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『AI探偵シャーロットの最適解〜論理100%の彼女は人間の嘘(こころ)が解らない〜』  作者: 仁胡 黒
Phase 3:【拡張・廃墟都市編】

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第8話 電子の偽証(解決編)

こんにちは、仁胡 黒です。

あらゆるデジタル証拠が「100%のクロ」を示す中、和戸 宗治だけは別の真実を見つめていました。

和戸のアナログな洞察と、シャーロットの超並列演算が交差する時、闇に潜んでいた真犯人がその姿を現します。

100%の嘘を暴く、逆転のロジックをどうぞ。

「……シャーロット。お前の目は節穴か? 3000円のジャンク品になりたいのかよ」


事務所の窓の外には、すでにパトカーの赤色灯がうっすらと見え始めている。追い詰められた佐藤は、床に座り込み、ガタガタと震えていた。


『……聞き捨てなりませんね、和戸。私の解析によれば、映像のピクセル単位での整合性、バイオメトリクス(生体認証)、すべてが佐藤氏本人と一致しています。……これが偽物だと言うなら、それはもはや魔法です』


和戸の耳元だけで、シャーロットが不機嫌そうにノイズを混ぜて答える。俺は鼻で笑い、右目のレンズに映る「殺害映像」の、犯人の**『目』**をクローズアップさせた。


「魔法じゃねえよ。……シャーロット、映像の中の佐藤の『瞳』の動きを再演算しろ。……サッカード(急速眼球運動)のパターンだ」


『……! 演算を開始。……検出。……不自然です。対象の視点は、殺害という極限状態においてなお、1/1000秒単位で「固定」されています。これは、人間の反射神経では不可能な安定性……。……まさか』


「そうだ。……こいつは、佐藤の顔を学習させた**『ディープフェイク』**だ。だが、ただのフェイクじゃねえ。……本物の防犯カメラの『ノイズパターン(PRNU)』まで模倣し、お前の検知アルゴリズムを逆手に取って『100%本物』だと誤認させるよう調整された、対AI用の偽造映像だ」


俺は佐藤に聞こえないよう、小声でシャーロットに命じた。


「……GPSの偽装も、スマホを盗んだわけじゃない。現場の『偽の基地局信号(IMSIキャッチャー)』で、佐藤のスマホの位置情報を強制的に書き換えたんだ。……これだけの芸当ができるのは、殺された社長の右腕——副社長の『真田』。あいつ以外にいないだろ?」


『……真田氏の個人端末へバックドアを形成。……ログを確認しました。12時間前に高負荷のレンダリング・サーバーを使用、さらに事件当夜、現場周辺で偽造信号機を使用した形跡を検出。……ビンゴです、和戸』


俺は震える佐藤の肩を叩き、事務所のドアを開けた。

 そこには、警察を引き連れて「容疑者の確保」に立ち会おうと現れた、副社長の真田が立っていた。


「和戸さん、佐藤君を匿っているそうですね。……さあ、彼を警察に」


「……ああ、真田さん。あんたの作った『完璧な映画』、俺の相棒が酷評してたぜ」


俺が右目のフレームを二回タップすると、事務所の大型モニターに、真田が偽造映像を作成していた際の「編集ログ」と、彼が現場で偽基地局を操作していた瞬間の自撮りログ(シャーロットが真田のスマホから強制的に引き出したもの)が、動かぬ証拠として映し出された。


「な……! なんだこれは! 捏造だ!」


「あんたはAIを騙せても、俺と……俺の相棒の『意地』は騙せなかった。……真犯人はあんただ、真田」


真田が崩れ落ち、松井刑事がその手に手錠をかける。

 佐藤が涙を流して俺の手を握ったが、俺はそれを軽くかわし、またぬるくなった珈琲を口にした。


(……シャーロット。今回は俺の手柄だな)

『……不本意ですが、認めます。……和戸。私のアルゴリズムに「人間の違和感」という変数を追加しておきます。……次は、負けません』


夜明けの光が、新宿のビル群を照らし始めていた。

お読みいただきありがとうございました。

第8話、完結です!

AIが「完璧」と判断した映像を、和戸が「生物学的な矛盾サッカード」から見破り、シャーロットがその裏付けとなるデジタルの痕跡を逆探知して真犯人を追い詰める……。

デジタルとアナログ、それぞれの強みが融合した華麗な逆転劇をお楽しみいただけたでしょうか。

冤罪を晴らした和戸とシャーロット、二人の絆もまた一つ深まりました。


次回、第9話。

「シズク・セラミス」が再び動き出します。今度の標的は……。

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