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18、老魔法使い・2

『ようやく話を聞く事が出来た

 老魔法使いが知る勇者の旅


 前回は今までの旅で人間不信になっていく

 勇者様の過程の復習みたいなものでした


 今回から物語の核心に迫っていくのでしょう

 そして、私も・・・


 ではお楽しみください』


「さて、どこまで話したかたのう?



 そうそう、3回目の旅で森の民・女と通じ合って、元恋人である魔王3を討伐したところじゃったか。

 これからはおぬしらは知らんことじゃの。



 そう、勇者やワシたちは3回目の魔王討伐に成功し、報告のために人間の国へと帰国していった。


 そして、帰国した勇者は次の魔王が現れるまで姿をくらます。


 ワシらは今の勇者が帰国すればどうなるか、分かっておった。



==============================



 勇者は強い。



 ただの肉体強化しか使えない。そんなものは何のハンデにもなりはせん。


 魔法が使える?炎が起こしたいなら火炎瓶を使う、水なんて武器になっても脆弱、索敵できる風?もっと優れた5感ならもっと索敵できる。



 そう、既に勇者は単独でも魔王を討伐できる肉体的な強さを手に入れていた。


 拳を全力でふるえば、城壁も崩壊させ、その気になれば隠業で誰にも気づかれずに暗殺もする事が出来たじゃろうな。




 そんな勇者は民衆からは英雄じゃ。


 今まで誰ひとり勝つ事が出来なかった魔王と言う恐怖の化身を倒す事が出来た唯一の存在。



 しかし、そんなものは国の馬鹿貴族どもからしてみれば魔王と同じ恐怖の対象じゃ。



 魔王以上の力を持っていても、同じ人間だから手綱を御することもたやすいと思っていたのに、月日を経るごとに人間を信じられなくなっていく勇者。そして、形相は幽鬼もかくやと言わんばかり。



 そんな中、馬鹿貴族どもはありもしない懸念から勇者に対する恐怖を日に日に増やしていった。



 そこに届いた魔王3への一時期の恭順。


 馬鹿どもは限界じゃった。勇者と言う存在が恐ろしくて恐ろしくて仕方が無くなった。



 そして、馬鹿どもは現国王と通じて勇者を牢へと幽閉する事に決めた。




 王妃を責めたりはするなよ。あの時期はそのような馬鹿どもを一斉に排除せねばならん時期で、勇者だけの事に構っておられんかったのじゃよ。


 牢へと入れられた勇者は最初は逆らったが、すぐに大人しくなった。




 あやつは裏切られる事に慣れ過ぎた。慣れ過ぎたがゆえに信じる事を諦めた。



 その時点で恋仲であったおぬし‐森の民・女‐の事も既に信じておらんかった。




 ・・・言いたい事は分かるが、今は聞け。



 信じるモノが無いと言うのは辛いぞ?

 人間は生きていくために何かしらの”芯”が必要じゃ。その芯を作るために確固たる何かを自分の中に持たねばならん。


 それでもあの時の勇者の中には信じるモノが無い。だから何かにすがらねば生きていけんかった。


 そして、その時にすがるモノとして選んだのが、森の民・女、お主じゃよ。




 確かにあやつはおぬしを愛した。それは揺るぎない事実じゃ。



 しかし、あやつに芯が有る状態ならば、おぬしらは愛し合えたか?


 答えは否じゃ、勇者はすがるモノが有ればおぬしを選ばなかった。

 おぬしは弱った勇者でなければ保護欲が浮かばなかった。



 おぬしらは正確に言えば、只の傷のなめ合いだったともいえるかもしれん。




 そんな中、遠くにいる何かにすがれるほどあやつは余裕が無かった。


 だから信じないようになった。信じようとするから辛い、何も信じないと思い込めば楽になれる。




 そんな日々が魔王4が現れるまで続いたよ。


 馬鹿どもも、いくら勇者が恐ろしいとはいえ、殺す勇気は無かった。なぜなら魔王3が倒れた後すぐに魔王は現れなかったが、いつ次の魔王が出るのか分からなかったからの。



 そして、馬鹿貴族どもは王妃と元国王が権力を握るとともに排斥され、この事はほんの一部の貴族と現国王しか知らない事となった。




 4年後に魔王4が現れたら、現国王はすぐさま牢から解き放ち、ワシと男僧侶を同行としまたしても討伐の旅に出るよう命令した。



 4回目の旅は今までと同じ変わり映えのない旅じゃった・・・途中まではの。



 ある日ワシらは街道沿いを歩いておった。

 そんな中、魔物に襲われる行商人を見つけた。そんなものは何も珍しくなく、いままでの旅で何回と見かけ、何回と救ってきたことじゃ。



 そして、助けた行商人に礼を言われ、そのまま立ち去ろうとした時、勇者の足が止まった。


 あやつの目は行商人が運んでいた商品に釘付けじゃった。

 そう、行商人は奴隷を運んでいたんじゃ。



 もちろん、今まで勇者も奴隷をいくらでも見てきた。

 しかし、あやつの目に留まるのは今まで見てきたどの奴隷とも違う特徴を持っていた。





 その奴隷の娘は黒髪黒眼じゃった。



 ワシらの世界では魔力の影響で純粋な黒髪黒眼は存在しない。


 それこそ勇者のように常に魔力を消費し続ける体質でもない限りは。




 そう、その奴隷は看板娘が奴隷となる前に身ごもっていた勇者と看板娘の子供じゃったんじゃよ。


 勇者は無理を言ってでもその場でその奴隷を買い取り、旅へと同行する事に決定した。




 奴隷娘はワシらに心を開く事は無かった。なぜなら勇者は奴隷の主で、自分は奴隷だと教育されてきたからの。


 そんな娘を見て嘆きながらも勇者はなんとか昔の明るさを装い、奴隷娘との距離を縮めて行った。

 自分はお前の父親で、今まで迎えに行けず済まなかった。勇者なんてものでも看板娘を助けられなかった。



 ずっとずっと今まで存在すら知らなかった娘に謝りながら勇者は旅を続けた。


 そして、奴隷娘も奴隷根性が抜けてきて、なんとか普通の娘のようになってきたとき、一度勇者へ大きな声で怒鳴った。



『どうしてお母さんを助けてくれなかった!!お母さんはずっとあなたの事を待っていた!信じていた!!何を言っているのか分かんないくらい壊れてもあなただけは信じていた!!あなたの事だけは絶対に悪く言わなかった!!



 私はお母さんを助けられなかったあなたが憎い。けど、これは八つ当たりだって知ってる。お母さんが奴隷になったのを止められなかったのはあなたのせいじゃない。お母さんがそう言うんだもん、仕方ないから私もお父さんの事を許してあげたい。』



 もちろん、こんな筋道立てて喚くなんてできたものじゃない。あの娘はその時まだ6歳頃じゃ。嗚咽で何を言ってるのかも分からん時もあった。筋の通った言葉なんてほとんど言えておらん時間が1時間続く時もあった。それでも最後まで自分の言いたい事を話し続けた。



 一度感情を爆発させた元奴隷娘は落ち着き、憎い勇者でもお父さんと認めようとしてくれた。



 それは子供にとってどれほど苦しい事か。その時は二人とも看板娘は死んでいると聞かされておったからの。それでも二度と会えない妻と母親を中心に、あやつら親子は『親子』となったのじゃ。




==================================



「信じられんか。



 無理もない。


 短い時間に少し詰め込み過ぎたのは否めんからの。

 しかし、勇者の旅はこれからが佳境じゃ。これからもっと勇者は過酷な道を歩んでいくぞ。



 それを聞く覚悟はあるのか。」




「・・・私は勇者様との日々が偽りだと信じることができません。



 あくまで、今までの話はあなたの主観、もしくは客観的な事実。

 それをどう判断するのかは私です。」



「私はそんなの関係ないね。

 ごちゃごちゃ言わずに話しな。


 私はこの国を背負ってきたんだ。勇者のことも背負ってやらないと。

 たとえ一度は放ってしまった役目でもね。」



 愚問。私の覚悟は既に示した。


 そうでなければ魔族との講和などしようとも思わなかった。




「ひぇっひぇっひぇ!


 ええ覚悟じゃ。

 後悔するなよ。




==============================




 娘と少しでも打ち解けられたそれからの旅はずいぶん気が楽になった。



 それまではどんなに魔物を倒しても気が晴れるような事はなく、うつうつとした空気が消せなかったからの。




 勇者も作った笑顔を浮かべる事は少なくなり、余裕のある時は肩車をしながら旅をしたり、自分の故郷の料理をふるまって一緒に食べて・・・


 あの時はあやつらは確かに親と子じゃった。






 そして、そんな日々が壊れる時がやってきた。

 あやつはとことんまで世界に嫌われておるのかのう・・・




 ある日、元奴隷娘を男僧侶に任せ、ワシと勇者が周囲の散策をしておる時じゃ。

 突然大きな物音が響いてきて、ワシらは慌てて戻った。




 そこでワシらが見たものは変わり果てた元奴隷娘と魔物の死体のそばで立ちつくす男僧侶じゃった。




 不意を打たれた男僧侶は一歩力及ばず、元奴隷娘を守る事が出来なんだ。





 その時、勇者は壊れた。




 勇者にとって最後の救いとなっていた実の子どもは魔物によって、無残にも殺されてしまった。

 そして、今まで保っていた正気の糸は音を立てて切れた。




 それからの勇者はもう脇目も振らんかった。



 魔物を見つければ皆殺し、魔族を見ても殺し、人間の集落が道中いくつもあったにもかかわらず、一切休まず、一切勇者としての活動もせず、ただただ、今まで通った道をなぞり、はやくはやく魔王城に辿りついた。



 そんな焦りの中、いくら勇者といえども限界が来ておった。




 魔王4は以前の魔王1に負けず劣らずの力をもっておったんじゃ。

 そんな相手に疲労困憊の身体で楽に勝てるわけもなく、深い傷を負いながら辛勝した。



 ワシはすぐに森の民に助けを求め、勇者は集落で傷の治療をした。


 


 しかし、あやつはもう何の感情も見せることなく、ただそこに存在するだけの存在となった。



 もちろん、森の民・女、お主の献心的な介護があった、それでもあやつの傷を癒すには時間が足りなんだ。




 そして、1年後の魔王5の出現、傷は治りながらも、ただ生きている人間に強大な力を持つ<王>の名を冠したものを打倒するのは難しいことであった。


 しかも、あやつは単身で挑んでおった。これでは只の自殺よ。




 それでもあやつは魔王5を討伐せしめた!!



 その身に呪いを受けてな。


 魔王5は搦め手や、呪術的なものを得意としておたがゆえに、勇者は魔王5の呪いで<勇者>としての力を失ってしもうた。




 あやつの強さは魔力を常に肉体強化して、その肉体強化が人外であったからこそ。


 魔力を身体能力に使用できない呪いをかけられた勇者はもう<勇者>ではない。




 あやつは人間の国下へと帰るのを拒み、<勇者>の称号の返還と、魔王討伐の任務の放棄を宣言し、どこかへいってしもうた。






 そこからのあやつの行方はさっぱり追えんかったんじゃが・・・





 そう、女勇者、おぬしが出てきた。




 勇者はそこそこ大きな街で今までの資金でただ生きていた。

 飯を食い、寝て、たまには商売女を抱いて。


 そんな生活の中、勇者に入れ込む女が出てきて、同棲を始める。



 いや、その時点で勇者に収入など無かったから、いわばヒモじゃの。

 商売女にぶら下がって生きていくしかないヒモ男じゃ。



 その商売女こそがおぬしの母親、元娼婦であり、看板娘じゃ。

 おそらく、元娼婦は自分が昔の妻、看板娘とは言っておらんかったはずじゃ。もし言っておったら今もあやつはお前ら家族で過ごしてるはずじゃからの。




 元娼婦は勇者と幸せな生活を送るためにも女を売る商売を辞め、真っ当な仕事を始めた。

 しかし、何を思ったのか勇者は、元娼婦が新しい仕事を見つけると同時に姿をくらました。


================================



 人並みの身体能力と人並みの魔力しかない勇者はいったいどうなったのか、そして、今どうなっているのかはワシでも知らん。」




「しかし、ただ一つ言えるのは、あやつは今幸せではない。


 ただただ気が狂いそうな孤独の中、ただ息をして生きているだけじゃ。



 もし、あやつがおぬしという我が娘に会える事が出来れば・・・」




 ・・・お母さんは何も言ってくれなかった。


 私のお父さんがどんな事をしてたのか、どんな人だったのか、お母さんがどんなことをしてたのか

 何も、・・・なにも!!



「・・・今まで爺さん、あんたは勇者を誰よりも長い間見てきたはずだ。



 それでも目星すら使い無いのか。」



「もしかしたら、と思っておったところはある。



 しかし、今までの状態ではたとえ見つけられたとしても、あやつを無駄に追い詰めるだけじゃと思うておった。

 だから、ワシらはただ待っておった。



 ただひたすら、あやつを救う事が出来る機会を待っておった。」


「だったら!」


「ならん!!


 今はまだ早い。

 もう少しじゃ。



 勇者が消えてもうすぐで15年、あと少し待て。」



 どうして、


 どうしてまだ会えないの?



「時じゃよ。


 今はまだ言えん、が時じゃ。


 今はただ待つ時じゃ。」



「そんな・・・

 なら、いつならいいんですか!?」



「そう後でもない。


 あと半月もしないうちにその時はやってくるはずじゃ。

 それまでは頭を整理するように使うがいい。



 会った時に何を言うか、誰と会わせるか。


 今までどんな気持ちだったか、なぜ勇者があんなに過酷な道を歩まなければならなかったのか


 考えろ。あと、少しの時間でもう一度考え、話を聞き、整理をつけんじゃ。」



 ・・・行こう。



「ちょっ!女勇者?」


 老魔法使いの言うとおり。


 私達には少し頭を整理する時間が必要。


「えぇ、その通りかもしれません。


 女僧侶、いえ王妃様も少し時間を置きましょう?



 今は結論をだす時ではないわ。」



「うぅぅ~!

 納得いかない!!



 爺さん!今度会ったら覚えとけよ!!!」



「ふぇっふぇっふぇっ!


 楽しみにまっとるわい。」



「あぁ!もうむかつくーー!!


 ほら!行くわよ!!」


「あっ!ちょっと待って下さいよ!


 っていうか、あなたは城に戻らなくていいんですか!?」


「いまはそれどころじゃない!!


 国の事は父上がなんとかしてくれるはずよ!!」


「そんな無茶苦茶な~!」



「どうした?

 おぬしはいかんのか?」



 ・・・一つ聞きたい。



 あなたは勇者を見てきたけど、あなたの人生に自分の幸福はあった?



「・・・



 ふぇっふぇっふぇっ!!


 ワシには幸せになる資格など無いわい!!

 ワシは少々汚れすぎたからの!」




 私はあなたが幸せを望んじゃいけないなんて思わない

 幸せになりたいならなっちゃえばいい



 他人がどう言おうとあなたの願いはあなた自身のなのだから。



「はん!言いおるわい!


 ガキンチョの分際で。」



 私は別に子供のままでいい。


 私は私の考えのままお父さんたちを幸せにして見せる。



「えぇ根性しとるわい。



 なら最後に忠告、いや助言じゃ。


 正しい答えなどどこにもないぞ。

 大切なのはその答えを正しいと思えるかどうかじゃ。



 お前さんの答えを楽しみにしておるわい。ふぇっふぇ」



 じゃあね。「    」



========================



「・・・気づきおったか。」


「少し分かりやすかったんじゃないのか?



 のう?老魔法使いよ。」



「盗み聞きとは趣味が悪いの~」


「唯一の親友が心配してやったんじゃ。

 少しは有りがたく思え。」



「年を食ってからできた親友はうざいの~」


「ほざけ。」



「のう・・・老魔法使いよ。」


「なんじゃ?元国王よ。」



「幸せになってもいいとは思わんか?」



「そうじゃのう。




 新しい親友と酒を酌み交わす位の幸せなら、


 いいのかもな。」



「あとは待つだけか・・・」


「終わったら、皆で酒を呑もう。」


「・・・あぁ。」




はい!

2連続投稿です!


ただ、長くなりすぎたから分割しただけなんですけどね!

年内に終わらせられるように頑張ります!


たぶん終わんないけど(´・ω・`)

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