4、筆頭宮廷魔術師
『騎士隊隊長様はコンプレックスのせいで
定規の形が変わってしまったようですね。
それが今も変わったままなのかどうかは・・・
前年の勇者が居ない今となってはもう
私達には関係が有りませんね。
それでは、今回は筆頭宮廷魔術師様。
自称勇者の彼女は何故、彼にお話を聞くことにしたんでしょうね?
彼はあまり前任の勇者と、関わりが無かったはずですが・・・
案外、地位が高めで比較的、話せそうな人を片っ端から
って感じでしょうね。
では、またお会いしましょう。』
「昔の勇者?あまり詳しくは無いぞ。
あいつは魔法の才能がないってことで、俺ら魔術師にはほとんど関わりがなかったからな。
ただ、魔王討伐の旅に出るたび、毎回同行してた、客分の老魔法使いだったら詳しい事を知ってるんじゃねえかな。今は近隣の魔物退治に出かけてるから、居ねえけどな。
あの爺さんは俺らがガキの頃から客分らしくてさ、もし話ができたら勇者のことだけじゃなくて、もっと他の事も聞けるかもな。
ああ、勇者のことだっけ?さっきも言った通り、あいつは魔法が使えないからな、俺らが何かするってことは無かったぜ。
ただ、魔法を使えないからかな、俺らに向ける目がすげーの。ほんっとキラキラしてやがんの。何でそんな目で見んのかって聞いたらさ、あいつ魔法の無い世界から来たらしいんだよ。
魔法が無いとか、ありえねえよな。ならあいつの世界じゃ火はどうやって起こすのか、とか重い物とかを運ぶ時はどうすんのかとかさ、色々魔法が無きゃきつい物とかどうすんのか不思議に思って聞いたら、カガクってもんがあるんだってさ。
魔法なんてものは空想の中だけで存在してて、カガクが有ればほとんど何でもできる世界。それがあいつの世界。
そんな世界から見たら俺らの国は住み辛えんじゃねえかって聞いたらさ、
『空想の世界に巻き込まれるのは一つの夢だったんだ。確かに今までできてた事ができなくなったり、苦労しなきゃできないことは多いぜ?それでも、この世界の方が生きてるって実感できる。それに主人公だぜ?俺らの世界では生きてるだけで主人公だ!なんて言われてたりするけどさ、こんな分かりやすい形で主人公になれたんだ。感謝することはあっても、不満に思う事はねえな。』
唯一の不満は魔法が使えないことだけど、それもちーとな身体?とやらで相殺、総合的に感謝してる、ってさ。ガキみたいな事言うもんだからつい笑っちまった。こんなあほで清々しい奴が勇者でよかったなあ、なんて柄にもなく思ったもんだよ。」
関わりが無い割にはよく覚えてるわね。
「そりゃな、異世界なんてものは俺らの知識欲の琴線に触れて触れて仕方なかったし。
ただ、覚えてる…いや、忘れられないのは、それからのあいつの噂と様子がやばい方向にいっちまったからだな。
最初はさっき言った通り、まさに勇者!!って感じだったんだがよ、魔王討伐をこなすごとに剣呑な様子に変わるわ、噂は女にだらしない、ほんとは魔族であるとかデマに近い物も流れて、最初の印象からすっかり変っちまったせいで、忘れられねえんだよ。
・・・短いが、これで終いだ。悪いが、これ以上詳しい話を聞きたきゃ、老魔法使いが帰ってきてからに爺さんに聞いてくれや。」
・・・最後に一つ、
あなたから見た勇者はどんな人?
「最初はこどもかと思った。けどそれからの活躍は勇者そのもの、噂は堕落した人間、最後の雰囲気は狂人。あいつに対する印象が固定されてたことはねえな。
たぶん今も当時を知る他の魔術師に聞いても同じような事しか返ってこねえと思うぞ。
もし、もっと早く話が聞きたいなら、あいつの昔の女だったやつが今もこの国に何人かいる。騎士隊の名誉顧問や伯爵の貴族子女がそうだ。本当に勇者について知りたいなら爺さんが帰ってくるまでに、あの女たちに訊いてみな。」
わかった、ありがとう。
次は勇者の昔の女、その2です
その1はまた後半で出てきます