第7話 #読者は神様ではない③
10数人の視聴者たちも、正当な理由のない誹謗中傷に、怒るよりも呆れて事態を見守っている。
そんな中マコは少し深呼吸して、パーカーのポケットから、スマートフォンを取り出した。
〝おい、話題をすり替えるなよ。つーか、視聴者のこと大事にしてないじゃん、素人が〟
「そりゃ素人ですよ。少しスマホ使うね。視聴者さんのことは大事にしてますよ。そうでなくちゃ、あなたのコメント消して終わりだもん。で、画面の向こう側は、私には分からないんだけど?」
〝はあ⋯⋯、あのな。AIが他人を誹謗中傷できるわけないだろう。そんなモデルは存在しないんだから、お前本当にアタマ大丈夫か?〟
「いや⋯⋯十平さんが言いたい事は、たぶん〝そこ〟じゃない」
〝自分でプログラム組めば作れるよね〟
〝ボットと連動してやれば余裕じゃね?〟
〝あるいはそういうビジネスやってる奴に、仕事として頼めば格安でできそうではある〟
〝というかAI使わなくても、相応の誤情報でも流せば、正義マン群がってやっちゃうよね⋯⋯〟
〝絶対にできないってことはない。けど、単なる嫌がらせにそこまでするぅ?〟
カズトや視聴者たちの意見も、それぞれ別々である。
確かに企業が提供しているモデルには倫理規定として、誹謗中傷、集団でのネットリンチができないようにプログラムされている。
あるいは、AIを実際に使わなくても、インターネットで他人を一方的に攻撃する方法は存在する。だが、彼女の伝えたい事は、そこではない。
「あのね。さっきから言ってるけど、画面の向こう側なんて分からないじゃん。だから聞いてるんだけど?」
〝知らねえよ。そんなの人間に決まってるだろうバカが。はは、そんなバカなら、SNSに人間じゃないって嫌がらせを受けたって書いてやるよ!〟
「それ、取り違いや勘違だよ。私はあなたが人間じゃないと押し付けてはいないねえ。じゃあ、ダイレクトメールでやり取りさせて頂いた神様が訪問してくれるので、彼によろしくね?」
〝は? え、何言ってんだお前⋯⋯?〟
〝神様と自称している者だが、《《お嬢さん》》からダイレクトメールを頂いて、君の近くに来ているぞ。少し、お話できるかな?〟
マコの背後にずっと浮遊していたパイルバンカー神は、コメントを送る前に誹謗中傷を行なっていた者の居場所を、すでに特定していた。
先ほどからマコがスマートフォンを操作していたのは、本当にダイレクトメールでパイルバンカー神と連絡を取り合っていたからである。
「ワン!」
「あはは。ちょっともう、くすぐったいぞぉ?」
マコは呆気に取られている全員に反応を示さず。足元にすりよってくるナハトコボルトの頭を、一見何でもなかったように撫でていた。
◇◇◇
「えっ⋯⋯知り合いなの、十平さん?」
「まあね。カスタムさんの動画すごいよねぇ。視聴した後に思いきってダイレクトメール送って、少し神様とお話してたんだ」
紛れもない事実である。正確にはSNSのダイレクトメールの使い方を、実際に使って説明していただけなのだが、彼女は嘘を言っていない。
シンプルに自身がテンプレであるという余計な事を、誰にも言っていないだけである。
〝本物、なの⋯⋯?〟
〝神様ってなんぞ?〟
〝ググって、どうぞ〟
驚く視聴者たちの前で、ナハトコボルトたちと戯れること数分間。パイルバンカー神は転移で帰還したあと、全員の前にその姿を現した。
〝ほ、ホントに来た〟
〝マジか〟
〝おーい、文句君どした? なんか書けよ(笑)〟
「やあ、《《お嬢さん》》。少年。直接会うのはは、はじめましてだったかな?」
「こんにちは、神様。えと、お忙しい所を手助け頂き、誠にありがとうございます。それで、彼は如何なさいましたか?」
「残念ながら、ダメだった。呼び出しにも応じてくれなくてな。一応、建物の窓からも呼びかけてみたんだが、それらしい反応はなかった」
無論。パイルバンカー神は誹謗中傷を行なった者が、今まさに何をしているか知っている。
だが、彼らはここまでされても、その内容を公表する気はない。
たとえ本当にAIだったとしても、彼らは行わない。
個人のプライベートかもしれない領域を無断で公表するのは、犯罪になりかねないという問題もある。
それはなぜか。罰するよりも自覚を促したいと願い、彼らは行動しているからである。
付け加えれば、これ以上関わって来ないなら必要もないと、マコもパイルバンカー神も判断していた。
〝完全にアイツ逃げてるじゃん〟
〝うわ、言うだけ言って都合が悪くなりそうで逃げやがったのか〟
〝マジなっさけねーw〟
〝流石にこの展開は笑うわwww〟
〝マコマコ最高じゃんw〟
〝おーい、文句君どした? なんか書けよ(笑)〟
失笑している視聴者たちが、誹謗中傷を行なった視聴者向けに、コメントを並べ立てる。
それでも彼の反応は、一切返って来ない。
マコは、これは視聴者スキルか視聴機器の接続を断たれたかもしれないと、冷徹に推測していた。
「せっかく足を運んだので、後で視聴するかもしれない誹謗中傷を行なう者に向け、少し私見を述べさせて頂こうか。時間の都合はよろしいかな?」
「あ、はい、どうぞ。お聞きしたいです」
「ワン!」
ふたりともパイルバンカー神の言葉に頷いた。
場所を実質提供しているナハトコボルトたちも、ありがたそうにお座りして、小気味いい返事を返してくれた。
「ありがとう。では、たとえ話だが、人の頭部が神様とする。右手がある本の作者や配信者、何かを創造するクリエイターで、左手がそれを楽しむ読者や視聴者、ユーザーだとしよう。ここまでは全員良いかね?」
〝右手がクリエイター? 左手がユーザー?〟
〝俺の頭が神様って、なんの話?〟
〝配信者ってクリエイターなん?〟
〝基本はクリエイターの方じゃねえか。いや、観てたりゲームしてる事もあるけどさ〟
「どこまで手を上げられる?」
〝どこまで、って⋯⋯〟
カズトは両手を何度も上げ下げして考えている。一方で、マコは肩の高さに持ち上げたあと、両手を水平に示し、微動だにさせていない。
だが共通することは、誰も頭部以上に高く手は挙げていなかった。画面とスキルの向こうにいる視聴者たちも、全員同様である。
「たとえるならば、どのように敬意を払うべきでも、読者は神様ではない」
〝たしかに〟
〝でもお客様は神様ですって言葉もあるぞ?〟
〝いや、他の神様の迷惑になるって、よくセットでも聞くじゃん〟
〝販売店の中でさっきの暴言吐いてたら、追い出すしかないもんなw〟
〝さっきのお方は、神様気取りで文句を口にしていた。そんな所でしょうか?〟
「そうだ。現代ではクリエイターに対して、先程のような態度を取る者も多く存在する。では、なぜ彼はそんな事を行い、途中でやめたのかな?」
「ひとえに責任の所在でしょう。誰かに顔を見られていないから、責任が無いと勘違いする。逆は都合が悪くなるかもしれないから、途中で終わりにしただけです」
「その通りだ。お嬢さん。つまり、人間はすぐ他の成果になり代わりたくなり、成り代わらせようとする。汚いものも、愛せてしまえると言った所か」
〝ただ文句を言いたいだけしかない、誰の心の中にもいる誰かって感じかね〟
〝要は勘違いだらけか、世の中が〟
〝じゃあ、みんな顔を出せっての?〟
〝本がつまらないとか、言うなってこと?〟
「そういう極論や、短絡的な結論を話しているのではない。自身を守るために必要な措置は否定できない。適切な節度を持って、本をつまらないと言うのは個人の自由だとも。要は、憬れて自他ともに甘えを押し付けているだけ。そして、かなりAI的な傾向でもある」
「AI的な傾向、ですか?」
「そうだ、少年。そのヘルメットをかぶっているなら、薄々感じているのではないか。彼の憧れた行動理念には、独自性が薄いことに」
AIとは、人工知能である。生身の人間の頭脳ではなく、主に機械の統合的な学習データで、人間の行動を模倣させる。
誰でも行える模倣。憧れたから、眩しいから、他人に嫉妬して貶める。少なくとも自分軸で行動したとは、胸を張って言えはしない。
ひどく、安っぽく、薄っぺらい。
まるで彼自身が拒絶した、どこにでもある機械《AI》のように。
────── いや、違う。
機械は正確な努力がなければ、正確な動作を行えない。それには人間による明確な苦労と、誰かを手助けする尊い価値が実在する。
つまり、彼の言動は、彼が見下して貶めようとした、機械以下となる。
そう促されて勘づいたからこそ、マコは最初の質問でAIではないのかと、問わねばならなかった。
「さて、最後に今回の件について、ある偉人の名言を持って、心構えを参考にして頂こうか」
パイルバンカー神は虹閃光を煌めかせ、ある文章を空中に描いて見せた。
平和は、力のみでは維持できない。理解する事によって初めて、平和の維持は実現するだろう。
真の平和は押し付けられるものではなく、他者との違いを認め、共感し合うことで育まれる。
「理論物理学者アルベルト・アインシュタイン氏の著名な言葉として世に伝えられている。今回は人間向けとAI向けに、2通り和訳した。ある教員を演じていた役者によれば、学校とは、教師が教えた事をすべて忘れても残っているものが財産だという。神としては、その財産とは〝違う〟という感覚ではないかと思う。では、以上だ」
パイルバンカー神の話が終わり、しばし沈黙が降りる。
お座りしていたナハトコボルトたちは、いつの間にかギロチンスライムの戦いよりも、パイルバンカー神の話に耳を傾けていた。
〝難し⋯⋯くはないけど、少し堅苦しい、かな?〟
〝そうか? かなり噛み砕いてくれてると思うぜ〟
〝あ、いつの間にか100人来とる〟
「私からも最後に1つだけ。これを見ているかやっぱり分からないけど、今回のことは忘れない。正直、すごく傷ついた。でも私はあなたを追いかけない。ここまでが私の線。次はミュートするからね」
マコたちは最後にそう釘を刺して、別れの挨拶を告げ、配信を終えた。
彼女はヒーローではない。彼女は貶める者を貫く牙でも、《《まだ》》、ない。
彼女は、己の定めた意思を示す。配信者なのだ。
Φ Φ Φ Φ Φ
あとがきと補足
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また、ここまでの制作にあたり、以下の質問をGoogle検索AI、Gemini、ChatGPTに解答いただきました。
カタヌキとは?
VTuberのお披露目とは?
落ち武者とは?
誹謗中傷とは?
クリエイターとユーザーについて。
アルベルト・アインシュタインの名言について。
パイルバンカー神とマコのAIメットに関する会話方針について、AIの立場としてどう思うか。なにか社会的な問題があるか。(ChatGPT)
第7話 #読者は神様ではない③全文章について、AIの立場としてどう思うか。なにか社会的な問題があるか。(ChatGPT)




