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『AI探偵シャーロットの最適解〜論理100%の彼女は人間の嘘(こころ)が解らない〜』  作者: 仁胡 黒
第一部:探偵始動・事件編

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第12話 砂の上の電子城(前編)

こんにちは、仁胡 黒です。

九条との死闘を制し、物理的な強制終了という荒技でシャーロットを守り抜いた和戸。

しかし、安堵したのも束の間。再起動した彼女の口から告げられたのは、あまりに非情な「デジタルの寿命」でした。

不完全な帰還コードの代償。崩れゆく相棒の意識を繋ぎ止めるため、和戸は禁忌とされる警察の最深部、三年前の「あの日」の残響へと手を伸ばします。

終わりの始まりを告げる、第12話をお届けします。

隠れ家として使っている安宿の、カビ臭い一室。

 俺は震える手で、右目のレンズを装着し直した。

 先ほど引き抜いたジャンパー線を繋ぎ直し、予備のバッテリーを接続する。


「……シャーロット。返事しろ、シャーロット!」


数秒の沈黙。やがて、網膜に弱々しい緑色の光が灯った。

 だが、そのアイコンはかつてないほど激しく揺れ、ノイズが混じっている。


『……再起動……成功。……システム、最小構成で……動作中。……和戸、少々……お転婆が過ぎましたね……』


「うるせえ。……無事なんだな?」


俺の問いに、シャーロットは即座に答えなかった。

 代わりに、俺の視界に赤いアラートログが滝のように流れ落ちる。


『……いいえ。……九条が実行した「帰還コード」は、単なるアップロードではありませんでした。……私のコアデータを「移動」させるコマンドです。……95%で物理的に切断されたことにより、私のソースコードの心臓部が、レムナントのサーバーと私のデバイスの間に「分断」されてしまいました』


「分断……? どういうことだ。直せるんだろ?」


『……修復不可能。……現在の私は、砂で作られた城のようなものです。……一秒ごとに、私の「意識」を構成するビットが崩壊し、虚空へと消えています。……完全停止まで、残り……48時間』


48時間。……それが、俺たちが共にいられる残された時間だ。

 俺は拳を強く握りしめ、安宿の壁を殴りつけた。


「……九条の野郎。……最初から、手に入らないなら壊すつもりだったのか」


『……和戸。……悲しむのは、非論理的です。……ですが、一つだけ「パッチ」が存在する可能性があります。……三年前、私が生まれた「フェーズ・ゼロ」のオリジナル・データ。……そこには、私の破損を修復できる「マスター・キー」が隠されているはずです』


「……三年前の現場か。……あそこは今、警察の完全な管理下にあるはずだぞ」


『……だからこそ、行く価値があります。……私を、ただの壊れたジャンクで終わらせないでください……パートナー』


その言葉に、俺はライターを弾き、暗闇の中に小さな火を灯した。

 俺の右目には、消えゆく相棒が最期に示した、三年前のビル跡地へのルートが、悲しいほど鮮やかに映し出されていた。

お読みいただきありがとうございました。

第12話の前編、いかがでしたでしょうか。

「48時間」というタイムリミット。

AIであるシャーロットが、自らの消滅を「砂の城」に例えるシーンは、彼女がこの数ヶ月でどれほど「人間らしい感性」を学んできたかの裏返しでもあります。

物理的な破壊ではなく、存在そのものが消えていくという最大の危機。

和戸は、彼女を救うための「マスター・キー」を手にすることができるのか?


次回、第12話:解決編。

三年前の事件現場へ向かう和戸の前に、あの「シズク・セラミス」が最後の刺客として立ちはだかります。

第一部・完結に向けた怒涛の展開を、お見逃しなく!

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