閑話・自称勇者・人間の国
『さて、自称勇者は本当の勇者になることを決意しました。
そんな彼女の及ぼした影響はどんなものなんでしょうか。
人はただ動くだけで誰かに、何かに影響していくものです。
勇者を知る、という目的の下で動いていた彼女にも
影響された人が、モノが有るはずです。
彼女が及ぼした影響をここで、一度見てみましょう
視点は自称勇者から移り変わって、私、天の声へ
そして、私が今回見るのは人間の国になります。
時系列は私にとっては問題になりませんから、
心配しなくても見逃しはありません。
ではどうぞ、御鑑賞を。』
1、現王妃(元女僧侶)
『自称勇者は国のトップにも影響を与えました。
只のぼんやり不思議ちゃんではなかったのです。
方向音痴が唯一の価値でなくてよかったですね。
彼女に影響したのは現れてすぐの時。
どんなことになったのか。どうぞ。』
「勇者を名乗る者が現れた?
放っておきなさい。・・・いえ、今日のところは放っておいて。
明日からは誰か監視につけて、報告を私にあげなさい。
時期が来ればこちらから召還致します
それと、
くれぐれも、王にばれないように。
行きなさい。」
「・・・時が来たという事なのでしょうか。
我々人間の国はこのわずか15年という時間で、疲弊しすぎました。
自称であるとしても、勇者の称号にすがらなければならない程に・・・
願わくば、勇者を名乗る者が平和を望むことを。
そして、どうか恨んでください。
あなたを利用するしかない私を。
そうでなければ、私はあの方に合わせる顔が有りません。
・・・勇者様、あなたが居らっしゃらないと言う事が、今でもこんなにも狂おしい。
どうか・・・どうか怨んでください。」
2、現国王(元男魔法戦士)
『国のトップ二人に影響を与えるとは・・・
勇者を名乗るということの力が分かりますね。
それも元々は旅の仲間だったから、だと考えれば無理はありませんがね。
さて、この人はどう動くのか。
王妃の暗躍に気付かない彼は一足遅れて、自称勇者を認知する。』
「勇者?
馬鹿らしい。あいつは既に死んだ。
死んだ者が現れるわけがなかろう。
何?本人ではなく、勇者を自称する女?
ふむ、呼び出して伽でもさせてみるかのう。
いや、待て、その女の容姿はどのようなものだ。
間違っても黒髪ではないだろうな?
ブロンド・・・それはそうか。あいつは死んだのだ。
しかし、一応調べさせるか。
その女の身元を徹底的に洗え。
万が一にも勇者の血縁だとすれば
殺せ。
今のこの国に勇者等というものを飼っている余裕などないのだからな。」
「しかし、今頃になって何故勇者などと。
まさかあの時の真実を知ったあいつが、復讐でも計画したのか?
それともあの屑が何か動いているのか
ちっ、忌々しいものだ。
魔王は倒したと言うのに、いなくならず、
国の運営も下手くそな者ばかりでまともに動かせていない。
元女僧侶も俺になびくことがない。
俺が何をしたというのだ。俺は、この俺様がこの国のためになる事をしているというのに。
くそ!
おい!!誰かいないか!!
今日の執務は終了だ!!酒を持て!」
3、貴族子女
『彼女は自称勇者が初めて出会った、勇者の過去の女。
自分を中心にしていた過去を顧みて、今では心を入れ替えた
と、言っていましたが・・・
彼女の本音は有ったのでしょうかね。
時は自称勇者が帰った後となります。』
「ウソを、
ついてしまいましたわね。
さも異世界なんていうものが有るかのように喋ってしまったわ。
彼は創られた存在だと言うのに
私が勇者様に対して何も思わなかったのは、彼が人間で無かったのが原因なのですから。
人形に対して愛着は沸いても、愛情など持てるはずが無いのですから。
それでも!最後に、私が彼の見方を変えたというのは一片のウソもございませんわ。
ですから許して下さいね。
勇者様が生き物ですらないなんてことは、誰にも言えない、我々貴族と元国王様だけがあの世まで持っていくべき秘密なのですから。」
4、騎士団名誉顧問(元女騎士)
『彼女は勇者の4番目の女でしたか。
彼女に対して、貴族子女様が忠告されていたことが有りましたね。
自称勇者が聞いた限りではそんなに悪いイメージが有りませんでしたが・・・
自称勇者と話して、彼女は何を思ったのか。』
「全く。
あの小娘も嫌な事を思い出させてくれるね。
結局あいつは使い物にならない男だったし、あたいも今の名誉顧問なんて
ただの名誉職に押し込められてお終いかい。
あの頃は何でも上手く行く気がしてたんだけどねぇ。
けちのつけ始めはあの時の男魔法戦士が女僧侶と結婚なんてしちまってからだね。
もっと早く自分の気持ちってやつに気づいてたら、あたいもこんなとこで安酒飲んでるはずじゃなかったんだ。
利用できるものは利用して、あたいにできる限りの事はやったはず、
ほんと、あとは時間だけだったんだ。
全く、酒でも呑まなきゃやってられないよ!」
5、元国王
『彼は賢君と呼ばれておりましたが、後任が決まった後に
王妃に引き継ぎを行い、魔王討伐の道は半ばながらに座を降りました。
そんな彼は自称勇者に・・・いえ、<勇者>に何を思うのか。』
「ゆうしゃ・・・・
懐かしい、響きじゃ。
そのような者が現れたか。
そうか、
そうか。
ワタシの懺悔はまだ足りぬか。
いや、ワタシの罪はいくら懺悔しても許されはすまい。
分かっていた事だ。
ワタシは1人の人間を不幸にする事によって、より多くの者を不幸にしてきた。
それはワタシの娘にも当てはまることよ。
そのような罪人に許しが与えられる訳が無いのじゃからの。
せめても、と失政の巻き戻しを図ろうにもワタシはもう、国の中枢に関わる事もできん。
ワタシにはなにもできん。ゆるしてくれ<勇者>よ
流れは、止められぬ。それはおぬしも知っておろう?
のう老魔法使いよ。」
「・・・・」
6、老魔法使い
「今のこの国で勇者を名乗ることは愚かなことだ。
最後まで利用されるか、自分が本当の英雄になるしかないというのに。
何か目的が有るのか、それとも只の馬鹿か。
昔の勇者を調べて回っているらしいが・・・
ワシのところに来るのはまだ早いの。
廻れ舞われ。そして真実を知れ。
それでも勇者を目指すなら、ワシはおぬしの目の前に現れるだろう。
踊れ躍れ。この世界を救いたいなら、動き回れ。
全てを知って、会いに来い。
ワシはその時を楽しみにしておる。
足元に気がつかない愚か者。ワシはただただ、待ち続けよう。」
『さて、今回は自称勇者が人間の国に与えた影響編
彼女が勇者を名乗ってから、物語は約15年ぶりに動き始め
今では一つの流れになっているようですね。
いえ、周りが一つの流れを作っている、が正しいのでしょうか。
彼女はこの流れの中、どのように生きていくのか。
流されるままになるのか、それとも抗うのか。
次回は彼女が人間の国以外、
つまり、南の村や魔族、森の民に与えた影響編
<勇者>の動く意味をもう少しだけ追ってみましょう。』
まだ続くよ!




