夢
「……最高の出来だ」
赤い瞳をした男その赤い目を細くして笑った。
「あぁ、そうだな」
そして青色の瞳をした男も同じように笑った。
黒く床に引きずってしまう程長いローブを身に纏った5人が安らかに寝息を立てて眠っている赤ん坊の周りを5人が囲んでいる。その5人はそれぞれ赤、青、黄、緑、茶の色をした瞳を持っていて、その色に合わせて胸に飾りが施されている。
この場所にこの赤ん坊を含めた6人の他には人は誰もいない。大きな真っ白な神殿、5人の喋り声以外は何一つ聞こえない静かな場所だ。
「……では、今から呪いの保護を――」
突然、声を遮る音と揺れ、この広い神殿全体に響き渡る程のかなりの大きな破壊音が遠くから聞こえる。
「な、なんだ?」
『シンニュウシャアリ!シンニュウシャアリ!』
赤いサイレンと警告音と共に響き渡る機械の声。
「ここには我々以外誰も入れないはずだが――」
そして先ほどより大きな破壊音を轟かせ音と共に入ってきたのは――、
「き、貴様は……!!」
「久しいな。貴様ら」
神殿のがれきの隙間から堂々と侵入してきた男も、彼ら5人と同じく、長く黒いローブを身に纏っている。しかし、ここにいる5人とは違う圧倒的なオーラを放っていた。
「……そうだな、邪神よ」
侵入してきた者は邪神。ここにいる5人と相対する存在である。5人も各属性を司る神々なのだ。
「何用だ!!」
緑色の目を光らせた男が冷たく、睨みを利かせて語気を強く言った。
「それなんだが、今日ガキを造ったそうじゃないか。それで……、このガキを使ってこれから貴様らは何をしようとたくらんでおるのだ?」
邪神はそれはまるでわざとらしい演技の台詞のように、そして不気味なほどの笑みを浮かべて、その言葉を吐いた。
「貴様のような者に教える義理は無い」
茶色の目をした神が答えた。
「こいつ、呪いの加護はもう施したのか?」
「…………」
神達は邪神の言ったことを無視し、帰ってくれないか、と言い放った。
「それは無理な話だな、今日は、貴様らに用があって参ったんだ」
「その用件を言わずに帰ってくれないか?」
それはかなわんなぁ、と邪神は言った。
「そろそろ貴様らが邪魔になってきてなぁ。だから今日は貴様らを消しに来たんだ」
「……何を言って――」
「イ…………アッ……グッ……ガハッ……」
そう話した瞬間には、邪神の手が嘲笑した黄色の瞳をした雷神ヴォルツの心臓を貫いていた。
「……き、貴様……よ、よくも、よくもヴォルツを……」
一撃で倒れてしまったヴォルツを見て、茶色の瞳の地神アースは体を強張らせ、唇を震わせて言った。
だがそれが他の神の闘争心に火を付けたようだ。
「皆、我々であいつを倒すぞ」
地神アースが言うと残りの3人もそれに反応して、
「ああ」
と、声を揃えて言った。
「フッ、それは無理な話だ」
そのやりとりを見ていた邪神が口角を上げて嘲笑った。
「無理じゃな――」
「いや……残念ながら無理なんだ……」
邪神がそう言うや否や、次の瞬間には物凄い光と熱と共に地神の体は爆破していた。そして、爆発した周辺には鮮血と爆発しきらなかった残った肉片が飛び散っていた。
「き、貴様……」
先の爆発によって闘争心が恐怖に変わってしまった赤い瞳の炎神フレアは震えていた。
「だから言っただろう?貴様らには倒せないって」
そう邪神言った瞬間、緑色の瞳の風神ウインドがバタリと音を立てて倒れた。
「……ウ、ウインド!?」
何も前触れも無く倒れた風神を見て青い瞳の水神アクアが言った。
「どうした? 貴様らの実力はそんなものか? だったら神を名乗る資格はこれっぽっちもないなぁ……」
再びニヤリと笑い、今度は水神に攻撃してくるようにと、右手で挑発をした。そしてその挑発に見事に水神が反応してしまった。
「うあああぁぁぁぁぁ!」
右手に水から創造した剣を召還し、邪神に襲いかかった水神だったが、
「無駄だな……」
水神が邪神の頭に向け放った一撃を邪神は軽くいなし、水神の背中が邪神の正面に来た所を邪神が水神の首を手刀ではねた。