第1話
11月のある真夜中の出来事である。A市の空が青白く光った。10秒程の短い時間であったがその光は今まで見たどんなものよりも綺麗だった。おそらく多くの人が同じような感想を抱くのであろう。
一人の少年も同じ感想であった。夜遅くまで起き、本を読んでいた少年はカーテン越しに光が差し込んでくるのが分かるとカーテンを開け、空を見上げる。
「綺麗だ…」
少年は綺麗な光を見終えると本に栞を挟み眠りに着く。といっても先程の光のことが忘れられずなかなか寝付けないようだ。
この少年、逃野逃は高校1年生、即ち学生である。そして明日は週の始まりの月曜日、今寝なくては週明けから目覚めの悪い朝を迎えることになるであろう。
次の日である。逃野はとても眠そうに登校した。
睡眠時間をまともに取ることができなかったためであり、学校に着いた後も睡魔と戦い続けている。
周りでは夜中の青白い光の話題で持ちきりであった。夜更かしをし、実際に光を見たと思われる人達はそれを自慢し、早く寝てしまったと思われる人達は羨ましがったり特に興味を無さそうにしていたり実に様々な反応をしている。そんな中、会話をする相手が居ない逃野は会話の盗み聞きをしていた。
空が暗い。
「えっ?」
それもそのはずである。現在の時刻は18時。11月となると日の入りも早く、かなりの暗さである。逃野は5時限目の途中から眠り続けていた。どうやら睡魔に負けてしまったようだ。
逃野は頭は悪いが真面目であったため、学校で寝たことは一度たりとも無かった。その記録も今この瞬間に破られたが。
逃野は急いで学校を出る。
そしていつも通り神社の前を通り下校しようとする。しかし、神社を通るといつもとは違う光景を逃野は目にした。逃野は思わず立ち止まる。
神社の賽銭箱の前で青い炎が浮遊しているように見える。まるで人魂のようだ。
「何だろうあれは」
逃野もよく正体が分かっていなかった。しかし、ただひたすらそれが何なのか気になり物影からこっそりと覗いた。
よく見ると炎が浮遊していたわけでは無く、金髪の大学生あたりの男の手の平から小さな炎が出ているだけであった。しかしそれは異様な光景である。手の平から炎を出すことは残念ながら普通の人間には不可能だ。逃野にも勿論不可能である。
逃野は覗き続けていると突然炎が消え、男が逃野へ向かってくる。おそらくバレたのであろう。
逃野は男が向かってくるのが分かると走って逃げる。
しかし、逃野は逃げ切ることができずに捕まってしまう。逃野の顔は青ざめている。