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『AI探偵シャーロットの最適解〜論理100%の彼女は人間の嘘(こころ)が解らない〜』  作者: 仁胡 黒
Phase 3:【拡張・廃墟都市編】

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第3話 スマート・ルームの四人の嘘つき(後編)

こんにちは、仁胡 黒です。

第3話「スマート・ルームの四人の嘘つき」の後編(解決編)です。

容疑者たちのアリバイを崩す「デジタルな証拠」と、密室で被害者に毒を選ばせた「アナログな罪の記憶」。

AI探偵と人間の探偵、二つの視点が交差する解決劇をお楽しみください!

(……ログの矛盾を見つけたか。誰だ?)

 俺は周囲に悟られないよう、喉元に貼った振動感知式の小型マイクに向かって、唇をほとんど動かさずに囁いた。

 右目の片眼鏡スマートグラスの視界で、銀髪の少女・シャーロットが四人の容疑者のうちの一人を指差す。

『共同経営者の木島きじまさんです。彼の証言は、スマートホームの記録と致命的に食い違っています』

 俺はふっと息を吐き、リビングのソファに座る木島に向かって歩み寄った。

 周囲から見れば、俺はただ考え込みながら歩いているだけに見えるだろう。

「木島さん。……あんた、この一時間ずっとこのソファに座って酒を飲んでたって言いましたよね」

「ああ、そうだ。それがどうした」

 木島が不機嫌そうに答える。俺は、シャーロットが脳内に直接送り込んでくるデータを、あたかも自分の記憶であるかのように語り始めた。

「おかしいですね。この『スマートソファ』の体圧センサーの記録によれば、あんたは事件発生の三十分前、正確に三分間だけ席を外している。……向かったのは、リビングの隅にある、あのガラス張りのワインセラーですね?」

「な、なんだと……!? そんな適当なことを……」

「適当じゃありませんよ。セラーの指紋認証パネルには、しっかりあんたのログが残ってる。あんたは三十分前、あの中から一本のワインを取り出し、コルク越しに注射器で青酸系の毒を注入した。……違いますか?」

 木島の顔から、血の気が引いていくのが分かった。

 周囲の容疑者たちも、俺の「超人的な推理力」に驚愕の表情を浮かべている。

「……ま、待て! 証拠はあるのか! それにセラーには五十本以上の高級ワインが入っている! あの密室で、藤堂が確実に『私が毒を入れたボトル』を選ぶ保証なんて、どこにもないじゃないか!」

 木島の反論はもっともだった。しかし、俺は片眼鏡のつるを指先で軽く叩いた。

 これがシャーロットへの「詳細データを展開しろ」という合図だ。

(……シャーロット、例のファイルだ)

『指示了解。藤堂氏の秘匿クラウドから抽出した、弁護士宛の未送信メールを読み上げます。……「二〇一〇年六月六日。雨。私は木島と、取り返しのつかない過ちを犯した」——』

 骨伝導イヤホンから響く彼女の無機質な声をなぞるように、俺は重々しく口を開いた。

「『二〇一〇年六月六日。雨。私は木島と、取り返しのつかない過ちを犯した。山梨の国道で通行人を跳ね、その遺体を麓の私有地に埋めた……』」

「な……ぜ……。お前、なぜそれを……!?」

 俺が「本来なら誰も知り得ない秘密」をスラスラと語り出したことに、木島はガタガタと震え出した。

「藤堂社長は最近、末期の癌だと診断されていましたね。彼は死の直前に、全てを自白して楽になろうとした。これが、彼が書き残していた自白書の草稿ですよ」

「あいつ、そんなものを書き残して……」

「木島さん。あんたが毒を仕込んだのは、二〇一〇年産の、あの赤いラベルのボトルだ。……それは十五年前、あんたたちが罪を隠蔽したあの夜に、震えながら二人で飲んだ『呪いのワイン』と同じ銘柄だろ」

「……ッ!」

「社長は自首する前に、一人きりの書斎でそのワインを飲み干して、あんたに全てを打ち明けるつもりだった。あんたは、彼が『贖罪のために必ずそのボトルを選ぶ』と分かっていたんだ。……長年の、共犯者だからこそな」

 俺が言い終えると、リビングは凍りついたような静寂に包まれた。

 やがて、木島はその場に崩れ落ち、両手で顔を覆った。

「……あいつだけ、勝手に天国に行こうなんて、許せるわけないだろ。自分はもうすぐ死ぬからいい。だが、俺には守るべき家族も、積み上げてきた地位もあるんだ……!」

 華やかな成功の裏に隠された、あまりにも醜い真実。

 警察に連行されていく木島の背中を、俺はポケットに手を突っ込んだまま見送った。周囲の警官やスタッフたちが、「あの探偵、一体どこでそんな情報を……」と戦慄している。

『お疲れ様でした、和戸。周囲の驚愕反応を確認。あなたの「名探偵」としての評価値が大きく上昇しました』

(……よせやい。俺はお前のカンニングペーパーを読んだだけだ)

『謙遜は不要です。罪悪感という非合理な感情……あのワインを選ばせた「罪の引力」については、私の演算だけでは確信が持てませんでした。それを補完したのは、あなたのアナログな直感です』

 夜風に吹かれながら、俺はネクタイを乱暴に緩めた。

「理屈じゃねえんだよ、シャーロット。人間はバグだらけだからな。……さて、胸糞悪い事件だったが、報酬をもらいに行くとしようぜ」

お読みいただきありがとうございました!

今回は「AIによる圧倒的な情報収集」と「和戸のハッタリ」が噛み合った、このコンビならではの解決編となりました。

スマート家電のログで嘘を暴き、最後は「過去の罪とワイン」で真実を突き止める展開、いかがでしたでしょうか。

「名探偵を演じる和戸がカッコいい!」「犯人の動機がエグい!」と思っていただけましたら、ぜひ下部の☆☆☆☆☆から評価・ブックマーク登録をお願いいたします。皆さんの応援が何よりの励みです!

次回は、ついに和戸の身に直接危険が迫る……!? 新たな展開にご期待ください!

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