序章・魔物への変貌
普通の日々を過ごしたかった。
小さな小さな当たり前のようにある日常を望んだ。
望んだのはそれだけ。
友だちと他愛のない話で笑いあって、小さなことでけんかして、仲直りして、時には泣いて、そんな平凡なものが欲しかった。
だけどそれすらも手に入れられなかった。
ただただ、それだけが欲しくて、それだけを願って。
でもその願いは叶うことはなく、この残酷な世界で生きていくしかない。
欲したことが罪だった、願うことすら赦されず。
なぜという疑問には誰も答えてくれず。
他人はただ哀れみ忌み嫌う。
家族には遠ざけられ捨てられる。
何をしたのか。
こんな力いらなかった。
妬み、蔑み、嫌悪し、恐怖し、排斥され、そして化け物と言われた。
―――俺が化け物?
―――俺が化け物だというのか。
俺は人間だと叫んでも、誰も耳をかしはしない。
―――許せない、許しはしない。
友達だと思っていた者にも裏切られた。
―――ああ、人間はこんなにも屑なのか。
最初は悲しかった。
自分が人間ではないことが恐怖だった。
この仕打ちも当然だと思おうとした。
自分が悪いんだと、自分が人間ではないのがいけないんだと。
―――俺は何も悪くない。
年を経て、次第にそれが怒りへと変わった。
―――俺は化け物でいい……いや腐った人間を喰らい尽くす魔物となろう。
そうして憎悪に歪んだ一体の魔物が生まれた。
憎悪に塗れたその瞳は、かつての純粋な面影はなく、その表情は凶悪に歪んでいた。
正気などとうにない。
狂気の咆哮は視界に入ったものすべてを殺すと告げている。
そう憎い人間を殺すために魔物になった。