今日の授業は魔法学です
今日も今日とて家庭教師のお仕事です。現金収入になるお仕事ってありがたいですよね。
そして本日が初見のお客様は、何と驚きのお貴族様です。私で良いのでしょうか。2の姉さんがお教えした方が良いのではないでしょうか。
そう言いながらあわあわくるくるしていたら、世間通で毒舌の妹その5ハンナが「善人で没落中の下位貴族だから2の姉さんに担当してもらえる程のお金が出せないんだと思うよ」と教えてくれました。ついでにくるくる回るときの軸がずれていたらしいです。厳しいっ。
何でも前の御当主様が、災害で家を無くして難儀している領民や流民に家を建てて、格安で貸していたようなのですが、期限を決めなかったようで、生活が立ち直ったら返してねという簡単な契約だったようです。ようばっかりですね。
そのうち借主が代替わりし始めて、そうなると充分まともな生活をおくれる状態なのに領主に返さなかったり、何だったら人数増加どころか増築していたりして、そうはいっても急に立ち退かせるのも可哀想だろうと甘い顔をしていたら前の御当主様が亡くなって何だかうやむやに。
現当主様も自領の事だしと甘い対応をしていたら、借金のカタや売却益を見込んで家を売っぱらう人が出始めて、気付けば土地は辛うじて自分の領地だけれど、土地の上に建っている建物が他領所有とかいう訳の分からない状況になっているようです。
そんな間抜けな事例が今まで無かったのと、上物を所有しているのが上位貴族らしく、国への税は善人で没落中で土地所有者の下位貴族様が納めているけれど、居住者達から発生する税は上位貴族の懐にinという何だそれ状況のようです。
聞いた時は、警察とか裁判所とか暴れん坊将軍とか居無いのかと吠えそうになりました。
「シャル先生。魔法の放出が続かないんです…………」
ごめんごめん。先生、思いっきり違う事を考えていたわと思いながらご令息を見ると、見事に的には着弾しております。数時間前は的に少し届かなかったので目覚ましい成長だとは思うのですが、あと100日もしないうちに貴族学園へ入学かと思うと心許ないです。
この子は器用なのですが、魔力量が少ないので持続的に的を攻撃する試験が出ると入学は危うそうです。お金も無いっぽいので小間使い作戦も使えなさそうだし。
「ご存知かとは思いますが、これから説明する基礎訓練を毎日欠かさず行って下さい」
ションボリする坊ちゃんに罪悪感が大きい,,。
別に貴族学園に入れなくても死にゃしないんですが、弱小貴族だとココでの人脈がゆくゆくかなり重要になるそうです。うん、まぁ、人間知らない人よりは顔を見たことがある人の方が信用するものね。
魔力量は産まれ持った量プラス日々の鍛錬で伸ばすしかないので地道に頑張るしか方法が無いのですよね。
堅実に時間をかけるしかないのですが、ハンナ(妹その5)によると、この子おそらく働いているようです。まだ小学校低学年くらいでしょうに貴族なのを隠して商家で在庫管理をしているとか。
めっちゃくちゃいい子なのに、この世界も正直者が馬鹿を見る世界なの?
神はいないのか、神は。
本気出しちゃうよ?