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完全に煮詰まってしまったよ


 洗濯物を運びながら考え事をしていたせいかコケそうになりました。危ない。


「シャルー。大丈夫?」

「大丈夫!!」


 恥ずかし見られてたっ! と条件反射で返事をして振り向くと、修道院を囲う塀の飾り穴の向こうから元1の姉さんのアメリアさんがこちらに手を振っていました。逆の手で火鉢を持っているところを見ると探されてたっぽいです。


 元1の姉さんは修道院を出て結婚したレアな人なのです。


 この修道院は個人差はあれど、26歳になったら修道院から出る事もできます。なぜ半端な26歳なのかは知らないです。とっても中途半端。

 小さい頃から26歳まで暴走しなかったら大丈夫でしょうと判定されるみたいですが、正直修道院以外では生きにくいです。


 結婚どころか職場でも生まれ石を確認されてしまう風習があり、ピンク石はドン引きされてお断りされるという。家を借りるのもほぼ無理だとか。


 そんな中、26歳で即プロポーズされて結婚した元1の姉さんは皆の憧れです。随分昔にも1人いらしたそうですが、久々の快挙なのです。


 実は姉さんがこの街生まれで、相手は幼馴染で、さらには姉さんの家系の生まれ石が元々赤とピンクの境目らしく、ご近所では誤判定じゃないかと有名なのは妹達には内緒です。夢を壊すのよくない。


「ごめんねシャル。種火もらっていい?」

「はいはい、お任せあれ」


 碧の火球を壁に向けて投げます。種火は見事に飾り穴を通り抜けて姉さんの手元の鉢に入って碧色の火が灯りました。


「っつしゃ!」


 我ながらナイスコントロールでございます。


「ありがとシャル。お互い内緒ね」


 姉さんは麻袋を塀の上に置くとパチンとウインクしながら帰って行きました。


 元1の姉さんが嫁いだ先は、魔法の火で調理をするのがウリの高級料理店です。

 魔法で出した火や水、風は碧い色がついているので一目瞭然。とっても分かりやすく、しかも心なしか体調が良くなるとか?


 最初は、誰でも出せる魔法の火なのに何故ウリにできるのか分かりませんでした。

 どうやら普通は魔法で出した火だと燃えないらしいです。より正確に言うと消えちゃう。


 もう少し細かく説明すると、普通の人が魔法の碧火で木の葉を燃やします。すると木の葉は燃え尽きます。真横に何かがあっても類焼しません。

 前の世界でもお馴染みの赤い火は前と同じ性質なので可燃物が近くにあるとどんどん燃えます。


 赤い火並みに使いたければ魔法の密度みたいな物を上げると良いのですが、魔力密度=魔力量なので市井のお手頃価格の料理屋で使うにはコストが高いのですよね。


 常に魔力を入れまくってヘトヘトになりながらお料理を作るか、高いお金を払って魔力量の多い人に種火をお願いするか。


 お貴族様のお肌がピチピチなのは毎食魔法の火で調理された料理を食べているからなんてお話もあるくらい碧火料理は持てはやされています。


 推定26歳になったら碧の種火屋をやるのも良いかもしれないです。


 おら、頑張って家庭教師たくさんやってお駄賃貯めて独り立ちするんだ!


 そんな気持ちを込めて麻袋を開けると沢山の姉さん特製焼き菓子が詰め込まれていました。ホクホク顔でパリッていたら姉妹に見つかり速攻で全部無くなりました。


 麻袋一杯に入ってたのに! 袋しか残らないなんて! 酷いよ、酷いわ、うえ~んと空になった麻袋に向かって叫んでいたら7の妹レナが「シャル姉、泣くのへたくそだね」と両手と口の中に焼き菓子を確保した満面の笑顔で言ってくれました。


「王様の耳はロバのみみーー!!!」


 このやるせないパトスを、穴があったら必須の様式美を、麻袋に向かってやってみました。


 お菓子祭り中の妹達はキョトンとしていましたが、姉さん達はまた変なことやってるわとスルーでした。



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