3話 ほうれん草モドキ
すみません、プロップなしの手探りで、超亀更新です・・・・・・
「取り合えずこのほうれん草モドキか」
取り落していたほうれん草モドキを拾い上げる。
「毒じゃないか確認しないとな」
ほうれん草モドキを持ち湖の水で洗い分けていく。葉っぱの部分は手でちぎって残された短い茎とそしてゆり根の様な球根部分はねじ切るように取り分けた。
落としたナイフがあれば良かったのだが、いまさらない物ねだりは出来ない。
湖の畔近くで平べったい感じの大きめの石に水をかけ洗い流し、葉っぱ部分を2,3枚重ねて洗った握り拳大の丸目の石ですり潰してみる。
葉っぱはそれほど強い繊維質がないのか簡単にすり潰されていく。
「葉っぱの柔らかさとかは本当にほうれん草みたいだな」
すり潰すと葉っぱよりは少し薄い色の青臭い汁が出てくる。
「色が青いって、これこそ本当に青汁だな」
そんな下らないことを口走りながら、ペーストに近い状態まですり潰してみた。
まずは汁を左手の子指で触ってみる。もちろん何か変な刺激でもあったらすぐに洗い流せるように水辺の近くでだ。幸いステータスで状態の変化も確認できるので開いたままにしておく。
1分、2分と時間を置いてみるが特に何か刺激があるわけではなくステータスにも変化はなかった。しいて言うなら汁を触った小指が若干色が移って薄青色になっているぐらいだ。
「まさか染料ってだけの用途しかないとかは勘弁してほしいんだが・・・・・・」
しばし水につけて擦って洗っていると色もさらに薄くなってきたので色が落ちなくなることは無さそうだ。
次はペーストになった葉を右手で摘まんで左手の甲に塗ってみる。先ほどより長く試してみるため五分ほど数えて洗い流してみる。こちらも若干色が移る以外の変化はなかった。
他に茎をすり潰して同様に試してみたり、ゆり根を数枚剥がしてそちらも同様に試してみるが変化はなかった。
一応パターンを変え混ぜて試したが結果は同じだった。
「簡単なパッチテストは問題なかったようだけど、すぐに口に入れるのはまださすがになぁ」
そう思って葉っぱペーストを見ていると次は傷口に塗ってみることにした。
「まぁ青臭い汁だから沁みそうな気はするけど、より変化は分かりやすそうかもしれないしな」
もし何かあったら問題なので歩けなくなる足は論外だ。それに体の中心に近いところも除外される。そうなると利き腕では無い方の末端の傷となると腕の擦り傷部分になる。
「肌に触れるだけでは効果のない毒だったたら・・・・・・」
もしそうだったらすぐに水で洗って口で少しでも吸い出す他ないと思い、覚悟を決めて葉っぱペーストの方を右手の小指の先に少しつけ、傷口に塗ってみる。
「うっ!」
塗った瞬間、鋭い痛みが走り、傷口の患部が熱くなってくる感じがした。
瞬間的にこれはマズイと思い、すぐさま湖に腕を突っ込み葉っぱペーストをざっと洗い流す。
傷口は熱を発するように、どくっ、どくっ、と脈打つように感じる。
毒が回らない様に患部寄り心臓側を握って抑え、思いっきり吸い出すように口を付けた。
吸って、吐き、吸って、吐きを2度繰り返すうちに脈打つ感じは治まってきた。
湖に上半身だけ突っ込み、口に残っている成分をゆすぐ為に顔を見つの中に入れる。
ある程度うがいをし、舌や口内に痛みや痺れなどの異常がないことを確認して湖から顔を上げた。
「あ、焦った・・・・・・本当に焦った」
ずっと顔を水に浸けていたせいで乱れる呼吸を整える。
恐る恐る葉っぱペーストを塗り付けた傷口を確認すると、そこには真新しい皮膚が貼られ傷口はふさがっていた。
「は? これ、もしかして俗に言う薬草ってやつか?」
そうとしか考えられない結果に驚きくが、これは幸先がよくなってきたと喜ぶ気持ちの方が強い。
他の傷口で葉っぱペーストを試してみると、沁みて痛むが傷口が活性され脈打つ感覚があり、そして次第に治まってくる。葉っぱベースとを塗った傷口を洗い流すと、そこには先ほどよりも綺麗に、いや、傷などなかったかのように治っていた。
「こいつはすごい! 軽傷ぐらいならこれで解決だ!」
さっそく他の傷にもこの傷薬を試していく。まず葉っぱ部分をすり潰したときに出る汁でも効果はあるがペーストほどの効果はなかった。茎の汁も同様で効果は同じぐらいで、ペーストにしたものは汁と同様の結果になった。ゆり根の方はむしろ治癒の効果はなくペーストも同様だった。このほうれん草モドキの薬効成分は葉っぱに集中しているようだ。だが、葉っぱペーストとゆり根ペーストを混ぜたものは何故か葉っぱペーストより効果がある感じがした。たぶん各部位ごとに使い道が違う素材なのだろう。
一通り試して体の治療を完了する。打ち身で青紫になっている所にはペーストを塗り、葉っぱをかぶせ、シップのように張ってみる。それだけではすぐに落ちてしますので、茎の繊維質よ残すようにつぶし、結って簡易の紐みたいにして固定した。
じわりじわりと効果を発揮しているのか、傷口に直接塗る程の痛みなどはないが、活性しているのか張った部分が温かくなっているように感じる。
「体は一通りこれで大丈夫だな。じゃあ次は食ってみるか」
すり潰している時から大体匂いで味の創造はつくが、まずは葉っぱをそのまま齧ってみる。
「あ゛ぁ゛、やっぱ苦い・・・・・・ゴーヤレベルじゃんか」
食感としては少し硬めのほうれん草を齧っている気分だ。味はゴーヤより苦く感じる。
茎に関してはさらに固く繊維質が多い感じで、味は葉っぱより水分が多く、苦みは少しマシだがすっぱさも感じる。
最後にゆり根を剥がして食べてみる。
シャクッと小気味いい食感で苦くも酸っぱくもない。むしろほのかな甘みを感じ、癖もない。
「おお! これはまだ食べれる方だな!」
生のジャガイモみたいな感じだが、ジャガイモのでんぷん質のざらざらした感じはなく程よい食感だ。火を通して食べたら本当においしそうだ。
「これで当面の食糧事情と傷薬関係は何とかなったな。と言っても持って運べるものがないからどうするかだが・・・・・・」
当面はここに隠れ住んで辺りの地理状況の把握と、レベルを上げることを優先させなきゃいけないな。
その為にもまずは安全の確認と確保を優先するしかない。