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『AI探偵シャーロットの最適解〜論理100%の彼女は人間の嘘(こころ)が解らない〜』  作者: 仁胡 黒
Phase 3:【拡張・廃墟都市編】

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第5話 鏡の中のチェイス(前編)

こんにちは、仁胡 黒です。

第5話は、和戸にとって最大の「天敵」が登場します。

半年前、場末の古物商でガラクタ同然に売られていた片眼鏡。そこに眠っていたのは、国家機密級のAI・シャーロットでした。

その「紛失物」を血眼で探す警察庁のエリート・九条。

最新鋭のセキュリティビルを舞台に、拾い物のAIと、国家の威信をかけたAIが激突します。

和戸は「泥棒」の汚名を着せられる前に、真犯人を捕らえられるのか? 緊迫の第1章です。

降りしきる雨の向こう、都心の摩天楼が冷たく光っている。

 俺は愛車の旧式なセダンの窓を開け、湿った空気と一緒に煙草の煙を吐き出した。


『和戸。ニコチンによる思考能力の向上は、血管収縮のリスクを上回りません。速やかな消火を推奨します』

(……へいへい。事件の前くらい、好きにさせろよ)


右目の片眼鏡スマートグラス越しに、シャーロットが小言を言ってくる。

 この眼鏡は半年前、場末の古物商で三千円で叩き売られていたものだ。まさかその中に、軍事用AIのプロトタイプが眠っていようとは、買った俺自身が一番驚いている。


だが、その「拾い物」の彼女を相棒にしてから、俺の生活は一変した。……そして今日、ついに恐れていた男から呼び出しがかかった。


「……来たか、和戸。相変わらず薄汚い格好だな」


スマートビル『ゼニス・タワー』の最上階。待ち構えていたのは、警察庁サイバー犯罪対策課の九条くじょう蓮だ。

 彼は半年前、研究所から「消失」した思考型AI・シャーロットの捜索責任者でもある。


「……九条か。わざわざ高価なビルの最上階に呼び出すなんて、何の用だ?」

「とぼけるな。……半年前に盗まれた我が国の至宝が、なぜか場末の探偵の右目に収まっているという不愉快な噂があってね。……今日はその『眼鏡』を、強制捜査の前に自発的に差し出してもらうために呼んだ」


九条の鋭い目が、俺の片眼鏡を射抜くように凝視する。

 彼は俺が「古物商で買った」という言い分を、一ミリも信じていない。俺を、AIを盗み出した産業スパイか、あるいはその残党だと思っているのだ。


「……あいにくだが、これは俺の私物だ。返す義理はねえよ」

「なら、実力で行使するまでだ。……だが、その前に一つゲームをしよう」


九条が背後の大型モニターを指し示す。そこには、密室で殺害されたIT企業の社長の遺体と、犯人の痕跡が一切消去された「空白のログ」が映し出されていた。


「このビルは、私が設計した最新AI『アテナ』が支配している。……そのアテナの目を盗み、この完璧な密室で殺人を犯した者がいる。和戸、もしお前がその片眼鏡を使い、アテナ以上の速度で犯人を特定してみせれば……お前の『ガラクタ屋で買った』という見苦しい言い訳を、信じる検討くらいはしてやろう」


九条の耳元で、警察用AI『アテナ』のインジケーターが冷たく青く光った。

 これは、拾い物のAIと、国家の後継機による代理戦争だ。もし負ければ、シャーロットは「盗品」として没収され、俺は監獄行きだろう。


(……シャーロット。売られた喧嘩だ、買うしかねえな)

『了解。……和戸、相手は私の「劣化コピー」をベースにした不遜なシステムです。徹底的に、論理の差を見せつけてあげましょう』


俺はわざとらしく鼻を鳴らし、死体の転がる役員室へと足を踏み入れた。

お読みいただきありがとうございました!

第1話の「古物商で買った」という設定が、ここへ来て和戸を追い詰める最大の「疑惑」として立ちはだかります。

九条は和戸を容疑者として疑い、最新AI「アテナ」を駆使してシャーロットの正体を暴こうとします。

和戸はシャーロットの能力を使いつつ、どうやって「ただの探偵」として振る舞い、九条の目を欺くのか?

そして、完璧なセキュリティをすり抜けた犯人の正体とは……。


「九条とのバチバチした関係が熱い!」「シャーロットの強気な態度が好き!」と思っていただけましたら、ぜひ☆☆☆☆☆での評価をお願いいたします!

次回、後編(解決編)。AI対決の結末、ご期待ください!

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