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『AI探偵シャーロットの最適解〜論理100%の彼女は人間の嘘(こころ)が解らない〜』  作者: 仁胡 黒
Phase 3:【拡張・廃墟都市編】

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第4話 亡霊(ゴースト)の潜むスマート・ドック(後編)

こんにちは、仁胡 黒です。

第4話「亡霊ゴーストの潜むスマート・ドック」の後編。

前編で佐藤が追っていた「幽霊ID」の正体と、恩田が仕掛けた「事故」の裏側を暴きます。

デジタルな偽装を、物理的な「位置」というアナログな証拠で崩す。和戸とシャーロットの連携、お楽しみください!

逃げろッ!! 潰されるぞ!!」


叫び声とほぼ同時に、俺は隣にいた高瀬の襟首を掴んで、コンテナの隙間へと飛び込んだ。

 一秒後。鼓膜を突き破るような轟音とともに、数十トンの鉄塊が大地を叩いた。凄まじい振動が足の裏から突き抜け、視界が粉塵で真っ白に染まる。


激しい咳き込みながら、俺はスマートグラスの無事を確認した。

(……おい、無事か。システムへの衝撃は?)

『問題ありません、和戸。……落下したのは、高濃度の洗浄用薬品を積載した危険物コンテナです。本来、ここへ運ばれる予定のない荷物です』


俺は粉塵の中で、一人だけ真っ先に安全圏へ逃げ込んでいた恩田を睨みつけた。

(シャーロット、落下地点の分析を。……あいつ、何を守ろうとした?)

『……予測完了。もし、今のコンテナが予定通りの出力で激突していれば、その直撃地点は——佐藤氏が最後にログインしていた「ゴーストID」のコンテナ、109番の真上でした』


なるほど、そういうことか。

 俺はコートを払い、膝をついている恩田に歩み寄った。


「恩田さん。あんた、さっき『停電だ』って騒いでる最中、自分のタブレットを操作してましたよね。……暗闇の中で、あんたの顔だけが液晶の光で青白く浮いてたぜ」

「な、何を……! 私は復旧を試みようと……」


「いいや、逆だ。あんたは『予約されていた事故』の実行ボタンを押したんだ」


俺は、落下の衝撃で扉が歪み、中身が露呈した「109番コンテナ」を指差した。中からは、佐藤の遺体と、大量の密輸品が転がり落ちている。


「佐藤が追っていた『幽霊船』のデータは、あの109番コンテナの中身を隠すためのものだった。あんたは、今日ここに集まった俺たちもろとも、あの証拠品を『危険物の落下事故による火災』で焼き尽くすつもりだったんだ。……違うか?」


恩田は絶句し、ガタガタと震え出した。だが、すぐに顔を歪めて笑った。

「……フン、証拠はあるのか。このドックのシステムは完璧だ。誰が操作したかなんて、ログには残らない!」


(シャーロット、トドメだ)

『了解。……恩田さん、あなたは「幽霊ID」を使えば足がつかないと思ったようですが、物理的な証拠を見落としています』


俺はシャーロットが耳元で囁く解析結果を、そのまま恩田に突きつけた。


「あんたが今使ったタブレット。……このドックのメインサーバーは、外部からのハッキングを防ぐために、操作端末の**『物理的な位置情報(GPS)』**をミリ単位で記録している。……今、この暗闇の中で、落下コマンドを実行した端末の場所は、あんたが立っていたその位置と完全に一致した。……幽霊ゴーストは、足跡を残さないが、あんたの端末はバッチリ残してたってわけだ」


恩田は手元にあるタブレットを、まるで熱い鉄板でも触ったかのように放り出した。

 無人のはずのドックで、自らが信奉したシステムに引導を渡された男は、そのまま崩れ落ちた。


『……お疲れ様でした、和戸。今回は私の「制動介入ブレーキ」が間に合わなければ、今頃あなたも灰でした。……次は、もう少し安全な依頼を受けてください』

(……へっ、善処するよ、相棒)

お読みいただきありがとうございました。

今回は、犯人が自らの管理権限を悪用し、「事故を装った証拠隠滅」を計るというエピソードでした。

「幽霊」を追う者が、実は一番物理的な足跡を残していた……という皮肉。

第5話は、さらに深い「和戸の因縁」に触れる事件が始まります。ぜひご期待ください!

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