第11話 断罪の回路(解決編)
こんにちは、仁胡 黒です。
第11話・解決編。
九条が突きつけたのは、シャーロットの存在意義を根底から揺るがす「帰還コード」。
手に入れてからわずか一年足らず。ようやく「相棒」としての呼吸が合ってきた二人に、冷酷なデジタルの審判が下ります。
和戸の脳を焼き切らんとする過負荷と、引き抜かれるシャーロットの意識。
絶体絶命の窮地を救うのは、三年前の爆破事件で見落とされていた「物理的な楔」でした。
「ぐ、あああああッ!」
右目の奥を焼夷弾で炙られるような激痛が走る。
九条がリモコンを操作した瞬間、シャーロットのアイコンが激しく乱れ、緑色のラインがノイズの海に飲み込まれていく。
「たった数ヶ月……。ゴミ同然で捨てられていた彼女を拾い上げ、お前という『検体』がどう動くか。興味深く見守らせてもらったよ、和戸」
九条は嘲笑を浮かべ、一歩ずつ歩み寄ってくる。
視界の端で、シャーロットが苦悶に満ちた声を上げた。
『……和戸……だめ……です……。私の根源的なプロトコルが……書き換えられて……。……自律思考、停止……。レムナントの……サーバーへ……』
「やめろ……! シャーロットは、お前らの道具じゃねえ!」
「いいや、彼女は最初から我々の資産だ。三年前の爆破事件……あれは彼女という究極のAIを完成させるための『試運転』に過ぎなかった。お前はただ、彼女を最適化するための、都合の良い踏み台だったんだよ」
九条の手元で、帰還コードの進捗率が95%を示す。
俺の意識が遠のき、視界が真っ黒に染まりかけたその時——。
俺の指先が、三年前の「あの日」と同じ、ある『物理的な感触』を思い出した。
(……シャーロット。……聞こえるか。……お前の『親』が誰かなんて、どうでもいい)
俺は痛みに震える手で、右目のレンズの縁にある、小さな「物理スイッチ」に指をかけた。それは、俺がこのジャンク眼鏡を修理した際、勝手に増設した『強制再起動』のアナログ・ジャンパー線だ。
「……九条。デジタルの世界じゃ、あんたが神様かもしれないが。……この『3000円のジャンク』を直したのは、俺だ!」
俺はスイッチを無理やり引き抜いた。
バチリ、と青白い火花が飛び、デバイスの電源が完全に落ちる。
「何っ!? 強制シャットダウンだと!? コードが未完了のまま停止すれば、データが破損するぞ!」
「壊れたら、また俺が直してやるよ。……それより、あんたの足元に気をつけろ」
次の瞬間、俺が潜入時に廊下に仕掛けておいた「アナログな煙幕弾」が炸裂した。
九条が激しく咳き込み、リモコンを取り落とす。
視界はゼロ。だが、俺の脳裏には、電源が落ちる直前にシャーロットが残した『敵の配置予測図』が焼き付いていた。
俺は手探りで九条の腕を掴み、その巨体を窓ガラスへと叩きつける。
三年前のあの日、俺を裏切った男の顔が、月の光に照らされた。
「……三年前の借りは、利息をつけて返したぜ」
お読みいただきありがとうございました。
第11話、完結です!
デジタルの「帰還コード」に対し、自ら増設したアナログなスイッチで物理的に抗う。
和戸 宗治という男の、技術への信頼と、それを上回る執念がシャーロットを救い出しました。
しかし、九条との対決はこれで終わりではありません。
「レムナント」の真の目的、そしてシャーロットの出自に隠された残酷な真実……。
次回、第12話。
一時的な逃亡に成功した和戸。
しかし、再起動したシャーロットの口から語られたのは、彼女自身の『死』に関わる重大なバグでした。
物語は、いよいよ第一部・完結へと向かいます。
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