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修道院で暮らす魅惑の魔女  作者: 青い時計


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昼行灯といえば大石内蔵助か中村主水


 歩いてきましたお貴族様のお屋敷です。はいっ、でっかい門ドーーン。厳めしい門番ババーン。

 ご案内の方もパリッとしたお召し物で、こちとら所詮平民の晴れ着なんで勘弁してくだせぇゲヘヘってモンです。


「シャル、正気に戻りなさい」


 はっ。緊張のあまりトリップしておりました。院長先生ありがとうございますっ。


 そしていつの間にか応接間に座っているっ。


 目の前には先日のミサンガを人差し指でくるくる回している、いつぞやの優男風上位お貴族様。


「君はこれを知っているかい?」


 そう言いながらお貴族様が差し出されたのは有名魔法道具の製作者の刻印であるCマークでした。くるくる回しながら他の出すとか器用ですね。笑っていいですか?


 誰かな。安易に魔法道具の製作者名をイニシャルにしたのは。

 思い出す前の私かな! だって浮かんできたんだからしょうがないよねっ!

 シャルのCもしくは著作権保護のC〇マークですね多分。うわー深層心理ってすごいなー(白目)。


「これはヴィロス語ではなく、古語でもなく、これを製作した者の紋章だと思われている」


 あれっ。いま上手にへぇーみたいな顔作れたかな。どうして頭巾被って髪も下ろしてこなかったかな私。表情丸見えだよ。

 紋章、紋章ってかイニシャルって頭文字だからまぁある意味紋章とか家紋みたいな物、、なのかな。


「この刻印の入った魔法道具はどれも画期的ではないが、既存の組み合わせが絶妙でね。そこの御方の御夫君が睨みをきかせていなければ、何時でもそちらの修道院に寄付をさせていただくつもりなのだよ。そうすれば月市に出ずともよいと思うがね」


 思わず院長先生を凝縮してしまいます。今はタイミングが違うと分かっているのですが、目を見開いているのが自分でもわかります。先生、ご結婚してらしたのですか!? 修道院で寝泊まりされているのに!??


 あと、さりげに画期的で無いとか言わないでっ。傷つくから!


「で? その謎めいた魔法道具師とカメの製作者と、妙に似た波長のその魅了魔法道具は誰が作ったか知らないかね?」


 そう言いながらくるくると人差し指でお回し遊ばせていたミサンガをぽいっと投げて寄越して下さいました。ナイスキャッチ、私。


 そして魅了魔法道具って仰いましたか?

 禁忌魔法の魅了が使われてるって言いましたかこの人!?

 院長先生! 追跡魔法とか残痕魔法とかあったりします??? 助けて! 何て言ったらいいの??


「わたくしどもには何のことやら」


 一瞬目を細めてこちらに黙っていなさいのアイコンタクトをくださった院長先生が白々しいシラを切っておられます。


 これは政治的な感じなのでしょうか。

 よく分かりませんのでお口チャックしてうんうん頷いておきます。


「あくまで何も知らぬと?」

「夫の差配でありますので」


 優男の表情が険しくなりました。しれっとのたまう院長先生は余裕の無表情です。

 全然流れが判らないけど勝負ありかな? こっちが勝った?


「私はモンドリアル・コルビュジエ・メルジール。君の名を教えて貰えるかな」


 え? 優男、名前長くない? 今ファースト6音だった?!


「名は?」


 ぬー、打ち合わせてないです!

 こういうときどうするの? 嘘ついて手打ちされたら? そもそも国の名簿とかあったりします? 後で調べられたらバレる? 切り捨て御免?!?


 院長先生を見ても無表情のままです。これは言うしかない感じ??


「………シャル、ティです」

「そう、シャルティ。これからは気軽にモンドと呼んでくれていいからね」



 妹達が無駄に連続での開脚前転技をマスターしていた頃。

 ドナドナ子牛は昼行灯に再会を約束させられたのでありました。


 余談ですけれど、お姉様その2のオーレリア姉様のことを根掘り葉掘り聞かれました。

 院長先生は目を眇めて無言を貫いておられます。

 埒があかないと見てか私にもご質問が参りましたので「ご自分でお伺いください」とお答えしましたらば黙られましたので、その隙にとっとと帰宅いたしました。



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