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2話 ステータス

「鑑定!」 


 目の前にほうれん草モドキを突き出し、鑑定と叫んだ格好で止まる。

 別に叫ぶ必要などは無いのだろうが、無意味に体に力が入り、無意識にこれを鑑定してくださいと言わんばかりに腕を突き出し叫んでいた。


 しかし、何も変化はなく、何も表示されることはなかった。


「…………」


 寒々しい気持ちになり、誰も見ていないのだが恥ずかしくなってくる。心なしかさらに痛みが増してきた気さえもしてきた。


「はぁ、さすがにそんな上手くいく訳ないか……どんだけハードモードなんだよこれ」


 低層に出現したレアポップとか、ホント黒曜石のナイフ装備ってだけなのか? けどこんな体じゃまともに扱えないし戦えないだろうし、俺にとってのレアじゃなくあいつ等にとってのレアってことなんだろう。

 肩を落とし、ほうれん草モドキも投げ落とし頭を抱える。


「もう本当に嫌になるわ……せめてステータスでも見れればなぁ」


 そう思った瞬間、眼前に半透明のディスプレイの様なものが表示された。


名前:なし

レベル:1

種族:ヒューマン族

クラス:逃亡孤児奴隷幼体

EXP(経験値):1/20

SPスキルポイント:0

状態 :軽傷、打撲、思考制限(レベル3)

HP(体力) :6/10

MP(魔力) :1/1

STR(力) :2

VIT(生命力) :5

DEX(器用さ) :1

INT(知力) :6

LUK(幸運値) :0

装備

・なし

所属:ゴルグダ王国第11ダンジョン

スキル

・飢餓耐性レベル1

称号

・異界の魂

・イレギュラーモンスター(仮)


 ガクリとひざが落ちた。


「酷い……これは酷いだろ」


 この世界に普通は見えない数値がステータスとして見えるとしたら今までの状況に納得できる部分ではあるが、


「よりによって……幸運値0って何だよ……」


 スキルの飢餓耐性はクラスから察することはできるが、(いや、そこにも物申したいのではあるが)せめてもう一つ、神の力を打ち消す手でもあればつり合いは取れるのに……

 しかし仮に今あったとして状況がよくなる好転材料にはなりえないのだが。


 異世界でモンスターは存在するけど、それ以外はノーファンタジーと言うようなことは無いのは、このステータスから判断はできる。


 しかし、それがいい方に転ぶと言う事ではない。MAX値は分からないが、明らかに自身のステータスが低いことだけは判断がつく。


「欠片もチートの匂いがしない……不幸だ」


 一人になり、一応の脅威は去って冗談を言えるぐらいには気持に余裕ができたのだが、この現在のステータスを見る限り数値としては低い。

 知力だけが他の項目より高いのは魂が現代日本人の魂だからと言う事なのだろう。


 頭がよかったわけではないと自身でも思うが、日本人の精神なのだから知力ぐらいは高くてもいいのでは思ってしまう。 このステータスがどのような影響を及ぼすのかは分からないが、生き抜くためにはレベルを上げてステータスを上げるしか方法はないだろう。


 ただネット小説読んでよく思うのが、基本英語のカタカナ表記。いや、読者に分かりやすく伝えるという意味ではそうするしかないのだろうが、実際に直面すると違和感を感じるな。


「まあ読めなくて何も分からないよりはいいけど、一番親しんだ言語で表示されるってこの何だろうな。この際どっちでもいいけど。で、まず名前が無いのはこの際いいとして、種族はヒューマンで、逃亡孤児奴隷幼体……孤児で奴隷に落とされて、しかし運良く逃げ出すことが出来るって程度のステータスってことなのか? 幸運値0で逃げ出せる運って……相手の奴隷商とか絶対幸運値マイナスとしか思えないな」


 俺ははダンジョンでポップしたから生きて逃げ出すことが出来ているだけではなかろうか? まあ最初のナイフ装備状態でやっとと言ったところなのだろうが。

 

「しかも幼体って、虫かよ……馬鹿にされてるようにしか思えんな。それにイレギュラーモンスター(仮)って……」


 ゴブリンどもの言うように俺はレアとかの珍しいタイプのだろうけど、ユニークですらなくイレギュラーモンスターだったみたいだ。仮とはどういうことだ? ナイフを失ったからか? それとも記憶の問題なのか?

 でも記憶は称号の異界の魂の方だと思うんだが……いずれにせよこのステータスの問題点は状態の思考制限(レベル3)って所だな。いったい何を制限されてるのか見当もつかないが、あまりい状態とは言えない。


「こいつは何が何でも取り除かないと後が怖いやつだな……」

 

 だが、どうすれば取り除けるのか見当もつかない。


「そもそも何でこんなものが付いているんだ? 


 致命的なことが起こる前に何とかしたいが、今はどうすることもできないだろうとこの件は頭の片隅に追いやるしかない。

 

「で、この所属だけど、ゴルグダ王国第11ダンジョンってことは、まぁ王国と呼ばれるところにいて他にダンジョンが最低10か所は存在するってことなんだろうな」


 この情報って世間の認識で書かれているのか、造った者の命名で書かれているのか、ワールドレコード的ななんかから引っ張って来てるのかどれなんだろうか?

 ほんと、鑑定とかの上位のスキルとかあったら分かるんだろうなぁ。

 

 この予想も自身の現代でのオタク知識から来ているだけで、例え鑑定があったとしてもそこまで情報があるかは分からない。


「他のダンジョンでもヒューマン、人間がモンスターとして出るのか? それともダンジョンごとに違う種族が出るのか?」


 でもそれならあのゴブリンどもならエルフが出るダンジョンに行きそうな気はするが……ヒューマンが弱いから駆け出しには丁度いいってことなのか?

 ふざけた話ではあるが理には適っている。だがそれは逆に考えればチャンスではないだろうか? ここがダンジョンなので、たぶん下層に行くほどモンスターは強くなるし、いいお宝も出ると思う。そういったものを狙うやつらは低レベルの、新人育成に使う階層なんかに用はないだろうし、すぐに下層に向かうはずだ。


「この世界のダンジョンがダンジョンワープとかの行った階層にテレポートとか出来るタイプだったらもっと安全になるんだけどな。それかそんなのもない不人気ダンジョンとか。取り合えずは1番危ない1層から下りないといけないタイプって考えるしかないか」 

 上層の人気の無いようなところにいれば見つかる可能性は減るはずだ。この地底湖はそういう意味ではいつ訪れてもおかしくないと思うが、入ったばかりの上層ですぐに水を補給することはまずないと思う。というか思いたい。

 水はきれいだが、魚の姿はない。自身の食糧事情を鑑みれば切実に居て欲しいのだが、その場合ここにいることでさらに危険度が上がる。ここにいないだけで水の流れた先ではいるのかもしれないが、その場合水棲のモンスターがいる可能性も出てくるので嬉しくはない。


「簡単に倒せるモンスターだったらいいんだけど、こんな子供の体で倒せるモンスターの可能性なんてないに等しいよな」


 むしろモンスター冒険者が活動してるなら、マーマンとかサハギンとかの冒険者が出てきそうで恐ろしい。 

 

「あと、ここにあるものって言ったらこのほうれん草モドキぐらいだけど……」


 そう言いながら手に持った植物を見るのだった。 


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