87/87
忘礼
忘れたくないから、
私は一人で生きている
少ない友も、遠い家族も、
頼りになる同僚も、尊敬できる先輩も
そんな人たちがいる。
私が生きることを助けてくれる。
手伝ってくれる、優しい人たち
それでも私は一人だ。
そして、助けてくれる人たちも一人
一人だから、助けてくれる。
一人だから、生きていけなくなってしまうから
集まる。
私は一人で生きている。
みんなの中にひとりでいる。
沢山の一人の中で生きている。
それがどんなに私を救っただろうか、
どんなに私の助けになっただろう
私がどんなに迷惑をかけてしまっただろう
分からない。
知らない。
だから私は言葉にする
私はこの人たちと同じ一人の人間だって
「ありがとう」に乗せて
心を亡くしたくないから
心を忘れたくないから
お礼は口にしなければ意味がない




