる石を仮の武器として右手に持ち、ゆっくり慎重に足音が経たないように進んでいく。


 水の流れる音が足音を消してくれるかもしてないが、同時にその音で敵の出す音に気付かずエンカウントして殺されるなんて可能性があるため信条にならざるを得ない。


 道は二人ほどが並んで歩ける程度には整っているので歩きやすくなっているが、小さな石が転がっているのでやはり素足で歩くには辛く痛い。

 湖からくねる道を200メートル程歩いていると左手に枝分かれした道が表れた。


「まだ川の続く先まで進めるけど、一旦こちらを探索してみるか」


 左手の道は川のある洞窟の道よりは多少狭く生息しているヒカリゴケも少ない。その道を少し進むと、大きな道が前に現れた。

 低い位置に身をかがめ、耳を澄まし音がしないことを確認し、角から慎重に顔を出す。こちらの道は大人が5人並んで歩いても問題がないくらいに広く、ヒカリゴケも多く生息していて来た道よりは見やすくなっていた。

 ゆっくりと枝道から出て確認するが、光量以外は特に違いの無い大きい道という感想しか出てこなかった。


「こっちがメインの道っとことなんだろうか? って!」


 出てきた小道を見ると光の差の加減と似たような岩肌で風景に溶け込み、保護色でそこには枝分かれする道が無いように見えた。

 壁に近寄り触ってみるとちゃんと空間がありに道の存在を確認できる。


「一瞬ひやりとしたわ・・・・・・」


 ある意味隠し通路と言う事なのだろう。

 大きい道からだと岩の角度でヒカリゴケが隠れているし、入り口付近は確かに苔もないのでよほど注意していてもこれは見逃してしまうだろう。

 罠などと違ったダンジョンの怖さというものを早くも体験した気分だ。


「水の音もここまでは聞こえないようだし、避難場所としての安全度は気持ち上がったかな?」


 ダンジョン内なので完全に安全とは言えないだろうが、もしかしたら安全地帯なんて場所がちゃんとあるかもしれない。この湖への道がそのうちの1つだとありがたいが、奥に薬草が群生していることを考えれば知ってる者は知っていて取りに来る可能性があるだろう。であればあの地底湖を拠点にするにはやはり不安になる。

 だが、あまり湖から離れて戻れなくなったりするのは生命線の薬草が手に入らなくなるのは良くない。何とか敵に見つからない場所を探さないとな。


「よし、戻って奥の道を探索するか」


 隠し通路のある場所を手探りで進むと、光の無い場所にわさっと何か触れる感触があった。

 触れた瞬間、背筋を悪寒が這い回る感じがし、慌てて手を壁から放し距離を取る。


「いたっ!」 

 

 慌てた勢いで反対の壁にぶつかってしまう。そしてその壁でも先ほどの不思議な感触がする場所に触れた。


「ひぃぃぃぃ!」


 這い回る悪寒にたまらず声を上げ、慌てて隠し通路を戻った。

 通路から飛び出し、川に落ちかけるが何とか踏みとどまり息をつく。


「ななな、なんだアレ!?」


 体験したことのない感触と不快感に混乱が収まらず、鳥肌の立つ二の腕を両手で察すった。

 すると、先ほどとは違うが、変な感じがするのでさすっていた手を見ると、人差し指の先が黒い靄のかかったモノが纏わりついていた。


「ギャァァァ! ナニコレ!?」


 腕を振っても靄は尾を引いて指についてくる。たまらず川に手を突っ込み洗ってみると、靄は薄れ汚れが落ちる様に消えてなくなった。

 

「マジで何なの? 異世界怖いよぉ・・・・・・」


 涙目をぬぐい荒くなった息を整え、改めて靄の纏っていた指を見てみると、爪の中に黒いものが挟まっていた。


「こ、これが原因か?」


 爪に挟まった黒い物体をほじり出し、人差し指の上に置いて眺める。水にぬれたそれは細い植物のように思える。試しに親指と人差し指で挟んですり潰してみると、柔らかく簡単に潰せてしまった。


「なんだこれ? まあ変なモンスターやトラップではなかっただけ良かったが・・・・・・」


 指でこねていると黒いモノから先ほどの靄の様なものが徐々に出てきた。


「うおっ!」


 驚いて手を振ると今度は簡単に外れて飛んでいき、壁のヒカリゴケがあるところに落ちた。黒いモノからは先ほどよりは薄い靄が出てビー玉ぐらいのサイズの丸い状態で落ち着いた。

 恐る恐る近づいて見てみると、靄玉がある部分のヒカリゴケから光が弱くなっているのに気付いた。


「この靄って光を吸ってるって事なのか?」


 幾分検証材料は足りないが、触っても悪寒と不快感があっただけで触れていなければ今のところは異常を感じない。


「触れたら感じる異常って怖いけどな・・・・・・これってもしかして魔力とかマナとかがあって、それに影響を及ぼしてるとかかな?」


 こんな不思議植物? はそう思うしか納得できないし、ファンタジーの異世界だからそれぐらいあっても不思議じゃない。

 そうなるとほうれん草モドキの薬草の回復力も魔力とか関係していそうだ。


「まぁ普通に考えてあの傷の回復速度は薬効だけじゃ説明付かないしな。てかこれはヒカリゴケの反対の効果だからヤミゴケって感じなのかな?」


 見た目はヒジキみたいだけど。

 何か役に立つかもしれないから確保はしておいた方がいいだろうが、


「この悪寒がなんともしがたいんだよなぁ」


 ためらいつつ壁に近づき、ヤミゴケ改め闇ヒジキのあるであろう靄の場所に手を突っ込む。

 瞬間、えも言われぬ悪寒が腕を伝ってくる。


「ぁ゛ぁ゛ぁ゛あ゛ぁ゛っ」


 その悪寒に耐えながら壁に近い場所から引っこ抜いた。闇ヒジキを握っている手の辺りから靄が広がり、腕の半分が靄に覆われていたが、それだけでなく段々と這い登ってくるように靄が覆ってきて、悪寒もそれに合わせて強くなってくる。


 出来るだけ身体から靄を遠ざける様に腕を伸ばし、その足で川まで戻り、闇ヒジキを川に浸けた。

 すると闇ヒジキから出ていた靄はなりを潜め、感じていた悪寒も収まった。

 川から闇ヒジキを揚げ地面に置くと、感じた悪寒を振り払うように身もだえながら腕に立った鳥肌を摩った。


「闇ヒジキの採取辛すぎるだろっ!」


 川で洗った闇ヒジキは靄の発生が抑えられていて持って帰ることは可能そうだ。検証もしたいのでもう少し採取したいところだが、先ほどの感覚をもう一度味わうのは気が進まない。


「はぁ、こうなったら服で包むか・・・・・・」


 せっかく乾いてきた一張羅を脱ぎ、川の水に浸し、それを手袋代わりにして闇ヒジキが群生している所に突っ込む。

 先ほどと違って、這い回る悪寒は抑えられているが、漂っている靄が肌に触れると不快感を覚える。

 同じ場所で採取してこの通路の隠蔽効果が落ちないように採取場所を変更していく。

 バレーボールほどの球になるぐらい採取して貫頭衣の端を軽く結び、闇ヒジキを中に詰め、最後に持ってきていたほうれん草モドキを一番上に突っ込んで抱えて持って帰る。バレーボール程とは言っても濡れた布に水分を含んだ植物、せっかくマシになった体温が奪われるし、抱えて運ぶにはこの細腕では200メートルの距離ももっと遠く感じる程だ。


「でも、今は何でも試してみるしかないよな」


 水と食べれるものだけは何とか確保は出来ているが、それだけでしかない原状はまだ生きていくには辛すぎる。

 この地底湖も完全に安全とは言えないし、早く武器になるものを確保したい。


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