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拾う神あり  作者: ジン
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拾われて優しさを知る

考え中

この日、俺は一つのものを失った。

再び仲間と共に歩める日を目指して日々を過ごしていたのに。だが、もうそれも叶わない。

——全て遅かったってことかよ。

そう思うと自然と涙が出た。

悪いのは自分ということは理解している。

しかし、選択肢はまだあったはずだ。それなのに、それを試さず必殺技を出してくるとは思わなかった。

「ああ、なんで俺の人生は——」

失敗ばかりなんだろう。

こんな道なら進む価値はない。けれど、そこを逸れる勇気もない。

ため息をつき空を見る。どんより曇っており今にも雨が降り出しそうだ。

今から帰ったら途中で濡れるだろうな。

雨に打たれれば心に溜まったモヤモヤが流せるかもしれない。

俺は自然と神社の石階段を降りていた。


神社を出てから少しすると案の定、雨が降ってきた。周囲を歩く人々は、傘を差しているが俺は持っていないのでずぶ濡れだ。

雨に打たれれば少しは気持ちが楽になるかと思ったが、全く楽にならない。これじゃあ、風邪引くだけだな。どこかで雨宿りしすることも考えたが、このまま帰ることにした。

家に着くと濡れた服を脱ぎ、黒のスエットに着替えた。

「あー、疲れた」呟きながらベッドに寝転ぶ。一人暮らしを始めて数年が過ぎた。最初は寂しかったがもう慣れた。が、やはり話し相手がいないのはつまらないので、そろそろ誰かと一緒に住みたいとも思っている。しかし、現在の俺にそんな存在はいない。もしかしたらこのままずっと一人暮らしが続く可能性もあるが、気楽に過ごせるならそれでもいい。

——お前もその内いい人見つかるって。

——そうだぜ! だからそんなにしょげるなよ!

——しょげてねーよ!

随分前の悪友たちとの飲み会が脳裏に浮かぶ。

ああ、あのときは楽しかった。何回もこの楽しい時間を経験できると思っていた。

「うっ……」

過去を思うと涙が溢れてくる。どんなに願っても戻ることのできないあの場所。もし、神さまが存在するのなら願いを叶えてくれ。

「俺の……願いは……」

神さまに願いながら俺は濡れた髪を放置したまま眠ってしまった。



どれくらい寝ていたのか、俺はスマートフォンの着信で目を覚ました。眠い目をこすりながら出る。

『ヤッホー、ミツル。今、暇?」

電話してきたのは悪友の一人、タカヤだった。相手が彼なら用件も察しがつく。

「今日は酒を飲む気分じゃないんだ悪いな」

『え!?』タカヤが驚く。『何で酒の誘いだって分かったんだ? てか、酒を飲む気分じゃないってどういうことだ? 風邪引いたのか?』

「風邪は引いてない。なんつーか、その、

あれだ……」

『あれってなんだよ?』

言うべきか黙っておくべきか、悩んだ末に俺は今の自分の状況をタカヤに告げた。

『……そうだったのか。そんなことになっていたのか』

タカヤの声のトーンが下がった。彼はそのトーンのまま言葉を続ける。

『すまねーな。そんなときに電話して。……ミツル、無理するなよ。何かあったら連絡していいからな。オレにできることは少ないかもしれないけど、力になるぜ!』

タカヤの優しさが心に染みる。あと一言、優しい言葉をかけられたら泣いてしまいそうだ。

「ありがとう、タカヤ。今度、何か奢るよ」

『約束だぜ! また三人で飲もう!』

彼の言葉に俺はそうだな、と返し少しだけ世間話をして通話を終えた。

タカヤと話したことにより気が晴れた。

やはり抱え込むより吐き出した方が楽になる。

ぐーう、とお腹が鳴った。そういえば、昼から何も食べていない。俺はスエットから黒のシャツ、黒のパンツに着替えて部屋を出た。目指すはコンビニだ。自宅のアパートからだと歩いて20分ほどかかるのだが——。途中、俺は一人の男とすれ違った。男は松葉杖をつき背中にはリュックを背負っている。コンビニのある方角から来ていたので、リュックの中身はおそらく食料品の類だろう。

男とすれ違い数歩進んだところで、俺はくるりと向きを変え、松葉杖男に声をかけた。

「あの、お荷物持ちましょうか?」

「え⁉︎ あ、ありがとうございます。でも、大丈夫です。僕の家近いので。では」

男はそう言うと再び歩き出した。彼は今は誰の助けも必要としていない。ならば、俺にできることも今はない。俺はコンビニに向けて歩き出した。


買い物を終え、家に帰宅する頃には日はすっかり落ちていた。

食材を冷蔵庫に入れベッドにダイブする。

せっかく何か作ろうと買い出しに行ったが、疲れてしまい面倒になった。

今日はもう寝よう。俺はスマホのアラームを設定し、布団に潜り込み眠りについた。

次の日。アラームが俺を起こす。が、俺はアラームを止めただけでベッドから起きない。というか、起き上がれないのだ。

激しい頭痛、喉の痛み、悪寒に体の痛み。二十数年生きてきて何度も味わったことのあるこの異常事態。そう、これは風邪だ。

雨で濡れたにもかかわらず、何の対策もしなかったのがまずかった。

俺は何とかベッドから降りると、部屋の隅に置いてある薬箱を開けた。中には市販の絆創膏や目薬、胃腸薬、爪切りが入っているのだが肝心の風邪薬が見当たらない。

どうやら切らしているようだ。

ふらふらする中、俺は着替えてアパートを出た。太陽がギラギラ照りつける中、懸命に歩を進める。だが、全然進んでる感じがしない。いや、実際には進んでいるのだろうが風邪の影響で感覚がおかしくなっている。

体が熱い。目が回る。俺はその場に倒れこんだ。人が駆け寄ってきて声をかけてくる。その声に返事をすることなく俺の意識は闇に落ちた。




考え中

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