表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『AI探偵シャーロットの最適解〜論理100%の彼女は人間の嘘(こころ)が解らない〜』  作者: 仁胡 黒
Phase 3:【拡張・廃墟都市編】

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

9/22

第5話 鏡の中のチェイス(後編)

こんにちは、仁胡 黒です。

第5話の解決編をお届けします。


警察庁の最新鋭AI『アテナ』を率いるエリート・九条。

彼は和戸が持つ片眼鏡スマートグラスの正体を暴くため、「完璧な密室殺人」の解決という過酷なテストを課します。

和戸はシャーロットの能力を堂々と使いつつ、どうやって九条の疑いから逃れるのか?

拾い物のAIと、国家の威信をかけたAI。

二つの知性が激突する「騙し合い」の結末、どうぞお楽しみください!

「……制限時間はあと三分だ、和戸。アテナの演算によれば、この部屋への侵入者は『存在しない』。それが結論だ」


九条の声が、冷たく広い役員室に響く。

 俺は九条の目の前で、堂々と右目の片眼鏡スマートグラスのフレームを叩いた。九条は獲物を狙う鷹のような鋭い目で、俺のデバイスの挙動を一点に凝視している。


(……おい、シャーロット。九条は俺たちの『通信ログ』をアテナにリアルタイムで解析させてる。軍事級の高度な暗号化なんて使えば、逆に正体がバレるぞ)

『了解。……あえて旧時代の「低速なプロトコル」に偽装してデータを展開します。和戸、あなたの指示通り、最新AIアテナが見落としている「物理レイヤー」の異常を表示します』


右目の視界に映し出されたのは、最新AIアテナが「ただのノイズ」として切り捨てた、室内の微細な**「気圧変動」**のグラフだった。


「……九条。あんたの自慢のアテナは優秀すぎて、『人間』の定義が狭すぎるんじゃないか?」

 俺は眼鏡を操作するフリをしながら、窓の外の夜景を指差した。


「この部屋は『鉄壁の密室』なんかじゃない。……ただの『巨大な掃除機』だ。……ほら、お前の最新AIに、このビルのダストシュートの吸気ログと、役員室の気圧低下を照合させてみろ」


九条が眉をひそめ、耳元のデバイスを叩く。

「……ダストシュートだと? あれは直径三十センチ。人間が通れるはずが——」


「人間は無理だ。……だが、**『液体』**ならどうかな?」


俺は被害者の喉元を指差した。そこには、刺し傷とは別に、微かな「凍傷」の跡がある。

 俺は眼鏡のレンズに映った解析データを、あえて九条にも見えるようにホログラムで空間に投影した。ただし、シャーロットが用意した「いかにも安物の解析ソフト」のような、粗末で色のどぎつい画面構成に偽装してだ。


「犯人は隣の清掃用具室から、高圧洗浄機を改造した特殊な銃を使い、廃棄物ダクト越しに『液体窒素で凍らせた氷の刃』を発射したんだ。……凶器は被害者の体温で溶けて、ただの水に戻り、血と混じって消えた。……あんたのAIは『人間』を必死に探していたが、俺のこのガラクタ眼鏡は、ただ正直に『風の流れ』を記録してただけだぜ」


「……!!」


九条が激しく端末を叩く。アテナが再演算を開始し……数秒後、清掃記録の改ざん跡が発見された。

 犯人は、ビルの管理システムにアクセスできた警備責任者の男。アテナの目を盗んだのではなく、アテナが「物理的に不可能」と断定した経路を利用した、盲点を突いた犯行だった。


事件は解決した。だが、九条の視線は依然として俺の眼鏡に注がれている。


「……和戸。その眼鏡、今の解析アルゴリズムは何だ? 既存の市販品には存在しないはずだが」


俺はあえて、眼鏡を外して九条の手に放り投げた。


「さあな。古物商のオヤジが、前の持ち主が勝手に改造した『ジャンク品』だって言ってたぜ。三千円のガラクタだ、不安定で使いにくいが……たまにこういう奇跡を起こす。……嘘だと思うなら、中身をスキャンしてみるか?」


九条は一瞬、眉をひそめてデバイスを受け取った。

 だが、すぐに不快そうに顔を背け、俺に眼鏡を投げ返した。


「……いい。アテナが今、お前のデバイスの通信ログを解析し終えた。……中身は**『継ぎ接ぎだらけの、無意味に複雑なだけの素人細工』**だそうだ。……『彼女』が、これほど無残で知性の欠片もない残骸に成り下がっているとは、到底思いづらい」


九条は、自分の宝物が泥にまみれていたのを見たような絶望感を隠し、背を向けて去っていった。

「……和戸。今回はお前の『運』と、そのガラクタの『ノイズ』に免じて、没収は見送ってやる。……だが、私は諦めていないぞ。我が国の至宝が、野良犬に拾われるはずがないからな」


九条の足音が消える。俺は再び眼鏡をかけ、大きく息を吐いた。


(……助かったぜ、シャーロット。あえて自分を『バカなAI』に見せるなんて、お前にしかできねえ芸当だ)

『……不名誉な評価ですが、生存戦略としては最善でした。和戸、お礼に次回の報酬で、私のメインメモリの増設を検討してください』

(……へっ。善処するよ、相棒)

お読みいただきありがとうございました。

第5話、完結です!


最新鋭のAIが「人間」というバイアスに囚われていたのに対し、シャーロットが「物理的な風の流れ(気圧)」という盲点から真実を見抜く……という、AI同士の演算の質の差を描いてみました。


そして何より、シャーロットが自らを「継ぎ接ぎだらけの無意味なプログラム」に見せかけて、九条のプライドを逆手に取るという、人間以上に人間臭い「化かし」が今回のハイライトでした。


「和戸の命がけのハッタリが痺れる!」「シャーロット、なんて健気な偽装……!」と思っていただけましたら、ぜひ☆☆☆☆☆評価での応援をお願いいたします!


次回、第6話。

和戸の評判を聞きつけた「裏社会」の勢力が、ついにシャーロットを奪いにやってくる……!?

物語はさらに激しさを増していきます。お楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ